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以下、2015622日修正版(修正内容は訴状本文の後に記載しています。)

平成21年(ネオ)第875号 損害賠償()請求上告事件

上告人  戸ア貴裕

被上告人  高橋龍太郎

被上告人  精神保健福祉士T

被上告人  敷島警備保障有限会社

                                   

上告理由書

 

平成22112

最高裁判所 御中

上告人    戸ア貴裕

 

頭書の上告事件について,上告人は,下記のとおり上告理由書を提出する。

 

1             総説

本上告理由書の構成は,以下の通りである。

1           事案全体の構造

本件に関連する事件として,本件と同一の医療保護入院事案を扱う民事事件が2件あり,本件上告理由と関係する部分があるため,上告理由の理解のために,同2件の民事事件について示す。

2           原判決の構造と問題点

上告理由の理解のため,原判決の構造と問題点を指摘する。

3           上告理由(1) 憲法の違反@(民事訴訟法第312条第1)

原判決における,憲法31条「何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない。」に係る違反を明らかにする。

4           上告理由(2) 憲法の違反➁ (民事訴訟法第312条第1)

原判決には,上告理由(1)で指摘するほかにも,憲法31条に係る違反があるので,これを明らかにする。

5           上告理由(3) 理由不備・理由齟齬(民事訴訟法第312条第2項第6)

原判決における,理由不備・理由齟齬を明らかにする。

6           上告理由(4) 判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱

判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱のあることは再審事由であるが(民事訴訟法第33819号),再審事由は絶対的上告理由になると解されること,また,本理由書で別途上告理由とする憲法違反と密接に関係することから,これを明らかにする。

2             事案全体の構造

本件に関連する事件として,本件と同一の医療保護入院事案を扱う民事事件が2件あり,上告理由と関係する部分があるため,上告理由の理解のために,以下に概要を示す。

1           1件は,上告人が,上告人に対する医療保護入院を実施した長谷川病院,及び,上告人に対する拉致監禁を伴う移送に関わった上告人の両親に対し,不法行為による損害賠償請求権及び名誉毀損による原状回復請求権等に基づき,両者に対して損害賠償,また,長谷川病院に対しては同入院に係る診断の撤回を請求した事件であり,同事件については,既に,上告人の両親に対して,上告人に対する拉致監禁を伴う長谷川病院への移送を依頼した部分が不法行為とされて損害賠償命令が確定しているが,現在,本件上告理由としても後述する適正手続違反に係る判断の遺脱を理由として,再審の訴えが係属中である(平成21年(ム)第156号損害賠償等請求事件の判決に対する再審事件。)。

2           同事件の第一審において,長谷川病院より,被上告人精神保健福祉士Tが作成した報告書(原判決にいう「本件報告書」),及び,被上告人高橋龍太郎が作成した入院紹介書(原判決にいう「本件紹介書」)について,その内容及び作成者,並びに,同報告書等の情報源となった上告人の母よりの報告内容が,医療保護入院に係る診断材料として,また,上告人の母よりは,上告人の住居に押し入って上告人を拉致監禁し長谷川病院に移送した4名が,被上告人敷島警備保障有限会社の代表者及び従業員であること,並びに,被上告人高橋龍太郎が,上告人の母に対し,同警備会社及び長谷川病院を紹介したとする経緯が,上告人に対して,はじめて明らかにされた(甲10,11)。

3           もう1件は,長谷川病院において,上告人に対し,本件報告書等の診断材料について開示も説明もおこなわず,即日の診断及び医療保護入院の必要性の判断を行った宮内茂医師に対し,本上告理由としても後述する適正手続違反等を理由とし,不法行為による損害賠償請求権及び名誉毀損による原状回復請求権等に基づき,損害賠償及び診断の取消を請求した事件であり,同事件については,第一審判決言い渡しが,平成2224日に予定されている(平成21()11635号損害賠償等()請求事件)。

3             原判決の構造と問題点

1           原判決の構造

原判決の構造において,本件上告理由と関係する部分は,主に以下の4つの部分である。

(1)           1つ目として,原判決は,本件報告書等の書証について,当事者間に争いのない事実として,「医療法人社団碧水会が,関連民事事件において,本件報告書及び本件紹介書を含む一連の文書(甲11)を書証として提出したため,その内容は,原告の知るところとなった。」と認めている(原判決が引用して認めた第一審判決書319行目から21行まで。医療法人社団碧水会は長谷川病院のことである。)。

(2)           2つ目として,原判決は,第一審判決書よりの引用も含め,本件報告書等(本件報告書,本件紹介書,それら報告の報告主でもある上告人の母が関連事件で提出した準備書面や同人よりの聴取内容を記載した療録等。)の,事後的に開示(提出)された文書から,「見えない組織に狙われている」や「毒をまかれている」と上告人が述べていたなどとし,また,被上告人敷島警備保障有限会社の代表者及び警備員が上告人宅に押し入り,上告人を拉致監禁した際の様子については,これも事後的に提出された同被上告人の陳述書から,「冷蔵庫にも何も食料がない状態であった。」などとし,当時の上告人が「病識の無い」状態であったとして,被上告人らの行為についての違法性や,医療保護入院措置に至る結果についての結果回避可能性の主張を退ける理由としている。

(3)           このことは,被上告人精神保健福祉士Tについて,「このような状況,特に控訴人には病識がなく,そのため治療の必要性も理解できなかった状況の下では,被告精神保健福祉士Tが原告に対して本件報告書の内容を伝える義務を負っていたと解する余地はない。」とした判断や(原判決書510行から。),被上告人高橋龍太郎について,「原告には病識が無く,そのため治療の必要性も理解できなかったことが認められ,そのような患者については,その家族の依頼のみに基づいて,病状を医師及び医療機関に伝えることもやむを得ないというべきであるから」とした判断(原判決の引用する第一審判決書1114行から。)などに見られる。

(4)           3つ目として,原判決は,被上告人高橋龍太郎が,上告人の母親に対し,被上告人敷島警備保障有限会社及び長谷川病院を紹介し,同時に,長谷川病院に対して入院の要請を行った行為について,上告人の,被上告人高橋龍太郎は適法な手続(精神保健法34条及び事務処理基準による手続)を案内すべきであったのであり,同人の行為により,適正手続保障の機会が奪われたとした主張に対し,「被控訴人龍太郎が順子に対し精神保健法34条及び事務処理基準に基づく手続と措置について説明したとしても,同手続を利用するかどうかは順子及び行男の判断に係るものであり,さらに同手続が実施されるかどうかは東京都その他の判断に係るから,被控訴人龍太郎が順子に上記手続等について説明すれば,当然にこれらが行われたということは困難である」と判断し(原判決書422行から51行),上告人の主張した結果回避可能性を否定している。

(5)           4つ目として,原判決は,当事者の主張を第一審と同じとし(原判決書33行から22行),主文に至る理由を構成している。

2           原判決の問題点

本件上告理由と関係する原判決の問題点は,主に以下の3つである。

(1)           1つ目として,上告人に対して,告知,弁解及び防御の機会が与えられず,事後的に開示(提出)された本件報告書等の書証内容を,被上告人らの行為及び医療保護入院の正当化事由とする論理展開には,憲法31条に係る違反がある(後述の上告理由(1))。

(2)           また,これに関しては, 被上告人らが,上告人に対して知らせてもいない報告内容について,上告人に病識がないと判断できたとする論理展開などに,理由不備・理由齟齬がある(後述の上告理由(3))。

(3)           2つ目として,被上告人高橋龍太郎について,前記の「被控訴人龍太郎が順子に対し精神保健法34条及び事務処理基準に基づく手続と措置について説明したとしても,同手続を利用するかどうかは順子及び行男の判断に係るものであり,さらに同手続が実施されるかどうかは東京都その他の判断に係るから,被控訴人龍太郎が順子に上記手続等について説明すれば,当然にこれらが行われたということは困難である」として結果回避可能性を否定した判断にも,憲法31条に係る違反がある(後述の上告理由(2))。

(4)           3つ目として,原判決は,前記の通り,上告人の主張を第一審と同じと判断して判決理由を構成しているが,上告人は,原審においてはじめて,請求原因の基礎として,本件事案における手続保障上の違法を主張して法的判断を仰いでいるから(原審準備書面(3)全文),上告人の主張を第一審と同じとした原判決の構成には,判断の遺脱がある(後述の上告理由(4))。

4             上告理由(1) 憲法の違反@(民事訴訟法第312条第1)

1           原判決には,以下のとおり,憲法31条「何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない。」に係る違反がある。

2           (前提)はじめに,強制的な精神科病院への移送及びその後の強制的な入院は,人身の自由の剥奪を伴う措置であるから,特段の事情のない限り,憲法31条に係る適正手続が要求されるべきである。

3           (前提)よって,同措置を実施する前に,同措置が必要とされる理由について,本人に対する,告知,弁解及び防御の機会が保障されなければならない(適正手続の保障)。

4           尚,非刑事手続については,適正手続請求権の規定を,31条ではなく13条に求める意見もあるが,13条違反については予備的理由とし,以下,特に13条の違反を併記することはしない。

5           (法令)本件に係る強制的な入院措置は医療保護入院であるが,医療保護入院においては,強制的な移送及び入院について,適正手続の要求を具体化した法令が,精神保健法34条の移送及び事務処理基準と解されるべきであり,よって,同法令の定めるとおり,強制的な移送及びその後の医療保護入院の必要性の判定については,強制的な移送の実施の前に,都道府県知事の指定した指定医が,民間の医師としてではなく,公務員として行うべき職務であることが,法令の要求である(精神保健法19条の4,2項「指定医は,前項に規定する職務のほか,公務員として,次に掲げる職務を行う。」,及び同2項の4「第三十四条第一項及び第三項の規定による移送を必要とするかどうかの判定」)。

6           (判例)また,医療保護入院と適正手続については,34条の移送によるかどうかとは別に,医療保護入院制度が,「人身の自由の剥奪」になりうるものであり,「適正手続の保証の欠如等の重大な憲法上の疑義」のあることを認めた上で,保護者の同意が,同制度における人権保障上の欠陥を補う唯一の手段とした地裁判断では,保護者には,本人との関係において,適正手続と同等の機能を果たす義務が課されるとし,これをしないでなされた同意を違法としている(甲17。別冊ジュリスト No.183,6869頁。)。

7           (前提)次に,適正手続の適用を否定するに足る特段の事情無く,本人に対する,告知,弁解及び防御の機会を保障せず,強制的な精神科病院への移送及びその後の医療保護入院の理由及び診断材料とされた報告書等は,それら強制措置を事後的に適法とする理由にはならないと解されるべきである。このことは,憲法31条に係る適正手続の要求される刑事手続において,本人に対する,被疑事実,処分理由等の理由の告知,同理由に対する弁解及び防御の機会の保障なく行われた,逮捕,勾留などの措置が違法とされ,また,それら措置の終了後に,被疑事実や処分理由を事後的に示して弁解及び防御の機会を与えたところで,既に終了した措置を適法とはなしえない論理に同じである。

8           (認定事実)前記の通り,原判決は,当事者間に争いのない事実として,「医療法人社団碧水会が,関連民事事件において,本件報告書及び本件紹介書を含む一連の文書(甲11)を書証として提出したため,その内容は,原告の知るところとなった。」と認めている(原判決が引用して認めた第一審判決書319行目から21行まで。)。

9           (原判決の論理構造)そして前記の通り,原判決は,それら事後的に開示(提出)された本件報告書等の書証から,「見えない組織に狙われている」や「毒をまかれている」と上告人が述べていたなどの報告内容や経緯説明を,当時の上告人が「病識の無い」状態であったとする根拠とし,被上告人らの行為の正当化事由,及び,医療保護入院に至る結果についての,結果回避可能性の訴えを退ける理由としている。

10       そうすると,上記8で示した原判決の認定は,本件において,強制的な精神科病院への移送及びその後の医療保護入院にあたり,上告人に対し,同措置が必要とされる理由及び診断材料についての,告知,弁解及び防御の機会の与えられなかった事実を認める認定である。

11       (認定事実)また,本件においては,上告人が,精神保健法の指定医ではない被上告人高橋龍太郎及び上告人の母の手配により,民間警備会社(被上告人敷島警備保障有限会社)により拉致監禁され,精神保健法の指定病院ではない長谷川病院に移送され,即日のうちに診断及び医療保護入院措置の実施された事実も認定されている。

尚,長谷川病院が精神保健法の指定病院ではないという事実は,公知の事実であるので,別途資料等を示すことはしない。

12       そして,被上告人らの行為の結果として行われた医療保護入院に関しても,医療保護入院制度の手続保障上の欠陥を補うとされる保護者(扶養義務者)の同意について,本件においては,医療保護入院の同意を行った上告人の母が,上告人に対して知らされることのなかった,医療保護入院において診断材料とされた本件報告書等内容にある報告を行っており,さらに,同人の依頼によるとされる拉致監禁を伴う移送が,既に関連事件で違法行為と確定していることを考慮すれば,同人が前記した地裁判断にある義務を果たしているとはいえず,違法な移送の後に長谷川病院で行われた保護者(扶養義務者)の同意も,本件事案において,適正手続の要求を補完するに足る理由とはならない。

13       ところで,一般的に,非刑事手続においては,人身の自由の剥奪を伴う措置を扱う事案であっても,迅速性の要求,緊急性や大量処理の必要性などの事情,特に医療に関しては,本人に意識がないであるとか,意思疎通の不能な状態であるなどの事情を考慮した上で,適正手続の要求について個別に判断することもやむなしとされる。

14       本件の場合,仮に,原判決において,適正手続の要求を否定するに足る事情を読み取れる部分があるすれば,それは前記の通り,当時の上告人が「病識の無い」状態であったとする判断に係る部分,すなわち,「病識がなく,早期に治療しなければ重篤な症状となるおそれがあった」などとする部分であるが,それら「病識」に関わる原判決の判断には,本項で述べる適正手続違反に加え,後述する上告理由(3)のとおり,被上告人らが,上告人に対して知らせてもいない報告内容(診断材料)について上告人に病識がないと判断できたとする矛盾した論理展開があるなど,結局のところ,当時の上告人が精神障害者であったとするにあたり,一般人を納得させるに足りる程度の論理性や適切な理由がないため(理由齟齬・理由不備),それら「病識」に関わる部分は,適正手続の要求を否定するに足る理由にはならない。

15       その他,原判決においては,適正手続の適用を否定するに足る特段の事情は認定されていない。

16       (原判決の論理構造)そうすると,原判決は,適正手続の適用を否定するに足る特段の事情がないにもかかわらず,本人に対して,告知,弁解及び防御の機会の与えられなかった,事後的に開示(提出)された報告書や陳述書等の文書を正当化事由として,精神保健福祉士が本人に連絡も確認もせずにまとめた精神医療目的の情報を第三者機関に無断で提供することを適法とし,また,法令の要求として,精神保健法の指定医が公務員として行うべき判定について,指定医ではない精神科医と私人たる扶養義務者が,人身の自由の剥奪を伴う強制医療の必要性の判定及び手配を,しかも,民間警備会社が拉致監禁を行い,精神保健法の指定病院ではない精神科病院に移送するという,精神保健法及び事務処理基準の要求に反した医療保護入院目的の移送の手配を進めることが適法であり,また,その後の強制医療として,これも,本人に対して,告知,弁解及び防御の機会を与えない診断材料による医療保護入院の実施が適法であるという判断をしていることになる。

17       (結論)以上から,原判決の論理構成は,適正手続の適用を否定するに足る特段の事情がないにもかかわらず,適正手続の違反を許容し,医療保護入院制度を濫用した脱法行為を許容する論理構成であり,よって,原判決に,憲法31条に係る違反のあることは明らかである。

5             上告理由(2) 憲法の違反➁ (民事訴訟法第312条第1)

1           原判決には,以下の通り,前記上告理由(1)で述べたほかにも,憲法31条に係る違反がある。

2           (前提)前記のとおり(上告理由(1)),本件に係る適正手続の要求については,憲法31条の要求を具体化した法令が,精神保健法34条及び事務処理基準であると解することが相当である。

3           (前提)前記のとおり(上告理由(1)),精神保健法は,強制的な精神科病院への移送及びその後の医療保護入院を要するかどうかの判定を,都道府県知事の指定した指定医が,民間の医師としてではなく,公務員として,強制移送の前に行うべき職務として定め,これを要求している。

4           (前提)被上告人高橋龍太郎は,精神保健法の指定医ではないから,同人には,公務員として,強制的な精神科病院への移送及び医療保護入院の必要性の判定を行う権限はない。

5           (原判決の論理構造)原判決は,前記のとおり,「被控訴人龍太郎が順子に対し精神保健法34条及び事務処理基準に基づく手続と措置について説明したとしても,同手続を利用するかどうかは順子及び行男の判断に係るものであり,さらに同手続が実施されるかどうかは東京都その他の判断に係るから,被控訴人龍太郎が順子に上記手続等について説明すれば,当然にこれらが行われたということは困難である」との理由で,上告人の,被上告人高橋龍太郎は適法な手続を案内すべきであったのであり,同人の行為により,適正手続保障の機会が奪われたとした主張についての,結果回避可能性を否定している。

6           しかし,「順子及び行男の判断」や「東京都その他の判断」がどうなるかに関わらず,適法な手続を案内するのが医師の義務であり,また,一般的に,医師が違法な手続を薦めるとは考えないから,被上告人高橋龍太郎が,上告人の知らない間に,上告人の母親に対し,民間警備会社及び長谷川病院を紹介し,同時に,長谷川病院に対して入院の要請を行った行為は,本件事案における適正手続違反の主たる原因であり,当然に不法行為と認定されなければならない。

7           尚,原判決は特に示していないが,被上告人高橋龍太郎は,当事者照会において,精神保健法34条及び事務処理基準について,「全て知っている。」と答えている(甲42-1及び42-5。照会事項(10)。)。

8           以上から,上告人の主張した結果回避可能性を否定した,原判決の上記判断は,精神保健法の要求及び憲法31条に係る適正手続の要求を否定する判断であり,よって,憲法に違反する判断である。

6             上告理由(3) 理由不備・理由齟齬(民事訴訟法第312条第2項第6)

1           原判決には,以下の通り,理由不備・理由齟齬がある。

2           (原判決の論理構造)前記のとおり,原判決は,事後的に開示(提出)された本件報告書等に記載されている,当時の上告人の状態や経緯説明から,当時の上告人が「病識の無い」状態であったとし,被上告人らの行為についての違法性や,違法拉致及び医療保護入院に至る結果についての結果回避可能性の主張を退ける理由としている。

3           (認定事実)一方で,原判決は,前記の通り,本件報告書等の内容が,当時上告人に対して知らされていなかったこと,すなわち,上告人が,同報告内容等について知らなかったことを認めている。

4           そうすると,原判決は,被上告人らが,もしくは上告人の母や長谷川病院側が,上告人に対して知らせてもいない報告内容(診断材料)について,上告人に「病識がない」と判断できたというのである。

5           しかし,知らされてもいない事柄についての認識を問うことは不可能であるから,この論理展開に矛盾のあることは明らかである。

6           そして,このことは,原判決が,被害妄想を症状とした医療保護入院事案にもかかわらず,被上告人ら,もしくは,本件関与者らが,上告人に対して,告知,弁解及び防御の機会を与えた上で,被害妄想と実証した具体的事項をひとつも認定していないことを示し,実際のところ,原判決に同認定は無く,よって,原判決に,人身の自由の剥奪を伴う強制医療措置もしくはその準備行為や原因となる行為を許容するに足りる程度の理由と論理性はなく,適切な理由が付されているとはいえない。

7           これについては,上告人が,迷惑行為等の具体的事項に関する映像音声等(21乃至27)を示したり,警視庁での相談時,当時の上告人による説明に対し,担当の警察官が,「まあ,誰かがやったのは間違いないですね。」,「それは十分妨害行為じゃないですか。」といった対応をしている音声記録等を示したりしているのに対し(甲31,32),原判決が,甲21にある映像ファイル(76ファイル)のほとんどについて言及せず,それら映像音声等のなかでも医療保護入院以降の記録しかない甲22(バッテリーの故障23回分のJAF記録)を取り上げたりしただけで,あえて,定義の曖昧な「集団ストーカー」という言葉を多用してその被害を否定したのみであることからも(原判決書,72行から12行),上記6で述べた論理性や理由の不足は明らかである。

8           また,医療保護入院中の担当医であった川原医師が上告人に対して交付した「現時点で精神科病名にあたるものがあるかどうかは不明である。したがって,継続的な治療は必要としない。」との診断書(甲15)についての原判決の判断も(原判決書6頁。),それでは被害妄想と実証され上告人に対し説明された具体的事項があるのかという問いに答えられるものではない 。

9           結局のところ,原判決の論理構成には,当時の上告人が精神障害者であったとするにあたり,一般人を納得させるに足りる程度の論理性や適切な理由がないのである。

10       そして,適正手続きの要求に照らせば,事後的に開示(提出)された本件報告書等の報告内容(診断材料)については,強制的な精神科病院への移送及びその後の医療保護入院の実施の前に,上告人に対して,告知,弁解及び防御の機会を与えた上で,報告内容が事実と一致しているのかどうか,医療の必要な状態であるのかどうかが判断されるべきであったのであり,本件報告書等にある上告人の状態や経緯説明について,事後的に,上告人が否定できるかどうかを問う原判決の試みが相当ではないことは明らかである。

11       (結論)以上から,原判決の,当時の上告人が「病識のない」状態であったとして,被上告人らの行為についての違法性や,違法拉致及び医療保護入院に至る結果についての結果回避可能性の主張を退けた論理構成には,明らかな理由不備・理由齟齬がある。

7             上告理由(4) 判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱

1           判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱のあることは,再審事由であるが(民事訴訟法第33819号),再審事由は絶対的上告理由になると解されること,また,本理由書で別途上告理由とする憲法違反と密接に関係することから,これを明らかにする

2           (原審における訴え)上告人は,前記のとおり,原審(第二審)においてはじめて,本件事案における手続保障上の違反を明示的に主張して法的判断を仰いでいる(原審準備書面(3)全文)。

3           (原審における訴え)そして上告人は,原審において,手続保障上の違反と損害との因果関係において,被上告人らによる不法行為が判断されるべきであるとして,法的判断を仰いでいる(原審準備書面(3),522行目からの「第3本件関与者ら作成書証の違法性」)。

4           (原判決の構造)前記の通り,原判決は,当事者の主張を第一審と同じとし,よって,上告人が,原審にて法的判断を仰いだ適正手続違反の訴え,並びに,同違反及び被上告人らの行為との因果関係について判断,また,同違反に係る損害の評価を行っておらず,このことは,以下の通り,判決に影響を及ぼすべき重要な事項についての判断の遺脱である。

5           (認定事実等)前記上告理由(1)(3)で述べた理由から,原判決には,憲法31条に係る違反があるが,これを,原判決の認定事実から,被上告人らの行為との関係でみると,精神保健福祉士であり,所属するEAPの公に謳う方針に「他機関や医療機関との連携,企業の人事・管理者との連携の場合も,必ず本人に確認をした上で情報の共有を図ります。」,「事前にご本人様の同意を得ることなく第三者に提供することはございません。」とあり,上告人と面識のない被上告人精神保健福祉士Tが,上告人に対して連絡も確認もせず,本件報告書を作成し,上告人に無断で,被上告人高橋龍太郎に交付した事実,精神福祉法の指定医ではない被上告人龍太郎が,同報告内容を上告人に伝えず,また,上告人の知らないうちに,上告人の母に対し,被上告人敷島警備保障有限会社及び長谷川病院を紹介し,長谷川病院に対しては入院紹介書としての本件紹介書を上告人に無断で交付した事実,そして,民間警備会社である被上告人敷島警備保障有限会社が,上告人の住居に押し入り,拉致監禁を伴い,精神福祉法の指定病院ではない長谷川病院に移送を行った事実に照らせば,被上告人らそれぞれの行為が,本件に係る適正手続違反及び損害の原因を構成することは明らかである。

6           (結論)よって,適正手続違反の訴えに対する判断が行われていれば,前記上告理由(1)(3)で述べた理由から,本件事案における,拉致監禁を伴う移送及び医療保護入院という連続した措置が違法であると判断され,同判断に基づいた損害の評価がなされ,また,被上告人らそれぞれの行為について,同違法及び損害との因果関係が認められてしかるべきである。

7           以上から,適正手続違反の訴えに対する判断の遺脱は,原判決の論理構造に影響を及すことの明らかな判断の遺脱である。

8             結語

原判決は,憲法31条に係る違反,理由不備,理由齟齬,判断の遺脱等の違反により,医療保護入院制度における脱法行為を許容し,国民の人身の自由を脅かし,ひいては国民の身体・生命を脅かす論理構成により主文を導き出しているから,即刻に破棄されなければならない。

以上

 

2015624日修正版追記 】                                  

 

2014624日修正版では、「違法拉致冤病のあらすじと証拠」修正版に同じく、ある精神保健福祉士の氏名の記載されていた部分を「精神保健福祉士T」へ、同精神保健福祉士の所属会社名称を「EAP」と修正しています。以下、同修正に至った経緯を時系列で示します。なお、日付はすべて2015年のものです。

1    精神保健福祉士T及び同所属会社の代理人より、410日付で、本書をホストしているプロバイダに対し、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、修正前の本文書には名誉権の侵害があるとの侵害情報提供とともに、送信防止措置を講じるよう申し出がありました。過去2と異なり、プライバシー侵害の主張はありませんでした。国家資格に基づいた行為がプライバシーに当たるという主張には無理があると考えたのかもしれません。

2    415日付文書で、プロバイダより私に対し、プロバイダ責任制限法第322号に基づき、送信防止措置を講ずることに同意するかどうかの照会が行われました。

3    422日付文書で、送信防止措置に同意しない旨を示すとともに、回答の理由を記載し、プロバイダに対し、回答を行いました。プロバイダ側提供の解答欄は小さすぎるため、理由を別紙として送付しました。同回答書別紙は、こちらです(PDF版)。同回答書及び下記プロバイダの判断につきましては、プロバイダ責任制限法の運用における問題点を探る方々にとりましても、ご参考になるかと思います。

4    619日付文書で、プロバイダより私に対し、プロバイダ側での検討の結果、修正前の本文書に、同プロバイダの約款(下記)に抵触する部分があると判断したとのことで、同部分の削除要請がありました。過去2よりも範囲が限定されています。

(同約款の6IP通信網サービスにおける禁止事項」より、抵触するとされた項目の抜粋)

(3) 他人を誹謗中傷し、又はその名誉若しくは信用を毀損する行為

今回も、回答書の内容をどのように検討し、どのような理由で結論に至ったかの説明はありません。規約に抵触すると判断した、という結論だけがあり、625日までに修正しないと文書の表示を停止する、対応しないと契約を解除する、という内容です。どうもこの国では、立場が強ければ説明責任はない、というのが当たり前のようです。ジョン・スチュアート・ミルの「自由論」に代表される近代法の精神、自由と責任に係る考え方が、日本社会においては猿真似でしかない、日本社会は、近代法の精神において、100年以上遅れている、と思えます。

5    とはいえ、前2件と同様、私のサイトの趣旨から、精神保健福祉士T及び勤務先企業の名前が記載されているかどうかという問題は、本来無関係であるはずのプロバイダと争うほど優先度の高い問題ではなく、また、プロバイダを変えたり海外にホストしたりといった姑息な手段を取るよりも、プロバイダの判断についての事実を記載して対応し、民事訴訟で認定された事実に対してさえ、公共の利益に係る医療関係者及び企業の名前が、説明責任なしに隠されることに対する是非の判断は読者の方々に行っていただくほうがよいと考え、624日、修正版を発行しました。

以上が、2015624日修正版発行の経緯となります。

2015624

戸ア 貴裕

 

 

【 ご支援・ご協力について 】

 

本コンテントは、AGSASサイト(疾病偽装、医療偽装、安全安心偽装ストーキング情報サイト)の一部です。2005年のサイト開設以来、調査、コンテンツ作成等を自費でまかない、ご支援のお申し出があるたびにお断りさせていただいてきたのですが、ここ数年、生活妨害がひどくなる一方の状況を鑑み、ご支援のお願いを掲載するに至りました。

つきましては、サイトの内容が有用であったとお考えの方、また、管理人の活動をご支援いただける方におかれましては、下記口座までお好きな金額をお振込みいただけますと幸いです。

三井住友銀行 渋谷支店(654)普通口座 5073008 名義 トサキ タカヒロ

昨今は振込に対しご不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。その際には、管理人が入金確認をいたしますので、前記メールアドレスまで、件名を「要入金確認」とし、振込人様のお名前と金額をお伝えいただければ、入金確認後に折り返しメールさせていただきます。ただし、前記の通り年間4万から5万通前後の迷惑メールがくる状態ですので、誠に申し訳ございませんが、入金確認は金額が1,000円以上の場合のみとさせていただきたく、ご理解の程お願い申し上げます。

なお、ご意見やご要望とは異なり、ご入金を理由にサイトの方針、活動内容やコンテンツの内容を変更することはいたしません。ご了承願います。

2014629

戸ア 貴裕