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平成22年(ネオ)第459号 損害賠償等()請求上告事件

上告人  戸ア貴裕    

被上告人  宮内 茂 

                                   

上告理由書

 

平成22823

最高裁判所 御中

上告人    戸ア貴裕

 

頭書の上告事件について,上告人は,下記のとおり上告理由書を提出する。

 

1             本上告理由書の構成

1           本件上告理由には,上告理由(1)から(5)がある。

2           (1)は,原判決に憲法の違反のあることを上告理由とする(民事訴訟法第3121項。)

3           (2)から(5)4件は,原判決に,原審における上告人の訴え(以下「控訴理由」という。)に対する,判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱のあることを指摘し,それら判断の遺脱を理由不備として主張し,上告理由とする (民事訴訟法31226)

2             上告理由(1) 憲法の違反(民事訴訟法第3121)

1           原判決は,違法な拉致により精神科病院(医療法人社団碧水会長谷川病院。以下「長谷川病院」という。)に移送された上告人に対し,即日のうちに,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の指定医である被上告人宮内茂が,その内容を上告人に知らせない報告書等(以下「本件報告書等」という。)を診断材料とした診断(以下「本件診断」という。),及び,医療保護入院(以下「本件医療保護入院」という。)の必要性の判断をした行為が,精神保健福祉法3311号を満たし,不法行為にあたらないとしている。

2           これについて,以下,原判決の構造と,憲法の要求する適正手続請求権の保障内容及びその目的とを照らし合わせることにより,原判決に憲法の違反のあることを明らかにし,上告理由(1)とする。

3           (憲法の要求)はじめに,本件に関係する憲法の要求について,以下(1)から(6)として示す。

(1)           病院への強制移送,強制入院等の強制医療に係る制度においては,これが国民の生命,身体に係る実力行使であるため,特段の事情のない限り,対象者に対し,憲法31条の要求する適正手続請求権が保障されるべきであり,学説も,同保障がなされるべきとしている。

(2)           非刑事手続における適正手続請求権の規定については,「自らの生命,身体,財産に対する決定に参加する権利」や「1人の人間として扱われるべき権利」として,これを憲法13条に求める学説もある。

(3)           適正手続の要求は,国民の生命,身体,財産に対する措置について,本人に対し,同措置を行う前に,いかなる事実に基づき,いかなる法規を適用して行われる措置であるのかを示したうえで,弁解及び防御の機会を保障すべきとする要求と解される。

(4)           適正手続の目的は,正確性の確保,及び,個人の尊厳の保障により,国民の生命,身体,財産に対する権利侵害,虐待や名誉毀損等を防止することであり,具体例としては,冤罪の防止などがある。

(5)           憲法による適正手続の保障は,手続きの法定に加え,手続きの適正,実体の法定,及び,実体法の適正さをもあわせて保障していると解される。

(6)           人を強制的に精神科病院に移送して医療保護入院措置をとるにあたっては,精神保健法34条及び同事務処理基準が慎重な公的手続を定めており,適正手続の観点から,正確性の確保や個人の尊厳の保障を要求している。

4           (原判決の構造)次に,上告理由(1)に関係する原判決の構造を以下(1)から(7)として示す。

(1)           はじめに,原判決は,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断に際して,上告人が,違法な拉致により長谷川病院に移送されていた事実を認めている(原判決の引用する第一審判決書811行から19行,及び,原判決書36行から7行。)。

(2)           次に,原判決は,被上告人宮内茂には,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断にあたり,診断材料とした本件報告書等の内容を上告人に対して知らせる義務は無かったと判断している(原判決の引用する第一審判決書1324行から1419行。)。

(3)           次に,原判決は,上告人に知らされることのなかった本件報告書等から,「見えない組織に狙われている」や「毒をまかれている」と話していた,「食事をとらない」とするなど当時の上告人の状態についての認定を行い,当時の上告人が「病識の無い」状態であったとし,これを,被上告人宮内茂には,上告人に対し,本件報告書等の内容を知らせる義務はなかったとする判断の前提としている。

(4)           上記(3)については,原判決の引用する第一審判決書624行からの「第3当裁判所の判断」において,「見えない組織に狙われている」,「毒をまかれている」と話していた,「食事をとらない」,「怒り出した」といった当時の上告人の状態に関する認定が,上告人に対し知らされることのなかった本件報告書等の内容(甲10及び11),及び,本件報告書等内容を前提とした診療録内容(乙A1及び乙A2。)により構成されており,そのうえで,原判決が,「そもそも精神科の入院診療の場面では,紹介状の類を患者に直接見せたりすることが患者(特に原告のように病識のない患者)の症状等に悪影響を与える危険性が大きいことは明らか」(原判決書の引用する第一審判決書1410行から12行。)などと説示している一方で,「見えない組織に狙われている」,「毒をまかれている」,「食事をとらない」,「怒り出した」といった記載が,本件診断時の診察記録とされる書証(乙A215頁)にはないことから明らかである。

(5)           次に,原判決は,本件診断が捏造であるとして上告人の提出した証拠について,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断の日である平成17414日当日以外の日付の証拠については,平成17414日に上告人が精神科の疾病にり患していなかった裏づけとはならないなどとして,もしくは,なんら触れないまま排斥している。

(6)           上記(5)については,下記アからウのとおりである。

           原判決の,上告人が,本件医療保護入院中の担当医であった川原医師も入院当初より精神科症状の存在が説明できていないとして提出した,同医師との会話音声記録(甲8,9,37,38),同会話の結果として同医師が「白紙にします。」として交付した「現時点で精神科病名にあたるものがあるかどうかは不明である。したがって,継続的な治療は必要としない。」との診断書(甲15),及び,長谷川病院診療録にある「妄想が存在するか否かを確定することはできない」との検査報告書について,それら証拠の日付が本件診断よりも後であることから,「414日時点で原告に被害妄想の存在が不明であったという裏付けとはならない。」「入院した当初から被害妄想の存在が不明であったという趣旨まで読み取ることはできない。」とする判断(原判決書の引用する第一審判決書1120行から122行,及び,同127行から15行。)。

           原判決の,「甲8,9,A2はいずれも事後のやり取りを記載した書面であり,これらによって,この認定を覆すに足りない。」とする判断(原判決書32行から4行。)。

           原判決の,本件診断に反するとして示した証拠の具体的事項に触れていない構成,すなわち,本件報告書等では「食事をとらなくなる」などと報告されているにもかかわらず,本件診断前後の7年間及び本件診断時において上告人の体重に変動のない記録(甲46),当時上告人の訴えていた日常的な生活妨害行為等の具体的事項に関する映像音声等(21から27。住居侵入,車両侵入,迷惑行為,生活妨害行為や挑発行為等を示す映像音声等。),本件診断よりも前に,警視庁での相談時,当時の上告人による説明に対し,担当した警察官らが,「まあ,誰かがやったのは間違いないですね。」,「それは十分妨害行為じゃないですか。」といった対応をしている音声記録(甲31,32),違法に拉致される前日,すなわち本件診断の前日に,上告人が,女性とドライブや食事に出かけたことを示す証拠等(甲19,44,45),それら本件診断と相反する多数の証拠の具体的事項についてまったく触れていない構成。

(7)           最後に,原判決は,人を強制的に精神科病院に移送して医療保護入院措置をとるには,精神保健福祉法34条及び同事務処理基準の定める公的手続に拠らなければならないとした上告人の主張に対し,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断が,精神保健福祉法3311号によるものであり,また,長谷川病院の医師らが違法な拉致について指示したり関与したりしたともいえないとして,上告人による同主張を退けている(原判決書35行から15行。)

5           上記原判決の構造と,前記した憲法の要求する適正手続請求権の保障内容及びその目的とを照らし合わせると,原判決には,下記(1)から(3)のとおりの問題がある。

(1)           告知,弁解及び防御の機会が保障されていない

原判決によれば,本件報告書等により,「見えない組織に狙われている」や「毒をまかれている」と話していた,「食事をとらない」などと報告され,これが診断材料となっていることを上告人は知らされていなかったのであるから,上告人は,これについて弁解も防御もできない。

この状態でおこなわれた本件診断及び本件医療保護入院判断になんら瑕疵がないとする原判決の判断は,適正手続請求権そのものを否定する判断であり,下記(2)及び(3)の問題の原因ともなる。

(2)           正確性の確保に係る保障がない

原判決によれば,被上告人宮内茂は,診断材料とした本件報告書等の内容を上告人に対して知らせていないのであるから,被上告人宮内茂においては,本件報告書等の内容について,上告人に対して認識の確認を行ったり,上告人の病識云々を確認したりすることはできず,また,上告人に知らせない診断材料にどのような嘘や間違いがあろうとも,上告人はこれを訂正することが出来ないから,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断においては,正確性の確保がなされたとはいえないし,正確性を期待することも出来ない。

(3)           自らの生命及び身体に対する決定に参加する権利の保障がない

いかなる報告がなされたために診察をしているのか,いかなる事実に基づき診断や入院の必要性の判断を下すのか,上告人に対し知らせたうえで判断が行われなければ,上告人は,自らの生命及び身体に対する決定に参加することができない。

6           また,先に示した,原判決の,「そもそも精神科の入院診療の場面では,紹介状の類を患者に直接見せたりすることが患者(特に原告のように病識のない患者)の症状等に悪影響を与える危険性が大きいことは明らか」との理由によれば,精神科の診察であるという理由で適正手続請求権が否定されてしまい,強制医療においても適正手続請求権が保障されるべきとする学説に反するし,そもそも同理由には,これから精神科の疾病症状が特定できるか否か,強制医療が必要か否かを判断すべき診察という場面において,精神病患者でありかつ病識が無いことを前提とする論理構成,すなわち,前提と結論が逆転している論理的誤謬もしくは詭弁があるから,この理由は失当である。

7           さらに,原判決の構成によれば,本件診断の過誤を訴えるには,精神科症状の存在を説明できない担当医との会話音声記録,その結果の診断書,症状とされた被害妄想の存在が確定できないとする本件医療保護入院中の検査結果,被害妄想とされた迷惑行為等が実際に行われていたことを示す映像音声等の記録や診断材料となった報告内容と相反する当時の上告人の生活の記録といった証拠では足りず,本件診断当日に上告人が精神科の疾病にり患していなかったとの証明が必要であるが,上告人は,当日,突然違法に拉致され,診断材料を知らされることなく,即日から閉鎖病棟に軟禁されているのであるから,同入院前後の客観的記録を提出する以外の立証活動は不可能であって,これが,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断において,適正手続請求権の保障されなかったことに起因することはいうまでもない。

8           以上から,原判決は,適正手続請求権の保障されるべき強制医療事案において,適正手続請求権そのものを否定した結果,上記5から7で挙げたとおりの憲法の要求に反する問題を抱えたままであり,また,適正手続請求権を保障せずに得られた証拠(本件報告書等及び診療録。)によって適正手続請求権を否定するという,憲法に従うべき裁判所の判断として許されるべきではない論理構成をとっているから,原判決に,憲法の違反のあることは明らかである。

9           上記憲法違反の訴えを考慮しても原判決に違法がないとされるのであれば,刑事手続において,罪刑法定主義,令状主義等に基づく明文化された法規により,適正手続請求権の保障,正確性の確保や個人の尊厳の保障をし,生命,身体,財産に対する権利侵害,虐待や名誉毀損等の防止,例えば冤罪の防止等がなされるのに対し,同じく,生命,身体,財産に対する権利侵害,虐待や名誉毀損等の恐れのある強制医療の制度において,実体法である精神保健福祉法331項及び同1号による医療保護入院制度については,これが,適正手続請求権の保障,正確性の確保や個人の尊厳の保障をしなくてもよい制度であることを国が認め,許容することになるのであり,原判決は,全国民の生命,身体,財産及び名誉を脅かす判例となる。

3             上告理由(2) 理由不備@ (民事訴訟法第31226)

1           原判決には,以下の通り,理由不備の違法がある。

2           上告人は,控訴理由において,以下3から5の通り,本件診断及び本件医療保護入院判断が,行政の法的見解に反して違法である旨主張した(控訴理由書7頁下2行から87行,及び,同1412行から20行。)。

3           (行政の法的見解等)精神保健法34条制定時の厚生省(当時)の見解では,本人が病院を訪れない場合,診断及び医療保護入院の必要性の判断を行う医師は,医療保護入院を実施する病院に属する指定医であってはならず,指定医が往診して診察をおこない,同指定医の所属する病院に医療保護入院させることを違法としている。

4           例えば,家族が本人を病院まで連れて行ったとしても,本人が車から降りようとしないような場合,指定医が車まで赴いて診察し,同指定医の所属する病院に医療保護入院させることを違法としている(甲16。ジュリスト増刊233頁左段「D往診」の部分。)。

5            単に病院の駐車場まで強制的に連れて行かれたか診察室まで強制的に連れて行かれたかの違いにより適用する条文や法解釈を変えることは社会通念上著しく不合理であるから,本件のように,指定医の属する病院の診察室まで本人を強制的に連行し,ましてや診断材料について知らせることも確認や反論の機会を与えることもなしに,同指定医の所属する病院において医療保護入院措置をとった場合にも,当然に,診断,医療保護入院の必要性の判断,及び,医療保護入院措置は違法と評価されるべきである。

6           しかし,原判決は,上告人の上記主張について判断していない。

7           なお,原判決は,本件において指定医が上告人に対する違法な拉致に関与したとはいえないとしているが,上記行政の法的見解については,上記4にあげた例に照らし,指定医が病院までの移送に関与したかどうかについては問わない内容であることが明らかである。

8           上記判断の遺脱は,本件診断及び本件医療保護入院判断が不法行為にあたるかどうかに直接影響を及ぼす重要事項についての判断の遺脱であるから,これを,原判決における理由不備として主張し,上告理由(2)とする。

4             上告理由(3) 理由不備➁(民事訴訟法第31226)

1           原判決には,以下の通り,理由不備の違法がある。

2           上告人は,控訴理由において,以下3及び4の通り,本件医療保護入院判断における保護者(扶養義務者)の同意が違法である旨主張した(控訴理由書88行から14行,及び,同14頁下6行から154行)。

3           (判例)医療保護入院と適正手続について,医療保護入院制度が,「人身の自由の剥奪」になりうるものであり,「適正手続の保障の欠如等の重大な憲法上の疑義」のあることを認めた上で,保護者の同意が,同制度における人権保障上の欠陥を補う唯一の手段とした地裁判断では,保護者には,本人との関係において,適正手続と同等の機能を果たす義務が課されるとし,これをしないでなされた同意を違法としている(甲17。別冊ジュリスト No.183,68から69頁。)。

4           本件においては,同意を行った上告人の母が,上告人に対して知らされることのなかった本件報告書等(診断材料)にある報告を行っており,同人が,上告人に対して,報告内容,経緯や関与者らを隠し続けた音声記録のあること(甲8,9),さらに,同人の依頼によるとされる拉致が,既に関連事件で違法行為と確定していること等を考慮すれば,上告人の母が,前記した地裁判断にある義務を果たしているとはいえず,本件医療保護入院判断における保護者(扶養義務者)の同意には瑕疵があり,違法と評価されなければならない。

5           しかし,原判決は,上告人の上記主張について判断していない。

6           上記判断の遺脱は,本件医療保護入院判断の違法性の評価に直接影響を及ぼすべき判断の遺脱であるから,これを,原判決における理由不備として主張し,上告理由(3)とする。

5             上告理由(4) 理由不備B(民事訴訟法第31226)

1           原判決には,以下の通り,理由不備の違法がある。

2           上告人は,控訴理由において,以下3及び4の要旨で,第一審判決に判断の遺脱がある旨主張した(控訴理由書191行から209行。)。

3           第一審判決は,違法拉致即日に行われた,本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断により,当時の上告人が,警察等に相談をはじめ,また,映像音声等の記録を開始したばかりであった,住居侵入,車両侵入,迷惑行為,生活妨害行為や挑発行為等についての訴えが,被害妄想であるかどうかの確認も検証もなく,被害妄想として処理され名誉が毀損されたたとする請求原因,すなわち,被上告人宮内茂の行為と損害との因果関係について判断していない。

4           同因果関係について,上告人の負う証明責任は,被上告人宮内茂が,本件報告書等の報告内容を鵜呑みにしてこれを上告人に知らせず,被害妄想と立証された具体的事項が1つもないにもかかわらず,被害妄想との診断を確定させた事実を証明することで足りる。

5           しかし,原判決は,上記請求原因について判断していないし,第一審判決にも原判決にも,住居侵入,車両侵入,迷惑行為,生活妨害行為や挑発行為等の訴えについて,被害妄想かどうかの事実確認や検証がなされたとの認定はなく,よって,上記証明責任は果たされている。

6           上記判断の遺脱は, 本件診断の違法性の評価に直接影響を及ぼすべき判断の遺脱であるから,これを,原判決における理由不備として主張し,上告理由(4)とする。

6             上告理由(5) 理由不備C(民事訴訟法第31226)

1           原判決には,以下の通り,理由不備の違法がある。

2           上告人は,控訴理由において,以下3及び4の通り,被上告人宮内茂が平成17414日に上告人を診察したというのであれば矛盾が生じるとして指摘した複数の矛盾点についてまったく判断しないまま,同診察のあったことを前提とした第一審判決には,審理不尽の違法があると指摘した(控訴理由書2010行から22頁最終行。)。

3           同矛盾点は,以下(1)から(7)の通りである(第一審準備書面(6)46行から522行より抜粋。)。

(1)           「被告宮内は,これまでに,本件拉致について知らなかったと主張し,また,本件報告書が原告に対する連絡も確認もなしに作成された経緯,原告の訴えていた犯罪等を示す数多くの映像音声等記録の存在,その他当時の原告の状態を示す記録等(以下別途示す。)について知らなかった旨主張する一方で,原告に対する診察は行ったと主張している。」

(2)           「仮に被告宮内による診察が行われたとすれば,甲6に示したとおり,原告の服装は就寝時のままであり,本件拉致時に羽交い絞めにされて引き摺られた結果飛び散った血痕の付着している服装であり,かつ原告が出血している状態で行われたことになる。このことは,当日の診療録に怪我の治療を行ったと記載のあることからも明らかである。」

(3)           「また,診療録に,原告が拉致されて連れてこられたと述べた旨の記載のあることは関連事件1でも認められている事実であり,仮に診察が行われていれば,原告は,なによりも先に,突然住居に押し入られ拉致されて連れてこられたのであって診察を受ける気もないし,そのまま自宅に帰らせてほしい旨伝えていたことが当然考えられる。」

(4)           「さらにいえば,当日の長谷川病院内では,本件拉致を行った敷島警備保障有限会社の4人が,常に原告の周囲を固めていた状況があった。そうでなければ原告は当然そのまま自宅に帰っている。」

(5)           「そうすると,仮に被告宮内による診察があったとすれば,被告宮内が,原告の服装や飛び散った血痕についてなんら触れないまま,原告の周囲を固めている4人について全く触れないまま,どのようにして原告が長谷川病院に連れてこられたかについていっさい考えを巡らせないまま,また,原告が本件拉致について全く触れないまま,診察記録とされる書証(乙A215頁)にある会話のみが行われたという,本件経緯からして極めて考えにくい不自然な診察がなされたことになる。」

(6)           「また,仮に診察記録とされる書面にあるような内容を原告が被告宮内に対し話したとすれば,原告は同時に,当時原告の訴えていた犯罪行為等を示す多数の映像音声等記録の存在について説明し(21で示す計67ファイル。証拠説明書(3)全文。) ,医療で解決すべき問題ではないことを訴えたことが当然考えられるし,このことは,甲8及び9に示した川原医師との会話からも明らかであって,被告宮内が同映像音声等記録の存在について知らなかったという事態は起こりえない。」

(7)           「さらに,仮に診察があったのであれば,これも映像音声記録等を提出しているとおり,原告が当時訴えていた犯罪行為等について警視庁等に相談中であり原告の説明を聞いた警視庁の警察官も『病気だとは思わない』『誰かがやったのは間違いないですね』等と話した事実(甲31及び32),本件拉致前日すなわち本件診断及び本件入院措置実施の前日に,原告が以前交際していた女性とドライブ,映画鑑賞及び食事に出かけていた事実(19及び44),『食事をとらない』などという本件報告書内容に反して原告の体重に変動などない事実(甲46),訴外鹿又との通信記録(甲25から27)等,本件報告書内容等の診断材料と反対の事実を示す診断材料として当然考慮すべきであった事実について,被告宮内が知らなかったなどという事態も起こりえない。」

4           上記複数の矛盾点は,被上告人宮内茂が上告人に対し,一般的に診察といえるような行為を行ったとするならば,当然に,すべて解決されるべき矛盾点である。

5           しかし,原判決は,上記審理不尽の訴えについてふれることなく,第一審判決書に対し,「なお,控訴人は,被控訴人が診察など行っていないとも主張するが,以上の認定説示に照らし,理由がないことが明らかである。」との一文を付け足したにとどまっている(原判決書225行から31行。)。

6           上記矛盾点は,本件診断に際して,そもそも診察が行われたかどうかに係る重要な矛盾点であるから,同矛盾点を解決しないまま,被上告人宮内茂による診察の行われたことを前提とする原判決においては,争点をめぐり攻撃防御方法につき判断して主文に到達した過程が明らかでないから,これを理由不備とし,上告理由(5)とする。

7             上告受理申立理由について

1           本件には,関連する事件として,平成22年(ネ受)第490号上告受理申立事件が存在し,同事件の申立理由と本件上告理由が密接に関連するため,上告理由の理解のために,下記枠線内に同申立理由を示す。

上告受理申立理由(法令解釈違反)

1           原判決には,以下の通り,精神保健福祉法331項及び同1号についての法令解釈違反がある。

2           上告理由(1)から(3)で指摘しているとおり,原判決は,精神保健福祉法34条の要求する慎重な公的手続ではなく違法な拉致によって長谷川病院に移送された申立人に対して,相手方宮内茂が,診断材料となった本件報告書等内容を知らせずに行った本件診断及び本件医療保護入院の必要性の判断,並びに,申立人本人に知らされない報告や経緯説明を診断材料として相手方宮内茂らに提供しかつ上記の違法拉致を指示した申立人の母の同意による医療保護入院が,精神保健福祉法331項及び同1号を満たして適法と判断している。

3           上記判断は,精神保健福祉法331項及び同1号の適用範囲についての解釈といえるが,この解釈では,@上告理由(1)のとおり適正手続請求権の否定により正確性の確保ができない等の問題を残し,➁上告理由(2)で指摘した行政の法的見解や精神保健福祉法34条の目的と齟齬を来たし,かつ,B上告理由(3)で指摘したとおり適正手続保障としての役割を果たしたとはいえない保護者(扶養義務者)の同意が適法とされてしまうから,同解釈は,精神保健福祉法331項及び同1号の許容すべき範囲を超えた解釈であるといわざるを得ない。

4           上記法令解釈に違法がないとされるのであれば,刑事手続において,罪刑法定主義,令状主義等に基づく明文化された法規により,適正手続請求権の保障,正確性の確保や個人の尊厳の保障をし,生命,身体,財産に対する権利侵害,虐待や名誉毀損等の防止,例えば冤罪の防止等がなされるのに対し,同じく,生命,身体,財産に対する権利侵害,虐待や名誉毀損等の恐れのある精神科強制医療の制度において,実体法である精神保健福祉法331項及び同1号の定める医療保護入院制度については,これが,適正手続請求権の保障,正確性の確保や個人の尊厳の保障をしなくてもよい制度であることを国が認め,許容することになるのであり,原判決は,全国民の生命,身体,財産及び名誉を脅かす判例となる。

5           以上から,原判決には,精神保健福祉法331項及び同1号についての法令解釈違反のあることが明らかである。

 

以上

 

 

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2014629

戸ア 貴裕