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平成22年(ネ)第1364号 損害賠償等()請求控訴事件

控訴人  戸ア貴裕

被控訴人  宮内 茂

                                   

控訴理由書

 

平成2245

東京高等裁判所第7民事部 御中

控訴人    戸ア貴裕

 

頭書の控訴事件について,控訴人は,下記のとおり控訴理由書を提出する。

 

1             総説

本控訴理由書の構成は,以下の通りである。

1           関連事件について

本件に関連する事件として,本件と同一の医療保護入院事案を扱う民事事件が2件あり,本件控訴理由と関係する部分があるため,控訴理由の理解のために,同2件の民事事件について示す。

2           原判決の構造と問題点

控訴理由の理解のため,原判決の構造と問題点を指摘する。

3           控訴理由(1) 憲法の違反等

原判決の,被控訴人宮内茂の義務違反に係る主張を退けた判断,及び,同判断の理由構成が,憲法31条,憲法13条,精神保健法,判例,行政の法的見解,及び,社会的要請にことごとく反して違法であること,また,それら法規範に照らし,本件において,被控訴人宮内茂による不法行為の存在が明らかであることを示す。

4           控訴理由(2) 理由齟齬,理由不備及び審理不尽

原判決には,適正手続請求権及び被控訴人宮内茂の義務違反を否定するにあたり,矛盾した理由展開及び理由の不備があるので,これを理由齟齬,理由不備及び審理不尽として明らかにする。

5           控訴理由(3) 判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱・裁判の脱漏

原判決は,請求の一部について判断を遺脱しており,よって,原判決には判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱もしくは裁判の脱漏があるから,これを明らかにする。

6           控訴理由(4) 審理不尽

原判決は,被控訴人宮内茂が診察をしたというのであれば生じるとして控訴人の指摘した複数の矛盾点について,まったく判断せずに,診察のあったことを前提として判決理由を構成しており,これが主要事実(診察の存否)に関わることから,審理不尽として明らかにする。

2             関連事件について

本件に関連する事件として,本件と同一の医療保護入院事案を扱う民事事件が2件あり,控訴理由と関係する部分があるため,控訴理由の理解のために,以下に概要を示す。

1           1件は,控訴人が,控訴人に対する医療保護入院を実施した長谷川病院,及び,控訴人に対する拉致監禁を伴う長谷川病院への移送に関わるなどした控訴人の両親に対し,不法行為による損害賠償請求権及び名誉毀損による原状回復請求権等に基づき,両者に対して損害賠償,また,長谷川病院に対しては同入院に係る診断の撤回を請求した事件であり,同事件については,既に,控訴人の両親に対して,控訴人に対する拉致監禁を伴う長谷川病院への移送を依頼した部分が不法行為とされて損害賠償命令が確定しているが,現在,本件控訴理由としても後述する適正手続違反(憲法違反)に係る判断の遺脱を理由として,再審の訴えが係属中である(平成21年(ム)第156号損害賠償等請求事件の判決に対する再審事件。)。同事件を以下「関連事件1」という。

2           関連事件1の第1審において,長谷川病院より,医療保護入院に係る診断材料となった報告書(原判決及び本書にいう「本件報告書」。)及び入院紹介書について,その内容及び作成者,並びに,同報告書及び紹介書内容の主な情報源となった控訴人の母よりの聴取内容等が,また,控訴人の母よりは,控訴人の住居に押し入って控訴人を拉致監禁し長谷川病院に移送した4名が,敷島警備保障有限会社の代表者及び警備員であること,並びに,精神科医である高橋龍太郎(タカハシクリニック)が,控訴人の母に対し,同警備会社及び長谷川病院を紹介し,また,長谷川病院に対して入院紹介書を交付したとする経緯が,控訴人に対して,はじめて明らかにされた(甲10,11)。

3           もう1件は,前記のとおり関連事件1で明らかにされた経緯に基づき,控訴人が,控訴人に対して連絡も確認もせずに本件報告書を作成して高橋龍太郎に交付したとされる精神保健福祉士T(精神保健福祉士。EAP所属。),これも控訴人の知らないうちに,控訴人の母に対して長谷川病院及び警備会社を紹介し,合法的手段ではなく違法拉致監禁による移送手段を教え,また,入院紹介書を作成して長谷川病院に対して交付したとされる高橋龍太郎,並びに,控訴人の住居に不法に押し入り,控訴人に対する拉致監禁及び長谷川病院への移送を実行した敷島警備保障有限会社に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償を請求した事件であり,現在,上告審が係属中である(平成22()397号損害賠償()請求上告事件)。同事件を以下「関連事件2」という。

3             原判決の構造と問題点

1           原判決の構造

原判決の構造において,本件控訴理由と関係する部分は,主に以下の3点である。

(1)           1点目として,原判決は,@当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとしたうえで,➁「そもそも精神科の入院診療の場面では,紹介状の類を患者に直接見せたりすることが患者(特に原告のように病識のない患者)の症状等に悪影響を与える危険性が大きいことは明らか」であること,B「原告の発言内容が順子及び行男の説明内容,高橋医師の紹介書の内容,本件報告書の内容とおおむね符合していたこと」,及び,C「原告は本件報告書等の開示を求めていなかったと認められる」ことを前提とし,「原告が援用する憲法31条の法定手続の保障の趣旨を考慮しても,本件診断前に原告に対し本件報告書等を開示して所見を説明し,内容について確認する機会や不服申し立ての機会を与える義務が被告にあったなどとは,到底いうことができない。」と判断し(原判決書1410行から20行。),適正手続違反の主張,及び,被控訴人宮内茂による診断及び医療保護入院の必要性の判断に係る義務違反の主張を退けている。

(2)           2点目として,原判決は,適正手続違反の主張を退ける別の理由として,原審における控訴人の主張を,D「本件病院への移送が違法である以上,一連の手続である本件入院判断も違法である旨主張する。」として,同主張について,「原告の主張は独自の主張というほかなく,採用することができない。」としており(原判決書1421行から153行。),人を強制的に精神科病院に移送し入院させる手続は,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健法」という。)の34条及び33条のうち34条により移送されたものに対する入院措置を定めた条項によらなければならないとした控訴人の主張について判断することなく,被控訴人宮内茂による本件診断及び本件入院の必要性の判断について,違法な移送のあった事実とは切り離したうえで,精神保健法3311号(診察に訪れた者に対する診察及び入院の必要性の判定に関する条項。),並びに,同2項及び同3項(保護者の選任に関する条項。)を適用し,適法としている(原判決書138行から23行。)

(3)           3点目として,原判決は,本件報告書等(本件報告書,本件紹介書,それら書面内容の報告主でもある控訴人の母が関連事件1で提出した準備書面,及び,それら報告を基にした診療録内容。甲10,11,A1及び乙A2。)の,事後的に開示(提出)された文書,すなわち,関連事件1提起後まで控訴人に対して知らされることも説明されることもなかった診断材料等から,「見えない組織に狙われている」や「毒をまかれている」と控訴人が述べていたなどとしたうえで,当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとし,適正手続請求権及び被控訴人宮内茂の義務違反を否定する理由の一部としている。

(4)           これについては,原判決書624行からの「第3当裁判所の判断」において,控訴人に対する拉致監禁が行われるまでの全経緯の認定が,先に挙げた本件報告書等の内容により構成されており(甲10,11,A1及び乙A2。),また,医療保護入院中の経緯の認定が,それら報告に基づいた診療録内容(乙A1及び乙A2。)により構成されていることから明らかである。  

2           原判決の問題点

本件控訴理由と関係する原判決の問題点は,主に以下の5点である。

(1)           1点目として,適正手続請求権の否定理由,並びに,被控訴人宮内茂による診断及び医療保護入院の必要性の判断を適法とする理由を,控訴人に対して,知らされることも説明されることも確認や反論の機会の与えられることもなかった本件報告書等の診断材料に求める原判決の理由展開には,憲法31条及び13条に係る違法等がある(後述の控訴理由(1)。)。

(2)           2点目として,被控訴人宮内茂が,診断及び医療保護入院の必要性の判断にあたり診断材料とした本件報告書等の内容について,控訴人に対して,知らせる義務も説明する義務も確認や反論の機会を与える義務も無かったとした原判決の判断にも,憲法31条及び13条に係る違法等がある(上記1点目とともに後述の控訴理由(1)。)。

(3)           3点目として, 原判決の,被控訴人宮内茂が,控訴人に対して知らせてもいない報告内容について,控訴人に病識がないと判断できたとする理由展開や,被控訴人宮内茂が,控訴人に対して知らせてもいない報告内容について,入院の必要性を説明できたとする理由展開,及びその前提となる被害妄想が認められたとする判断には, 理由齟齬,理由不備及び審理不尽がある(後述の控訴理由(2))。

(4)           4点目として,原判決は,請求の趣旨の2項,及び,これに係る請求原因について判断しておらず,よって,原判決には,判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱もしくは裁判の脱漏がある(後述の控訴理由(3))。

(5)           5点目として,原判決は,被控訴人宮内茂が控訴人を診察したというのであれば矛盾が生じるとして控訴人の指摘した複数の矛盾点について(準備書面6の第3全文。),まったく判断しないまま,診察のあったことを前提として判決理由を構成しており,原判決には,主要事実(診察の存否)に係る審理不尽がある(後述の控訴理由(4))。

4             控訴理由(1) 原判決における憲法の違反等

1           原判決の,被控訴人宮内茂の義務違反に係る主張を退けた判断,及び,同判断の理由構成が,憲法31条,憲法13条,精神保健法,判例,行政の法的見解,及び,社会的要請にことごとく反して違法であること,また,それら法規範に照らし,本件において,被控訴人宮内茂による不法行為の存在が明らかであることを,以下に示す。

2           (前提)はじめに,精神科病院への強制移送やその後の強制入院措置は,人身の自由の剥奪を伴いかつ生命に関わる措置であるから,特段の事情のない限り,憲法31条に係る適正手続の保障,すなわち,同措置を実施する前に,同措置が必要とされる理由について,本人に対する,告知,弁解及び防御の機会の保障がなされるべきである。

3           (前提)学説も,強制的な入院措置のような身柄拘束においては,適正手続が適応されるべきと見ている。

4           (前提)非刑事手続については,適正手続請求権の規定を,憲法31条ではなく,「1人の人間として扱われるべき権利」として,憲法13条に求める学説もある。

5           (法令)本件に係る強制的な入院措置は医療保護入院であるが,人を強制的に精神科病院に移送して医療保護入院措置をとるにあたり,適正手続の要求を具体化した法令は,精神保健法第34条の規定による移送,同事務処理基準,及び,精神保健法33条のうち34条の規定により移送された者に対する医療保護入院措置であり,よって,同法令の定めるとおり,強制的な移送及びその後の医療保護入院の必要性の判定については,強制的な移送の実施の前に,都道府県知事の責任による慎重な調査の後,都道府県知事の指定した指定医が,民間の医師としてではなく,公務員として行うべき職務であることが,法令の要求である(精神保健法19条の4,2項「指定医は,前項に規定する職務のほか,公務員として,次に掲げる職務を行う。」,2項の4「第三十四条第一項及び第三項の規定による移送を必要とするかどうかの判定」,及び事務処理基準。甲16,17,18, 並びに,同法制定の背景や事務処理基準については原審準備書面(1)。)。

6           (行政の法的見解等)精神保健法34条制定時の厚生省(当時)の見解では,本人が病院を訪れない場合,診断及び医療保護入院の必要性の判断を行う医師は,医療保護入院を実施する病院に属する指定医であってはならず,指定医が往診して診察をおこない,同指定医の所属する病院に医療保護入院させることを違法としている。

例えば,家族が本人を病院まで連れて行ったとしても,本人が車から降りようとしないような場合,指定医が車まで赴いて診察し,同指定医の所属する病院に医療保護入院させることを違法としている(甲16。ジュリスト増刊233頁左段「D往診」の部分。)。

7           (判例)医療保護入院と適正手続について,医療保護入院制度が,「人身の自由の剥奪」になりうるものであり,「適正手続の保障の欠如等の重大な憲法上の疑義」のあることを認めた上で,保護者の同意が,同制度における人権保障上の欠陥を補う唯一の手段とした地裁判断では,保護者には,本人との関係において,適正手続と同等の機能を果たす義務が課されるとし,これをしないでなされた同意を違法としている(甲17。別冊ジュリスト No.183,68から69頁。)。

8           (前提)適正手続の適用を否定するに足る特段の事情無く,本人に対する,告知,弁解及び防御の機会を保障せず,強制的な精神科病院への移送及びその後の医療保護入院の根拠(診断材料)とされた報告書等は,それら強制措置を事後的に適法とする理由にはならないと解されるべきである。このことは,適正手続の要求される刑事手続において,本人に対する,被疑事実,処分理由等の理由の告知,同理由に対する弁解及び防御の機会の保障なく行われた,逮捕,勾留などの措置が違法とされ,また,それら措置の終了後に,被疑事実や処分理由を事後的に示して弁解及び防御の機会を与えたところで,既に終了した措置を適法とはなしえない論理に同じである。

9           以上の前提とあわせ,以下,原判決の,「原告が援用する憲法31条の法定手続の保障の趣旨を考慮しても,本件診断前に原告に対し本件報告書等を開示して所見を説明し,内容について確認する機会や不服申し立ての機会を与える義務が被告にあったなどとは,到底いうことができない。」とした判断が違法であることを示す。

10       (原判決の論理構造)原判決において,同判断の理由となる部分は,前記の通り,@当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとする部分,➁「そもそも精神科の入院診療の場面では,紹介状の類を患者に直接見せたりすることが患者(特に原告のように病識のない患者)の症状等に悪影響を与える危険性が大きいことは明らか」とする部分,B「原告の発言内容が順子及び行男の説明内容,高橋医師の紹介書の内容,本件報告書の内容とおおむね符合していた」とする部分,C「原告は本件報告書等の開示を求めていなかったと認められる」とする部分,及び,D原審における控訴人の主張を,「本件病院への移送が違法である以上,一連の手続である本件入院判断も違法である旨主張する。」として,同主張について,「原告の主張は独自の主張というほかなく,採用することができない。」とした部分である。

11       はじめに,当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとする理由部分(上記10で挙げた@)については,以下の通りの違法がある。

12       (当事者間に争いのない主要事実)被控訴人宮内茂が,診断及び医療保護入院の必要性の判断に際し,控訴人に対し,本件報告書等の診断材料について知らせることも説明することも確認や反論の機会を与えることもしていない事実は,被控訴人も認めている当事者間に争いのない事実であり,前記のとおり,原判決もこれを前提として判決理由を構成している。

13       また,同事実に関しては,関連事件21審及び2審判決において,両事件の裁判所も,当事者間に争いのない事実として,「医療法人社団碧水会が,関連民事事件において,本件報告書及び本件紹介書を含む一連の文書(甲11)を書証として提出したため,その内容は,原告の知るところとなった。」と認めている(関連事件21審判決書319行目から21行まで。第2審判決書では同部分をそのまま引用している。「関連民事事件」とは関連事件1のことであり,医療法人社団碧水会は長谷川病院のことである。)。

14       (原判決の論理構造)前記の通り,原判決は,それら控訴人に対して知らされることも説明されることもなかった本件報告書等の診断材料やそれに基づく診療録等から,「見えない組織に狙われている」や「毒をまかれている」と控訴人が述べていたなどの報告内容や経緯説明を,当時の控訴人が「病識の無い」状態であり入院の必要があったとする根拠とし,適正手続請求権及び被控訴人宮内茂の義務違反を否定する理由の一部としている。

15       (原判決の論理構造)そうすると,原判決は,本来,はじめに適用すべき法令の要求(適正手続の要求)があるにもかかわらず,同法令を適用せずに得られた結果(診断材料及び診療録)を前提として適正手続違反の訴えを退けているのであるから,原判決の理由展開が本末転倒であり,論理的誤謬もしくは詭弁があり,違法のあることは明らかである。

16       また,原判決の「病識」に関する判断については,後述する「控訴理由(2)」のとおり,矛盾した論理展開(理由齟齬)及び理由不備があり,そもそも,原判決の理由構成からは,本件において,「病識」の前提である,被害妄想症状が認められたとする結論さえ導き出せない。

17       よって,「病識」に関する原判決の理由部分(上記10で挙げた@)は,憲法31条及び13条に反する違法な論理展開によるものであり,かつ,別途述べる矛盾等もあり(控訴理由(2)),とうてい,適正手続の要求を否定できる理由とはならない。

18       次に,「そもそも精神科の入院診療の場面では,紹介状の類を患者に直接見せたりすることが患者(特に原告のように病識のない患者)の症状等に悪影響を与える危険性が大きいことは明らか」として,被控訴人宮内茂が控訴人に対し本件報告書等を開示して所見を説明し,内容について確認する機会や不服申し立ての機会を与える義務はなかったとした理由部分(上記10で挙げた➁)についてみる。

19       この理由によれば,精神科の入院診察であるという理由で適正手続の要求が否定されてしまい,強制的な入院措置においても適正手続が適用されるべきであるとする法学説に反するし,そもそも同理由には,これから精神科の疾病症状が存するか否か,医療が必要か否か等を判断すべき診察という場面において,精神病患者でありかつ病識が無いことを前提とする論理構成,すなわち,前提と結論が逆転している論理的誤謬もしくは詭弁があり,さらに,先に挙げた「病識のない」とする判断部分についての違法もあわせ,この理由が違法であり,国民の身体的自由(憲法31条)や,1人の人間として扱われるべき権利(憲法13条)を脅かす反社会的な理由であり,とうてい社会一般に受け容れられることのない理由であることが明らかである。

20       さらにいえば,上記理由は,被控訴人宮内茂が原審にて主張した医療慣行を根拠なく認めただけの理由であり,被控訴人宮内茂の考える医療慣行をいうものであるところ,法的判断と医療慣行とについて,最高裁判所が,「注意義務の存否は,もともと法的判断によって決定さるべき事項であって,仮に所論のような慣行が行われていたとしても,それは唯だ過失の軽重及びその度合を判定するについて参酌さるべき事項であるにとどまり,そのことの故に直ちに注意義務が否定さるべきいわれはない」(最高裁昭和31年(オ)第1065号昭和36216日第一小法廷判決)と判示していることに照らせば,当然に,直ちに適正手続に係る義務違反を否定できる理由とはならない。

21       次に,「原告の発言内容が順子及び行男の説明内容,高橋医師の紹介書の内容,本件報告書の内容とおおむね符合していた」とする理由部分(上記10で挙げたB)についてみる。

22       原判決は,ここでいう「原告の発言内容」を,被控訴人宮内茂より提出された入院時診察記録とされる文書(乙A215頁)に求めている,すなわち,ここでも,本来,はじめに適用すべき法令の要求(適正手続の要求)があるにもかかわらず,同法令を適用せずに得られた結果(診療録)を前提として適正手続違反の訴えを退ける本末転倒な論理展開がみられるが,仮に同文書にある発言を控訴人が被控訴人宮内茂に対してしていたとしても,同文書にある「日常の偶然を装って嫌がらせをする」といった発言内容が,控訴人に知らされることのなかった本件報告書等にある「見えない組織に狙われている」や「毒を撒かれている」と話していたなどという報告内容とおおむね符合しているという判断には著しく無理があり,適正手続の適用を否定する理由として,とうてい,社会一般に受け容れられる判断ではない。

23       尚,上記被控訴人宮内茂による入院時診察記録とされる書証(乙A215頁)について,原判決は,控訴人が,被控訴人宮内茂による診察などなかったとして,仮に被控訴人宮内茂による診察行為があったとすれば生じるとして挙げた複数の矛盾点について全く判断していないので,これについては原審の審理不尽として別途述べる(控訴理由(4))。

24       次に,「原告は本件報告書等の開示を求めていなかったと認められる」と判断した理由部分(上記10で挙げたC)であるが,これも被控訴人宮内茂の主張を根拠なく認めただけの判断であり,一方で,診療録に,控訴人が本件報告書等の開示を請求した記録(乙A2,42頁の「診療情報提供申込書」。これは原判決でも認定されている。),医療保護入院中に担当医であった川原医師及びケースワーカーであった三島氏に本件報告書や本件紹介書の開示を繰り返し求め続けている会話記録(甲8及び9。),控訴人が違法拉致までの経緯について控訴人の母に対し繰り返し説明を求めている音声記録(甲8及び9。),高橋龍太郎らに対して報告内容について問い合わせている記録(甲12)等のあることを考慮すれば,著しく不合理な判断であり,かつ,根拠のない判断であって,とうてい社会一般に受け容れられる判断ではない。

25       最後に,原審における控訴人の主張を,「本件病院への移送が違法である以上,一連の手続である本件入院判断も違法である旨主張する。」として,同主張について,「原告の主張は独自の主張というほかなく,採用することができない。」とした理由部分(上記10で挙げたD)であるが,先に挙げた,もしくは原審準備書面(1)で資料を挙げながら詳しく述べている,精神保健法34条の成立過程や背景となった社会的要請,判例,行政の法的見解等を,本件の経緯や事情にあてはめれば,同控訴人の主張は独自の主張ではない。

人を強制的に精神科病院に移送し医療保護入院させるには,精神保健福祉法第34条の定める公的な措置によらなければなければならないのであり,さらに,先に挙げた判例や行政の法的見解等に照らせば,控訴人が違法拉致監禁によって長谷川病院に移送された事実の確定している本件において,移送部分は違法でも,違法な移送の先で待ち受けていた指定医が(原判決書1423行には「本件病院の医師らが移送について直接指揮したことも関与したこともなく,かえって,順子や行男が原告を連れて診察を求めてきたのであるから,被告がこれを拒否することは許されることではなく」とあるが,診療録である乙A210頁のとおり,既に被控訴人宮内茂の診察の前に,また,控訴人の知らないうちに,平成17411日,入院日を同月14日とする入院相談が行われていたのであり,「待ち受けていた」とするのは正しい。),診断材料について知らせることも説明することも確認や反論の機会を与えることもしなかったにもかかわらず,指定医が診察したと診療録にあるから,精神保健法3311号(診察に訪れた者に対する医療保護入院の規定条項。),並びに,同2項及び同3項(保護者の選任に関する条項。)に照らして医療保護入院は合法であり同指定医になんら義務違反はないとする原判決の判断こそ(原判決書137行から23行。),憲法,法規,判例,行政の法的見解や社会的要請にことごとく反し,国民の身体的自由(憲法31条)や,1人の人間として扱われるべき権利(憲法13条)を脅かす反社会的判断であり,とうてい社会一般に受け容れられることのない違法な判断であることが明白である。

26       さらに,先に示した厚生省(当時)の見解を本件についてみるに(前記6項。),単に病院の駐車場まで強制的に連れて行かれたか診察室まで強制的に連れて行かれたかの違いにより適用する条文や法解釈を変えることは社会通念上著しく不合理であるから,本件のように,指定医の属する病院の診察室まで本人を強制的に移送し,ましてや診断材料について知らせることも説明することも確認や反論の機会を与えることもなしに,同指定医の所属する病院において医療保護入院措置をとった場合にも,当然に,診断,医療保護入院の必要性の判断,及び,医療保護入院措置が違法であると解されるべきである。

27       また,前記した,医療保護入院制度の手続保障上の欠陥を補うとされる保護者(扶養義務者)の同意についてみるに,本件においては,同意を行った控訴人の母が,控訴人に対して知らされることのなかった本件報告書等(診断材料)にある報告を行っており,同人が,控訴人に対して,報告内容,経緯や関与者らを隠し続けた音声記録(甲8,9)のあること,さらに,同人の依頼によるとされる拉致監禁を伴う移送が,既に関連事件で違法行為と確定していること等を考慮すれば,控訴人の母が,前記した地裁判断にある義務を果たしているとはいえず,本件における保護者(扶養義務者)の同意も,適正手続の要求を補完するに足る理由とはとうていいえない。

28       (不法行為)そして,以上のような医療保護入院に係る法の要請や社会的要請について考えを巡らせ,現場において,手続が適切であるかの確認を怠らない義務は,精神保健法の指定医である被控訴人宮内茂の研鑽義務や注意義務として当然に期待されるべきであり,これら義務を怠ったことの明らかな被控訴人宮内茂による診断及び医療保護入院の必要性の判断は,当然,不法行為と認定されるべきである。

29       (結論)以上から,原判決の,「原告が援用する憲法31条の法定手続の保障の趣旨を考慮しても,本件診断前に原告に対し本件報告書等を開示して所見を説明し,内容について確認する機会や不服申し立ての機会を与える義務が被告にあったなどとは,到底いうことができない。」とした判断,適正手続請求権を否定したその他判断,すなわち,被控訴人宮内茂の義務違反に係る主張を退けた判断は,憲法,その他法令,行政の法的見解や社会的要請にことごとく反し,その理由構成に論理的誤謬もしくは詭弁が散見され,国民の身体的自由(憲法31条)や1人の人間として扱われるべき権利(憲法13条)を脅かす反社会的判断であり,とうてい社会一般に受け容れられない違法な判断であるから,原判決は即刻に破棄され,本件請求が認められるべきである。

5             控訴理由(2) 理由齟齬,理由不備及び審理不尽

1           原判決には,以下の通り,理由齟齬,理由不備及び審理不尽がある。

2           (原判決の理由構成)前記のとおり,原判決は,当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとし,これを,適正手続請求権を否定して被控訴人宮内茂の義務違反に係る主張を退ける判断の前提としている。

3           (原判決の理由構成)そして,前記のとおり,原判決は,当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとする根拠を,被控訴人宮内茂が,控訴人に対し,知らせることも説明することも確認や反論の機会を与えることもしなかったと認める本件報告書等の診断材料に求めている。

4           (原判決の理由構成)また,原判決は,被控訴人宮内茂について,「被告は,原告に対し,入院治療の必要性を説明したが,原告には病識がなく,入院の必要性を理解せず,入院の同意が得られなかった」ともしており(原判決書96から7行),これを,被控訴人宮内茂による医療保護入院の必要性の判断の正当化理由としている。

5           そうすると,原判決は,被控訴人宮内茂が,控訴人に対して知らせてもいない報告内容(診断材料)について,控訴人に「病識がない」と判断できたというのであり,また,被控訴人宮内茂が,控訴人に対して知らせてもいない報告内容(診断材料)について,入院の必要性を説明できたというのである。

6           しかし,知らされてもいない事柄についての認識を問うことは不可能であり,また,知らせてもいない事柄が理由である入院の必要性を説明することは不可能であるから,この論理展開に矛盾のあることは明らかである。

7           したがって,原判決の論理構成からは,被控訴人宮内茂が,控訴人に対し,病識が無いと判断できたとする結論も,入院の必要性の説明をしたとの結論も導き出せない。

8           さらに,原判決においては,本件が,被害妄想を唯一の精神科症状とした医療保護入院事案にもかかわらず,被控訴人宮内茂,もしくは,本件の関与者らが,控訴人に対して,住居侵入なり生活妨害行為なり,当時控訴人の訴えていた犯罪行為等と診断材料とされた報告内容が一致しているのかどうか確認・判断したうえで,被害妄想と確定した具体的事項がひとつも認定されていない。

9           これについては,控訴人が,迷惑行為等の具体的事項に関する映像音声等(21から27。住居侵入,車両侵入,迷惑行為,生活妨害行為や挑発行為等を示す映像音声等。)を示したり,警視庁での相談時,当時の控訴人による説明に対し,担当の警察官が,「病気とは思わない。」「まあ,誰かがやったのは間違いないですね。」,「それは十分妨害行為じゃないですか。」といった対応をしている音声記録等を示したりしているのに対し(甲31,32),原判決が,それら多数の映像・音声記録にある具体的事項についてまったく言及せず,あえて,定義の曖昧な「ストーカー集団」などという言葉を使用してその被害を否定したのみであることからも(原判決書1115行),原判決における,論理性や理由の不足,もしくは審理不尽が明らかである。

10       また,医療保護入院中の担当医であった川原医師が控訴人に対して交付した「現時点で精神科病名にあたるものがあるかどうかは不明である。したがって,継続的な治療は必要としない。」との診断書(甲15),同医師との会話音声記録(甲8,9,37,38),長谷川病院における「妄想が存在するか否かを確定することはできない」とある検査結果等についてるる述べ,「414日時点で原告に被害妄想の存在が不明であったという裏付けとはならない」などとする原判決の判断も(原判決書1120行から1225行),それでは,被控訴人宮内茂によって,また,川原医師や本件の関与者らによって,控訴人に対して,住居侵入なり生活妨害行為なり,当時控訴人の訴えていた犯罪行為等と診断材料とされた報告内容とが一致しているのかどうか確認・判断したうえで,精神科の疾病症状としての被害妄想と実証され控訴人に対し説明された具体的事項があるのかという問いに答えられるものではないし,そのような確認,検証や説明のなされていないことは,本件報告書等の診断材料が関連事件1の第1審まで控訴人に対して隠され続けていた事実に照らせば,疑いの余地のない事実である。

11       したがって,原判決の論理構成からは,被控訴人宮内茂が,そもそも,精神科の疾病症状としての被害妄想の存在を確定できたとする結論さえ導き出すことは出来ない。

12       結局のところ,原判決の論理構成には,そもそも精神医療が必要であったとするにあたり,一般人を納得させるに足りる程度の論理性や適切な理由がないのである。

13       そして,前記した,適正手続の要求,すなわち,憲法31条及び憲法13条の要求に照らせば,被控訴人宮内茂には,控訴人に対して,診断材料について,告知,弁解及び防御の機会を与え,報告内容が事実と一致しているのかどうか確認し,そのうえで被害妄想と断定できる具体的事項が存在するのかどうかについて確証を得た上で,診断及び医療保護入院の必要性の判断を下す義務があったというべきであり,同義務を怠ったことの明らかな被控訴人宮内茂の不法行為は明白である。

14       それら具体的事項の認定なしに,「病識が無かった」などとする前提を,本来,はじめに適用すべき法令の要求(適正手続の要求)を適用せずに得られた結果(診断材料及び診療録)に求める本末転倒な理由展開を行い,知らされることのなかった診断材料や診療録について,事後的に,控訴人が否定できるかどうかのみを問う原判決の理由構成が,憲法,その他法令,行政の見解,社会的要請等にことごとく反し,違法であり,反社会的でさえあることは明らかである。

15       (結論)以上から,原判決の,当時の控訴人が「病識の無い」状態であったとする判断には,理由齟齬,理由不備及び審理不尽があり,また,被控訴人宮内茂の義務違反は明らかであるから,被控訴人宮内茂の不法行為に係る請求は認められるべきである。

6             控訴理由(3) 判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱・裁判の脱漏

1           原判決には,以下の通り,判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱もしくは裁判の脱漏がある。

2           原判決は,原審における控訴人の主張である,違法拉致即日に行われた,被控訴人宮内茂の診断及び医療保護入院の必要性の判断により,当時の控訴人が,警察等に相談をはじめ,また,映像音声等の記録を開始したばかりであった,住居侵入,車両侵入,迷惑行為,生活妨害行為や挑発行為等についての訴えが,なんらの確認も検証もなく,被害妄想として処理され名誉が毀損されたたとする請求原因,すなわち,被控訴人宮内茂の行為と損害との因果関係について判断していない。

3           上記判断の遺脱は,名誉毀損による原状回復請求権に基づいた本件請求の趣旨の2項である,「被控訴人宮内茂は,『平成17414日,医療法人社団碧水会長谷川病院において,私宮内茂が戸ア貴裕に対し下した診断及び医療保護入院判断は,症状とした被害妄想の存否が検証できておらず,医療の必要性さえ不明にもかかわらず下した診断及び判断であり,よって,ここに,同診断及び同医療保護入院判断を取消す。』と記した書面を作成し,同書面に作成日を記し,署名捺印した上で,控訴人に対し,交付せよ。」に係る判断の遺脱である。

4           これについて,控訴人の負う証明責任は,被控訴人宮内茂が,住居侵入なり生活妨害行為なり,当時控訴人の訴えていた執拗な迷惑行為等について,本件報告書等の診断材料(報告内容)と一致するかどうか確認した上で,精神科の疾病症状としての被害妄想と実証された具体的事項を特定できていないにもかかわらず,被害妄想を症状とする診断を確定し,即日の医療保護入院判断を行い,同判断によって即日から閉鎖病棟に軟禁されたという事実を証明することで足りる。

5           既に原審において,当時の控訴人が,警察等に相談をはじめたばかりであり,また,映像・音声等の記録を開始したばかりであった,住居侵入,車両侵入,迷惑行為,生活妨害行為や挑発行為等についての訴えについて,被控訴人宮内茂が,もしくは,被控訴人宮内茂に情報の提供を行った本件の関与者らが,なんらの事実確認も検証も行っていない事実は明らかであり,原判決にも,同確認や検証がなされたとの認定はなく,よって,上記証明責任は果たされているから,本件請求の趣旨の2項に係る請求原因についての立証はなされているのであり,これについて判断しない原判決に,判決に影響を及ぼすべき判断の遺脱もしくは裁判の脱漏のあることは明らかである。

7             控訴理由(4) 審理不尽

1           原判決には,以下の通りの審理不尽がある。

2           原判決は,控訴人が原審にて主張した,被控訴人宮内茂が,平成17414日,控訴人を診察したというのであれば矛盾が生じるとして指摘した複数の矛盾点について(準備書面6の第3全文。),まったく判断しないまま,よって,被控訴人宮内茂は診察など行っていないとした控訴人の主張について判断しないまま,同診察のあったことを前提として判決理由を構成している。

3           同矛盾点は,以下(1)から(7)の通りである(原審準備書面(6)46行から522行より抜粋。)。

(1)           「被告宮内は,これまでに,本件拉致について知らなかったと主張し,また,本件報告書が原告に対する連絡も確認もなしに作成された経緯,原告の訴えていた犯罪等を示す数多くの映像音声等記録の存在,その他当時の原告の状態を示す記録等(以下別途示す。)について知らなかった旨主張する一方で,原告に対する診察は行ったと主張している。」

(2)           「仮に被告宮内による診察が行われたとすれば,甲6に示したとおり,原告の服装は就寝時のままであり,本件拉致時に羽交い絞めにされて引き摺られた結果飛び散った血痕の付着している服装であり,かつ原告が出血している状態で行われたことになる。このことは,当日の診療録に怪我の治療を行ったと記載のあることからも明らかである。」

(3)           「また,診療録に,原告が拉致されて連れてこられたと述べた旨の記載のあることは関連事件1でも認められている事実であり,仮に診察が行われていれば,原告は,なによりも先に,突然住居に押し入られ拉致されて連れてこられたのであって診察を受ける気もないし,そのまま自宅に帰らせてほしい旨伝えていたことが当然考えられる。」

(4)           「さらにいえば,当日の長谷川病院内では,本件拉致を行った敷島警備保障有限会社の4人が,常に原告の周囲を固めていた状況があった。そうでなければ原告は当然そのまま自宅に帰っている。」

(5)           「そうすると,仮に被告宮内による診察があったとすれば,被告宮内が,原告の服装や飛び散った血痕についてなんら触れないまま,原告の周囲を固めている4人について全く触れないまま,どのようにして原告が長谷川病院に連れてこられたかについていっさい考えを巡らせないまま,また,原告が本件拉致について全く触れないまま,診察記録とされる書証(乙A215頁)にある会話のみが行われたという,本件経緯からして極めて考えにくい不自然な診察がなされたことになる。」

(6)           「また,仮に診察記録とされる書面にあるような内容を原告が被告宮内に対し話したとすれば,原告は同時に,当時原告の訴えていた犯罪行為等を示す多数の映像音声等記録の存在について説明し(21で示す計67ファイル。証拠説明書(3)全文。) ,医療で解決すべき問題ではないことを訴えたことが当然考えられるし,このことは,甲8及び9に示した川原医師との会話からも明らかであって,被告宮内が同映像音声等記録の存在について知らなかったという事態は起こりえない。」

(7)           「さらに,仮に診察があったのであれば,これも映像音声記録等を提出しているとおり,原告が当時訴えていた犯罪行為等について警視庁等に相談中であり原告の説明を聞いた警視庁の警察官も『病気だとは思わない』『誰かがやったのは間違いないですね』等と話した事実(甲31及び32),本件拉致前日すなわち本件診断及び本件入院措置実施の前日に,原告が以前交際していた女性とドライブ,映画鑑賞及び食事に出かけていた事実(19及び44),『食事をとらない』などという本件報告書内容に反して原告の体重に変動などない事実(甲46),訴外鹿又との通信記録(甲25から27)等,本件報告書内容等の診断材料と反対の事実を示す診断材料として当然考慮すべきであった事実について,被告宮内が知らなかったなどという事態も起こりえない。」

4           上記複数の矛盾点は,被控訴人宮内茂が控訴人に対し,一般的に診察といえるような行為,本件に関しては,これから身体的自由を剥奪して医療を強要すべきかどうかの判断をすべき診察行為を行ったとするならば,当然に,すべて解決されるべき矛盾点である。

5           そして,原審において,上記矛盾点に関して,被控訴人宮内茂は反論も弁解もしていない。

6           上記矛盾点が,請求として取り消しを求めている診断がそもそも行われたかどうかに係る重要な矛盾点であるにもかかわらず,それら矛盾点をいっさい解決しないまま,診察行為のあったことを前提とする原判決に,審理不尽のあることは明らかである。

8             結語

1           原判決は,憲法,その他法令,行政見解及び社会的要請にことごとく反し,論理的誤謬もしくは詭弁が散見され,国民の身体的自由(憲法31条)や1人の人間として扱われるべき権利(憲法13条)を脅かす反社会的理由構成によって主文を導き出しており,強制医療を扱う事案として,とうてい社会一般に受け容れられることのない違法な判決であるから,即刻に破棄されなければならない。

2           被控訴人宮内茂による診断及び医療保護入院判断についても,同行為が,憲法,その他法令,行政見解及び社会的要請から求められる義務をことごとく怠った行為であり,不法行為を構成し,控訴人の名誉を毀損し,控訴人に対して損害を与えたことは明らかであるから,本件請求は容認されるべきである。

以上

  

2015624日修正版追記 】                                  

 

2014624日修正版では、「違法拉致冤病のあらすじと証拠」修正版に同じく、ある精神保健福祉士の氏名の記載されていた部分を「精神保健福祉士T」へ、同精神保健福祉士の所属会社名称を「EAP」と修正しています。以下、同修正に至った経緯を時系列で示します。なお、日付はすべて2015年のものです。

1    精神保健福祉士T及び同所属会社の代理人より、410日付で、本書をホストしているプロバイダに対し、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、修正前の本文書には名誉権の侵害があるとの侵害情報提供とともに、送信防止措置を講じるよう申し出がありました。過去2と異なり、プライバシー侵害の主張はありませんでした。国家資格に基づいた行為がプライバシーに当たるという主張には無理があると考えたのかもしれません。

2    415日付文書で、プロバイダより私に対し、プロバイダ責任制限法第322号に基づき、送信防止措置を講ずることに同意するかどうかの照会が行われました。

3    422日付文書で、送信防止措置に同意しない旨を示すとともに、回答の理由を記載し、プロバイダに対し、回答を行いました。プロバイダ側提供の解答欄は小さすぎるため、理由を別紙として送付しました。同回答書別紙は、こちらです(PDF版)。同回答書及び下記プロバイダの判断につきましては、プロバイダ責任制限法の運用における問題点を探る方々にとりましても、ご参考になるかと思います。

4    619日付文書で、プロバイダより私に対し、プロバイダ側での検討の結果、修正前の本文書に、同プロバイダの約款(下記)に抵触する部分があると判断したとのことで、同部分の削除要請がありました。過去2よりも範囲が限定されています。

(同約款の6IP通信網サービスにおける禁止事項」より、抵触するとされた項目の抜粋)

(3) 他人を誹謗中傷し、又はその名誉若しくは信用を毀損する行為

今回も、回答書の内容をどのように検討し、どのような理由で結論に至ったかの説明はありません。規約に抵触すると判断した、という結論だけがあり、625日までに修正しないと文書の表示を停止する、対応しないと契約を解除する、という内容です。どうもこの国では、立場が強ければ説明責任はない、というのが当たり前のようです。ジョン・スチュアート・ミルの「自由論」に代表される近代法の精神、自由と責任に係る考え方が、日本社会においては猿真似でしかない、日本社会は、近代法の精神において、100年以上遅れている、と思えます。

5    とはいえ、前2件と同様、私のサイトの趣旨から、精神保健福祉士T及び勤務先企業の名前が記載されているかどうかという問題は、本来無関係であるはずのプロバイダと争うほど優先度の高い問題ではなく、また、プロバイダを変えたり海外にホストしたりといった姑息な手段を取るよりも、プロバイダの判断についての事実を記載して対応し、民事訴訟で認定された事実に対してさえ、公共の利益に係る医療関係者及び企業の名前が、説明責任なしに隠されることに対する是非の判断は読者の方々に行っていただくほうがよいと考え、624日、修正版を発行しました。

以上が、2015624日修正版発行の経緯となります。

2015624

戸ア 貴裕

 

【 ご支援・ご協力について 】

 

本コンテントは、AGSASサイト(疾病偽装、医療偽装、安全安心偽装ストーキング情報サイト)の一部です。2005年のサイト開設以来、調査、コンテンツ作成等を自費でまかない、ご支援のお申し出があるたびにお断りさせていただいてきたのですが、ここ数年、生活妨害がひどくなる一方の状況を鑑み、ご支援のお願いを掲載するに至りました。

つきましては、サイトの内容が有用であったとお考えの方、また、管理人の活動をご支援いただける方におかれましては、下記口座までお好きな金額をお振込みいただけますと幸いです。

三井住友銀行 渋谷支店(654)普通口座 5073008 名義 トサキ タカヒロ

昨今は振込に対しご不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。その際には、管理人が入金確認をいたしますので、前記メールアドレスまで、件名を「要入金確認」とし、振込人様のお名前と金額をお伝えいただければ、入金確認後に折り返しメールさせていただきます。ただし、前記の通り年間4万から5万通前後の迷惑メールがくる状態ですので、誠に申し訳ございませんが、入金確認は金額が1,000円以上の場合のみとさせていただきたく、ご理解の程お願い申し上げます。

なお、ご意見やご要望とは異なり、ご入金を理由にサイトの方針、活動内容やコンテンツの内容を変更することはいたしません。ご了承願います。

2014629

戸ア 貴裕