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日本語では知らされない精神医学の嘘

〜精神医学の嘘から、グローバル製薬企業が日本市場に仕掛けた「うつ病キャンペーン」まで。〜

3版  2014323日(2015624日追記版。追記箇所はこちら

本書の背景となる犯罪を私に訴えながらも亡くなった清水由貴子さん、

そして、同犯罪を訴えるすべての方々に捧げます。

 

【 はじめに 】

 

説明: 説明: C:\D\agsas\AGSAS_Step01_Plus.files\image001.jpg私の名前は戸ア貴裕です。本書では、日本語で広く一般に伝えられることがない情報として、精神医学批判の第一人者でありニューヨーク州立大学精神医学科名誉教授であるThomas Szász医学博士、アメリカ医学界で華々しい経歴を持つ一方でアメリカ医療システム批判の第一人者であるMarcia Angell医学博士、プラシーボ効果や抗うつ剤の研究で世界的に知られるIrving Kirsch博士をはじめとした多くの研究者やジャーナリストの方々によって明らかにされている精神医学の嘘から、グローバル製薬企業が日本市場に仕掛けた「うつ病キャンペーン」、「精神医療に対する意識改革キャンペーン」に至るまで、いわば、精神医学版、都合の悪い真実、精神医療が欧米発の医療詐欺システムであることを示していきます。

精神医学を“信じている”方、釈然としない疑問を感じている方、また、信用していない方それぞれにとって、読み進めるにしたがい、具体的な精神医学の嘘、それから、精神医療のみならず「お医者さんに相談」広告の急増している本当の理由などが浮かび上がると思います。出典や参考文献は随時示しますが、巻末の「主な参考文献」と「ご自身で調べたい方へ」もご参照ください。

 

1【 詐欺の技術 】

 

皆さんの中には、テレビ番組などで“うつ病患者“や”統合失調症患者“について、例えば最近ではfMRI(ファンクショナルMRIfunctional magnetic resonance imaging)による脳画像検査といった最新技術の話などを聞き、精神医療には科学的な検査方法がある、精神医学は他の医学領域と同じく科学的に進歩している、と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、精神医学、精神医療の実態は、仮病や言いがかりを正当化する診断ありきの詐欺であり、歴史上、その診断に客観的な検査方法のあったことはなく、現在も存在しません。精神医学、精神医療で進歩しているのは、科学的発見や医療技術の発展に便乗し、詐欺であることをいかにごまかし、いかに法制度を作り、いかにカネの流れを作るかという政治的技術、いわば、詐欺の技術になります。

 

2【“心の病”のメカニズムは、半世紀にわたる実証によって既に完全否定されている 】

 

精神医学では、脳内化学物質のバランスの崩れ(ケミカル・インバランス)が“心の病”、すなわち“脳の障害”の原因と考えられるから、投薬や治療が必要という仮説が通用しています。皆さんもお聞きになったことがあるかと思いますが、セロトニンやドーパミンといった物質です。

ケミカル・インバランスについて、プラシーボ効果(偽薬効果:placebo effect)の研究で世界的に知られるIrving Kirsch博士は、「うつ病を脳内のケミカル・インバランスと捉える見解は、作り話です。」(the Idea of depression as a chemical imbalance in the brain is a myth.)、「半世紀分の研究を分析して得られたデータは、ケミカル・インバランス理論が完全に間違いであることを示しています。」(A half-century of research has produced data indicating that the chemical-imbalance theory must be wrong.)として、出典7において、科学的証拠をもってこの結論に至った過程を記しています。

同博士ら研究チームは当初、ケミカル・インバランス理論に対して疑念を抱いていたわけではなく、純粋にプラシーボ効果の研究のために、抗うつ剤の臨床試験データ分析を行ったに過ぎませんでした。

ところが、3,000人以上を対象とした同分析の結果、プラシーボ(偽薬:placebo, sugar pill)との比較において、抗うつ剤の臨床効果の非常に低いことに驚いた同博士らは、1998年に最初の分析結果を発表しました。その後、他の研究者からのアドバイスなどもあり、情報開示請求によって、米国食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration。医薬品の認可を行う公的機関。)より、抗うつ剤の認可の際に製薬企業が提出した試験データのうち、公表されていない臨床試験データを入手したり、また、民事訴訟における敗訴の結果、製薬企業が公表を余儀なくされた、つまり、製薬企業の隠していた臨床試験データ等を集めたりして、最も広く利用されていた6つの抗うつ剤、ProzacSeroxatPaxil)、LustralZoloft)、EffexorDutoninSerzone)及びCipramilCelexa)について、プラシーボ比較試験のある全ての臨床試験データの分析を行いました。なお、括弧内の薬品名は、販売される国によって異なる別名です。

製薬企業の公表しているデータだけではなく、公表されていないデータをもあわせた総合分析の結果、後に数値等を示します通り、プラシーボとの比較における抗うつ剤の臨床効果はない、あるのは副作用だけである、という結論が出たのです。同博士らは、この分析結果をまとめ、2008年に3度目の論文を発表しました。この発表は英国において、The TimesThe GuardianThe IndependentDaily Telegraphといったメジャー紙の表紙を飾り、BBC等のTVメディアで報道されただけでなく、アメリカ、スペイン、ポルトガル、ドイツ、イタリア、南アフリカ、オーストラリア、カナダ、中国など、各国の主要なメディアで取り上げられました。

抗うつ剤の効果測定の基準には、ハミルトンスケール(Hamilton Rating Scale for DepressionHRSD)という尺度が使われます。同尺度は0から51ポイントの尺度で、ポイントが高ければ高いほど重度のうつ病ということになります。計測方法は、“患者”にインタビューを行った医師が質問項目に応じたポイントを加算するもので、例えば、“患者”がよく眠ることができないと受け答えれば、6点のプラス、その後、よく眠ることができるようになったと受け答えれば6点のマイナスといった具合です。

このような基準の良し悪しは議論の対象になりうるとしながらも、アメリカ精神医学会(APA : American Psychiatric Association)、米国食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)や英国国立医療技術評価機構 NICE : National Institute for Health and Clinical Excellence)がハミルトンスケールを公式に採用していることから、Irving Kirsch博士も、ハミルトンスケールによる効果判断を行いました。

分析の結果、プラシーボに対する抗うつ剤単独の臨床効果は、ハミルトンスケールにおいて、平均で1.8ポイントでした。18ではありません。1.8です。同博士は、この1.8ポイントでさえも、抗うつ剤の副作用によって引き起こされる身体的変化により“患者”の期待が変化した結果などによる効果であり、抗うつ剤の有効成分の効果ではないことを、臨床試験データから割り出しています。

同博士はその後も様々な臨床試験データの分析を進め、抗うつ剤、抗うつ剤ではない他の薬剤、プラシーボ、副作用のみの薬、また、うつ病において原因とされるセロトニンの減少を引き起こす薬、つまり、ケミカル・インバランス理論が正しいとすればうつ状態になるはずの薬など、どの薬剤を投与しても、また、“症状”が軽度であろうが重度であろうが、服薬期間にも関係なく、効果のあるはずの薬を与えられているという“患者”の期待によって“症状”が改善するとまとめています(出典7)。

Irving Kirsch博士は、さらに、半世紀以上前の、ケミカル・インバランス理論の誕生時にまでさかのぼったデータの分析を行い、こうまとめています(出典7p.83)。

「ケミカル・インバランス理論は、当初より、脆弱かつ矛盾した証拠に基づいており、そして、同理論に矛盾するデータは直ちに無視する、そういう理論だったのです。このやり方が、その後繰り返されることになったお手本です。半世紀分の研究を分析して得られたデータは、ケミカル・インバランス理論が完全に間違いであることを示しています。ただ依然として、同理論はうつ病の解釈として最も通俗的であり、矛盾するデータのほとんどは無視され続けているのです。」

From the beginning, the chemical-imbalance theory was based on weak and contradictory evidence, and data contradicting it were simply ignored. This is a pattern that was to be repeated. A half-century of research has produced data indicating that the chemical-imbalance theory must be wrong. Yet it remains the most popular explanation of depression, and most of the data contradicting it continues to be ignored.

 

3【 精神科診断には、客観的な検査方法が無い 】

 

通常、医療が対象とする病の診断には、生物学的、化学的な検査方法が存在します。例えば、血液検査の結果に異常値がないかどうか、検査薬品に対する反応が正常かどうか、ウイルス検査に反応があるかどうか、有害な細菌が存在するかどうか、画像検査、生体組織検査などにより、内臓細胞、神経細胞などに異常が見られないかどうか、といった客観的な検査方法です。

そして、診断は客観的な検査結果なしには確定せず、また、検査結果と診断との間に勝手な解釈の入る余地は少なく、よって、診断する医師の主観、都合や立場に依存せずに、診断の正確性、客観性が保たれると期待され、また、検査記録から、客観的に、診断の誤りを指摘することができます。

一方で、精神科の“診断”には、他の医療分野と決定的に異なり、診断の正しさを証明する生物学的、化学的な検査方法も、診断の誤りを証明する生物学的、化学的な検査方法もありません。

精神科の診断基準には、アメリカ精神医学会(APA : American Psychiatric Association)によるDSMDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders現時点での最新版はDSM-5)、及び、世界保健機構(WHO)によるICD(International Classification of Diseases)のうち該当する部分が使用されています。

適応障害、不安障害、摂食障害、気分障害、性嗜好障害といった病名からもわかるように、DSM及びICDは、人の気分、考え方、態度、他人との関係の持ち方、環境に対する反応、嗜好、生き方や言動を分類し病名を付ける行為に対して権威を与える一方、その診断において、生物学的、化学的な検査結果を要求しない、非常に曖昧かつ非医学的なマニュアルです。

そして、2013518日に発行されたDSM-5に至っては(DSMの改訂番号は、IからIVまではローマ数字でしたが、最新版ではアラビア数字に変更されています。)、DSM-IIIからDSM-IVへの改訂委員会の委員長であったAllen Frances医学博士でさえ、ニューヨークタイムズへの寄稿において、「DSM-5は厄災となりそうだ。」(“D.S.M.-5 promises to be a disaster)、「(DSM-5は)実績のない数多くの診断基準を新たに導入することで、正常な状態や言動を医療介入の対象とし、そして、必要のない、かつ有害な医薬品の過剰処方という結果をもたらすだろう。」(it will introduce many new and unproven diagnoses that will medicalize normality and result in a glut of unnecessary and harmful drug prescription.)、「精神医学における新たな診断基準の誕生は、新たな医薬品の誕生とは比較にならない危険性をはらんでいる。」(“New diagnoses in psychiatry can be far more dangerous than new drugs.”)と述べるなどし、精神科診断の対象範囲を広げようとするアメリカ精神医学会とDSMに対する批判を行っています(出典10)。

なお、他の医学領域において、生物学的、化学的検査の可能な病気が疑われる場合、DSMによる診断は確定診断とはみなされないか、もしくはDSMの診断対象から除外されます。例えば、アルツハイマー病(Alzheimer's disease)が疑われる場合、NINCDS-ADRDA診断基準(アメリカの国立神経障害・脳卒中研究所、及び、アルツハイマー病・関連障害協会が共同で作成した診断基準。)により、確定診断には、生体組織検査、つまり病理組織学的な脳細胞の検査による証明が必要となっています。

診断の正しさを証明する生物学的、化学的な検査方法も、診断の誤りを証明する生物学的、化学的な検査方法もありませんから、“症状”の演技や報告(作文)があれば、診断は精神科医の主観、都合や立場、もしくは精神科医に影響力のある人や団体の価値判断でどうにでもなります。

 

4【 詐欺のパターン 】

 

精神医学、精神医療における、最新技術や科学的発見に便乗した詐欺には、あるパターンがあります。「うつ病患者を検査したところ〇〇である傾向が見られた。」、「統合失調症患者を検査したところ〇〇である傾向が見られた。」といったパターン、つまり、うつ病や統合失調症といった“診断”が、客観的な証明の無いまま、いつのまにか正しい前提となっているパターンです。

歴史上、ケミカル・インバランス理論においてもこのパターンが見られましたが、冒頭でお話ししたfMRI等の最新技術を利用した宣伝にも、このパターンが利用されています。

そして、このパターンが精神科の“診断”を正当化できないこと、また、このようなパターンの調査結果が精神科における確定診断方法とならないことは、精神科診断と、別の医療領域における診断とを比較することでわかりやすくなります。ここでは、感染症であるインフルエンザの診断を例にして考えてみましょう。

はじめに、インフルエンザ感染の確定診断に必要かつ十分な条件は、インフルエンザウイルスが体内に存在することです。鼻腔内や口腔内などからインフルエンザウイルスが分離、もしくは検出されてはじめて、インフルエンザの確定診断となります。

そうすると、インフルエンザの場合には、ウイルスの存在という真偽判断、つまり客観的検査方法を用いた証明によって確定診断が行われます。

一方で、精神科診断では、つまるところ、考え方や行動が大多数と似ているかどうか、考え方や行動が本人や周囲にとって不都合かどうか、という非常に曖昧な価値判断や都合の良し悪しで、病気かどうか、治療の対象となるかどうかが決まります。

真偽判断が証明によって行われる一方で、価値判断や都合の良し悪しは多数決で行うことができますから、他の医学領域と決定的に異なり、精神医学に基づく診断は多数決で行える、つまり精神科診断は科学ではなく、政治や宗教と同じであるということになります。これは後に見ますが、実際に、DSMにおける診断基準は、生物学的、化学的証明によってではなく、多数決で決められています。

次に、症状の話です。インフルエンザウイルスに感染していれば、発熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛、悪寒、発汗、鼻づまり等の症状がある、という前提が正しいとしましょう。しかし、これらの症状の原因は当然、インフルエンザウイルスだけではありません。発熱だけを取ってみても、他のウイルスが原因かもしれませんし、ウイルスではない細菌などによる感染症かもしれません。膠原病(こうげんびょう)や悪性腫瘍、もしかするとアレルギーや薬剤による発熱かもしれません。そうすると、症状が同じだからといって必ずしもインフルエンザに感染しているとは確定できないとうことになり、よって、確定診断にはウイルス検査が必要となるわけです。

これは、論理学における逆の問題です。論理学における逆が、「インフルエンザに感染していれば高熱が出る。」に対する「高熱が出ていればインフルエンザに感染している。」になり、これが必ずしも正しくないことはお分かりになると思います。原因は別にあるかもしれません。

そして、インフルエンザの例で逆の正しくなる場合は唯一、「インフルエンザに感染していればインフルエンザウイルスが分離・検出できる。」であり、この「インフルエンザウイルスが分離・検出できる」という条件が、確定診断の必要十分条件になります(論理学における同値。)。つまり、必要十分条件の確立がなければ、そもそも確定診断は存在しえないことになります。

そして、この論理を理解しようとしない医師は、医師として機能できません。検査もせずに症状だけでインフルエンザと断定し、やみくもにタミフル等の薬品を処方する行為は医療過誤でしょう。インフルエンザ薬を処方する前に医師がすべきことは、何故インフルエンザと断定できるのかを、生物学的、化学的に証明することです。ちなみに、2009年に新型インフルエンザが流行した当初、この確定診断の証明責任を国が負い、国立感染症研究所による確定診断を行うことで対処しました。

そうすると、仮に症状がインフルエンザの症状と似ていたとしても、症状のみからインフルエンザであるとの確定診断を下したりむやみに薬品を処方したりできないことになります。

一方で、精神医学、精神医療においては、DSMICDで列挙された、日常言語による評価としての“症状“だけから、確定診断、薬品の処方、人身の自由の剥奪、強制的な投薬、法的な責任能力の否定が可能です。仮病かどうかも、いいがかりかどうかも、近代医学の知識を悪用し、薬物や超音波等で人為的に演出可能な現象かどうかも、報告や会話のみで成立可能な精神科の診断では判断不能です。

さて、インフルエンザにおける確定診断と症状との関係を頭において、先ほどの、「うつ病患者を検査したところ〇〇である傾向が見られた。」、「統合失調症患者を検査したところ〇〇である傾向が見られた。」というパターンを見てみるとどうなるでしょうか。

まず、そもそもの前提である“うつ病”や“統合失調症”の“診断”が正しいかどうかを証明する客観的検査方法は精神医学において定義されていませんから、前提の真偽はいつも不明です。真偽の不明な前提に対する必要十分条件は、確定できません。いつもあやふやです。よって、確定診断の方法はいつもあやふやです。もっともらしい言葉の曲芸でごまかすしかありません。

次に、最新技術によって観察された調査結果と“診断”との因果関係も不明です。そもそも、前提がはっきりしていないのですから、因果関係を検証することすらできません。仮に、調査結果に表れた傾向などがもっともらしいデータであったにしても、半世紀にわたって嘘をつき通しているケミカル・インバランス理論の場合や、後に見る、薬品の認可手続きにおける臨床試験データのように、都合の悪いデータは無かったことにされているのですから。

よって、「うつ病患者を検査したところ〇〇である傾向が見られた。」というパターンは、真偽の不明な前提(診断)と、たまたま確認されただけかもしれない現象、もしくは原因が別にある現象の組み合わせに過ぎず、必要十分条件を特定する以前のまやかしであり、客観的な確定診断の方法にはなり得ない、ということになります。ごまかしたい前提は、いつでも真偽不明なのです。

 

5【 医学、医療としての立証責任の所在 】

 

さて、ここで、精神医学が依然として“脳の障害”を扱う医学であると主張することに対し、2種類の批判をご紹介します。

1つ目は、鶏と卵の問題です。例えばうつ病の場合、脳内の変化が原因で悲しくなっているのか、悲しいから脳内に変化が起こったのか、という問題です。精神医学は、彼らのいう“脳の障害”が日常生活における外的要因によっても変化する、という主張にも依存し、よって、トークセラピー、運動セラピー、また、宗教的活動などが、“治療”と称して行われるわけですが、仮にそれが正しいとすると、例えばうつ病の場合、悲しいから脳内に変化が起こり、悲しくなくなったらその変化が戻る、それだけではないか、つまり、原因と結果が逆ではないか、という疑問が当然残ります。悲しいから脳内に変化が起こったのであれば、仮に、画像検査等で脳内の変化が計測できたとしても、それは単に、“脳の障害”が原因なのではなく、環境などの外的要因に影響を受けた結果としての脳の状態に対して“病名”を付け、医療問題として扱うことに様々な利益を見出しているにすぎません(後にお話しする「メディカライゼーション」。)。

2つ目は、“心の病”が“脳の障害”であるならば、脳の障害は脳の障害として、生物学的、化学的な検査方法によって証明されるべきであり、単なる会話や報告にのみ基づいた日常言語による評価、価値判断を“診断”とする精神医学、精神医療は必要ない、医学でも医療でもない、という批判です。

この批判は、本書の「3 精神科診断には、客観的検査方法がない」で指摘した事実に基づいた批判であり、同時に、診断を下す側が“脳の障害”であるという立証責任を果たしていないという批判ですから、精神医学の医学偽装、精神医療の医療偽装を指摘する、最も重要な批判となります。

現実問題として、精神科診断の誤りを指摘しなければならない立場になった人々は、立証責任の所在の問題にぶつかります。何故、“脳の障害”であることが立証されていないにもかかわらず、“脳の障害”ではないことの立証責任を負わなければならないのかと。何故、“脳の障害”であることを否定できなければ、立証されていない“脳の障害”が“正しい”ことになってしまうのかと。本来、立証責任があるのは精神医療側ではないかと。

 

6【 問題のすり替え 】

 

生物学的、化学的な検査方法がなく、“脳の障害”であることを前提としながらも“脳の障害”を立証することを要しない精神医学は、他の医学領域と異なり、「事実かどうか」を問題にできません。そこにあるのは「信じるかどうか」の問題です。医療において「事実かどうか」を問題にできないということは、「病気かどうか」を問題にできないということです。このことは、検査なしに「ガンかどうか」「インフルエンザかどうか」を確定できないことを考えればわかります。人の考え方や言動が許容できるかどうかと、その人が医学的に病気かどうかは全く別の問題です。

「病気かどうか」を問題にできない医学に基づいた医療が医療と呼べるかという問題に対する回答は、問題のすり替えで行われます。近代国家において、ある医療が医療とみなされるかどうか、その医療に基づいた診断が有効かどうかは、法律の問題になります。医療行為、医療判断を行える資格を定める法律や、その医学に基づいた判断を法的判断の根拠とする法律などです。

先ほどの、立証責任の所在の問題に対する答えは、医療問題を法律問題にすり替えることでごまかされるのです。つまり、生物学的、化学的、もしくは医学的に正しいかどうかという問題はさておき、前提として、法的に“正しい”とみなされる“診断”が存在できるということです。そうすると、そもそも、その正しさを証明する客観的検査方法の無い“診断”が“正しい”前提となり、この“診断”に対し、“診断”の間違いを証明する客観的検査方法の無い状況で、否定の証明を迫られることになるといわけです。なお、現実問題として、精神医療を医療過誤として訴える場合には、さらに「司法の病理」ともいうべき問題が立ちふさがることとなります。この点につきましては本書と趣旨が異なりますので、「国家犯罪としての医療保護入院制度、その証明」をご参照ください。

さて、近代国家の常識として、「信じるかどうか」の問題は、宗教の信仰のように、個人の自由にゆだねられるべき問題です。ところが、アメリカ精神医学会の定める“心の病の存在”は、各国において法的に、もしくは国際的、経済的な圧力として、ほぼ全人類に、疑うことの許されない前提として強要されるのです。まさに、歴史上いかなる宗教もなりえなかった、世界統一の宗教です。

 

7【 診断基準は多数決で決められている 】

 

前記のとおり、生物学的、化学的な検査方法による診断基準の策定はできません。診断基準にある病名と、その病名がどのような“症状”を指すのかについては、アメリカ精神医学会(APA : American Psychiatric Association)の委員が、挙手による多数決で決めています。

先にお話しした通り、他の医学領域における診断が真偽判断、つまり証明を必要とする判断であるのに対し、診断そのものが多数決で決めることの可能な価値判断や都合の良し悪しである精神医学ならではのシステムです。精神医学のいう科学は、投票による科学(science-by-vote)なのです。

「(DSM策定の)知的努力の低さにはショックを受けた。診断基準が、まるでレストランを決めるかのようなレベルで多数決によって決められている。」("The low level of intellectual effort was shocking. Diagnoses were developed by majority vote on the level we would use to choose a restaurant.)「統合失調症、躁うつ病、その他の精神医学的レッテルの目的はただひとつ。精神医学を、医療保健、政府資金、医薬品販売のドル箱にすることである。」("Schizophrenia," "bipolar," and all psychiatric labels have only one purpose: to make psychiatry millions in insurance reimbursement, government funds and profits from drug sales.)、「病名があれば診療報酬が請求できる。」、「病名があれば薬品が売れる。」、「病名があれば法的根拠になる。」ということです(出典9)。こうして決まった診断基準が世界中に輸出されるのです。

アメリカ医学界で華々しい経歴を持つ一方でアメリカ医療システム批判の第一人者であるMarcia Angell医学博士は、その著書「The Truth About the Drug Companies: How They Deceive Us and What to Do About It」(出典6。日本語にすると、「製薬企業の真実:騙しの手口と対処法」といったところでしょうか。)のなかで、Eli Lilly(アメリカインディアナ州インディアナポリスに本社を置くグローバル製薬企業。)が、それまでうつ病用の薬として販売していたProzacという薬の色を変えて価格を上げただけのSarafemという薬を、女性が月経前に不機嫌になる “症状”用の薬として販売し、この医薬品から“月経前不機嫌性障害(PMDDPremenstrual Dysphoric Disorder)”という病名が生まれた例など、医薬品ありきで生まれた“障害”の実例を挙げ、こう述べています(p86)。

「昔々、製薬企業は病の治療用に医薬品の売込みを行っていました。現在、これがよく逆転します。製薬企業は、医薬品に合わせた病の売込みを行うのです。」

Once upon a time, drug companies promoted drugs to treat diseases. Now it is often the opposite. They promote diseases to fit their drugs.

 

8【 聖域は統合失調症】

 

先ほどDSMについて「非常に曖昧かつ非医学的」と書きましたが、ここで少し具体例として、その曖昧さの象徴、いわばDSMの聖域である統合失調症(Schizophrenia)についてみてみます。統合失調症は、“妄想”、“幻覚”、“解体した会話や行動”、“社会的/職業的機能の低下”といった“症状”に付けられる“病名”であり、たとえ演技に対しても、たとえ本人以外からの報告(作文)に対しても、精神科医が、「それは妄想」、「それは幻覚」、「話が通じない」、「行動がおかしい」、「職務能力が低下している」などと、日常言語による評価、価値判断をしてしまえば診断が成立します。そしてこの“診断”の正しさ、もしくは誤りを証明する生物学的、化学的な検査方法はありません。

仮に、本当に幻覚をみているような人物がいたとしても、医学的に可能性の確実な原因は、幻覚剤に分類される化学物質であり、ケミカル・インバランスだの、統合失調症だのという、すでに崩壊している仮説や定義のあやふやないいがかりではありません。ところが、報告や会話によって成立可能な精神科診断では、この最も確実な原因を無視し、さらなる薬物投与により、薬物の影響が無ければ正常であった人物を、患者として飼い殺しにすることが可能です。

アメリカの著名な統合失調症研究者でありアメリカ科学者の最高の栄誉といわれるNational Medal of Scienceを受賞しているNancy Andreasenも、「誰が本当に統合失調症なのか、もしくは、何が本当の統合失調症なのか、欧州の人々に教えてもらうことができれば、アメリカの科学の助けになる。」(Europeans can save American science by helping us figure out who really has schizophrenia or what schizophrenia really is.出典1,p14)といい、Thomas Szász医学博士は、「統合失調症は、その定義があまりにも曖昧なため、現実として、診断する側が気に入らないどのような言動についてであれ、この病名をあてはめることが多い。」とし("Schizophrenia is defined so vaguely that, in actuality, it is a term often applied to almost any kind of behavior of which the speaker disapproves."出典9)、アメリカ精神医学会でさえ、「最善は尽くしたが、アメリカ精神医学会は、この障害(統合失調症)の定義について合意を得ることが出来なかった。合意できたのは病名だけである。」(Even if it had tried, the [APA] Committee could not establish agreement about what this disorder is; it could only agree on what to call it.出典9)としています。

どうにでも解釈できる“診断基準”。まるで冗談のようですが、本当の話です。

統合失調症の診断に限らず、精神医学の基礎は日常言語によるまやかしです。それを象徴するような話として、精神医療を愚弄してその本性を暴くため、医学文書を捏造し、約2年間精神科医になりすまし、精神科・神経科病院の医局長にまでのぼりつめたドイツの元郵便局員(Gert Postel)の話が出典1にあるのですが(p82)、彼の言葉を借りれば、「精神医学に限ってはね、言葉の曲芸、その才能で出世できるんですよ。それが精神医学の基礎だからね。」(As far as Psychiatry is concerned it can be said that if you’re able to perform linguistic acrobatics you can make your career for yourself. That is what Psychiatry is based on.)、「実体は国家権威の一部にすぎないにもかかわらず、自らを医学の1分野として喧伝しているところに、精神医学の悪意があるのですよ。」(“The maliciousness of psychiatry is that it promotes itself as a medical discipline, although it is actually only part of the state authority.”)ということです。

なお、日本ではかつて精神分裂病と呼ばれていた病名が、20028月、日本精神神経学会の決議で統合失調症と改名されたのですが、この改名のタイミングは、次にお話しする、グローバル製薬企業が日本市場に仕掛けた「うつ病キャンペーン」、「精神医療に対する意識改革キャンペーン」の時期と一致します。結果、どうにでも解釈できるごまかしやすい病名になっているのではないでしょうか。

 

9精神医療の急激なメディア露出は、グローバル製薬企業が日本市場に仕掛けたキャンペーン

 

グローバル製薬企業数社は、1990年代前半から、特にうつ病(Depression)用のSSRI(脳内のセロトニン濃度のバランスを正常にすると信じられている薬の総称。)に分類される薬について、日本市場への参入を考えていたようです。各社は、認可に関するロビー活動、医学界の啓蒙に関わるロビー活動、医療業界誌などでの宣伝活動を行うと同時に、日本市場における障壁の調査を行いました。

そこでわかったのが、当時の日本では、気軽に精神医療に頼ったり、気軽に精神科の薬を服用したりするような文化はなく、特に市場を開拓したかったうつ病について、当時の日本において“うつ病”という言葉には重大患者のイメージがあり、欧米市場と同じようにはいかない、ということでした。これは、1990年代初頭に、Eli Lilly(アメリカインディアナ州インディアナポリスに本社を置くグローバル製薬企業。)が、日本市場に抗うつ剤の需要は少なく、認可や新たな試験にかかるコストを考慮するとビジネスとして見返りが少ないと判断したことからもわかります。一方で、欧米におけるマーケティングの成功に自信を持っていたグラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline本社はイギリス。活動拠点の多くをアメリカに置くグローバル製薬企業。) をはじめとしたグローバル製薬企業経営陣の方針は、日本市場の精神医療に対する意識ごと変革する、というものになりました。

なお、日本人を対象として数度行われたSSRIの大規模なテストにおいて効果の実証が失敗していることは気にせず、テストの質が悪かったことにしたようです(出典2,p223)。

そういったなかで製薬企業各社の後押しとなったのは、バブル経済崩壊の余波もあっての、過労死者数や自殺者数の増大について、死に至った原因を“心の病”にすり替える喧伝のできたことや、阪神淡路大震災においてPTSD発症の可能性を指摘することで“心のケア”に市場の注意を向けることのできたことでした。

そしてグローバル製薬企業各社は、2000年から「うつ病キャンペーン」、「精神医療に対する意識改革キャンペーン」を大々的に開始します。テレビ、新聞、雑誌等のメディアを使い、また、公共広告を装ったメッセージとして、「それは“うつ”の症状かもしれない」、「心の風邪のようなものだから」、「がまんしないでお医者さんに相談を」、「ほうっておくと大変なことに」、「うつ病患者が増えている」、「職場でもうつ病対策を」といった内容を繰り返し、ある程度喧伝が進むと、インターネットに目を付け、製薬企業がバックにいるサイトとはわからないように作られた「うつ病診断サイト」を構築して同サイトを宣伝したりしたのです(このサイトは本書執筆時も運営主体を変えて存続しています。:UTU-NET「うつをこえて」ホームページ)。精神医療に関係の無い人でも、NHK及び民放各局で放送されたうつ病特集番組、公共広告、前記したCMや診断サイトが記憶にあるかもしれません。

2004822日付のニューヨークタイムズの記事(出典4)によれば、グラクソ・スミスクラインが日本市場に対して行った「うつ病キャンペーン」の中核となったメッセージは、「うつ病はだれもがなりうる病気。薬で治すことができます。早期の発見が重要です。」(Depression is a disease that anyone can get. It can be cured by medicine. Early detection is important.)という3つのメッセージであり、同記事は、「グラクソ・スミスクラインは、この4年間、まるでブッシュ政権のように、このメッセージを絶え間なく発信し続けた。」(Like the Bush administration, GlaxoSmithKline has spent the last four years staying relentlessly on-message.)とさえ評しています。「この4年間」とあるのは、同記事が2004年に書かれたものであり、キャンペーンの開始が2000年であったからです。明記されてはいませんが、時期的に、結局は見つからなかった大量破壊兵器の存在やテロとの戦いについて繰り返したメッセージに重ね合わせているのかもしれません。なお、原文にあるrelentlesslyという副詞をここでは「絶え間なく」と訳しましたが、同副詞には「情け容赦なく」、「残酷に」、「冷酷に」といった意味合いがあります。

また、同記事には、同社を代表して1,350人が、同社の選出した日本の医師のもとに、週に2回のペースで赴いて啓蒙活動を行ったこと、日本書店商業組合連合会によれば、1990年から1995年にかけては27冊であったうつ病関連の書籍出版数が、1999年から2004年では177冊の出版数になったこと、また、(同記事の書かれた20048月時点で)2チャンネルでうつ病に関するスレッド数が713スレッドであり、音楽に関するスレッド数(582)やグルメに関するスレッド数(691)を超えていることなどまで書かれています。

なお、同記事のタイトルは、「Did Antidepressants Depress Japan?」、日本語にすれば、「抗うつ剤は日本をうつにした?」というなんとも皮肉なタイトルです。

巻末に記載した出典2Crazy Like Us - The Globalization of The American Psyche」では、当時関与した学者や専門家らの証言などから、日本市場において、グローバル製薬企業各社がどのように「うつ病キャンペーン」、「精神医療に対する意識改革キャンペーン」を仕掛けたかが、まるごと1章を割いて書かれています(p187-p248。章のタイトルは The Mega-Marketing of Depression in Japan。)。英語の読める方、出典1Psychiatry - THE SCIENCE OF LIES」と併せて、ぜひお読みになってください。日本語で広く伝えられることの無い驚愕の事実がそこにあります。

ここまでお読みになり、「あれ?」と思われた方もいるでしょう。ここ数年、「お医者さんに相談しましょう。」、「薬で解決できます。」、「早期発見/治療が重要です。」といったCMや広告は急増しています。

 

10【 日本市場における広告 】

 

ここで、なぜ、「お医者さんに相談」という広告になるのかについて、簡単にお話しておきます。

はじめに、後の話の都合上、アメリカの医薬品市場についてですが、日本を含む多くの国と異なり、アメリカでは、医療用医薬品(prescription drug市販の薬品ではなく医療機関で医師が処方する薬品。)について、一般消費者、つまり、医療従事者ではない一般国民に向けた広告が許されています(direct to customer広告、DTC広告)。なお、店頭で買える薬品はover the counter drugOTC drugといいます。

一方、日本においては、現在のところ、薬事法及び行政指導により医療用医薬品の薬品名を出したDTC広告ができません。そのため、医師に対するロビー活動を行うとともに、本来広告したい医薬品が対象とする症状を示しながら、「それは病気の症状かもしれない」、「お医者さんに相談」すると「薬で解決できる」かもしれない、という広告方法がとられるわけです。

こういった広告は、受診推奨型広告、疾病啓発型広告などと呼ばれるようです。日本においてこの類の広告件数が突如として増大した時期が、先にお話ししたキャンペーンの時期と一致し、現在も続いていることは、私が言うまでもなく、日本に住む多くの方々が実感していることでしょう。日本における医療用医薬品のDTC広告については、規制緩和の話やそれに反対する活動などがあるようですが、詳しく調べるに至っていませんので、ご興味のある方は、DTC広告、規制緩和、受診推奨型広告、疾病啓発型広告といったキーワードでインターネット検索をおこなってみるとよいかもしれません。

なお、アメリカにおいては、巨大製薬企業による、テレビ番組等での仕込み(出演者が病気や薬の話をするよう金銭取引をするなど。)、草の根の活動(grass-roots movement)を偽装した多くの種類の団体の創設による消費者の取り込みといった隠れた広告活動も発覚しています(出典6)。

 

11【 メディカライゼーション 】

 

精神医学・精神医療に的を絞ると、この類の広告の裏にある社会現象を表現できる言葉に、メディカライゼーション(Medicalization)という言葉があります。この単語の動詞はメディカライズ(Medicalize)であり、その意味は、「人の状態や言動を、医療による治療や治療介入の必要な障害として識別もしくは分類すること。」(To identify or categorize (a condition or behavior) as being a disorder requiring medical treatment or intervention., The American Heritage® Dictionary of the English Language)です。古くはヒステリーやホモセクシャル、現代では、人それぞれの気分的な問題から始まり、反抗的な子供、ドメスティックバイオレンス、アルコール依存、ギャンブル依存、幼児虐待、ホームレス、性的趣味、性的犯罪、自殺等に至るまでのさまざまな問題を、医療問題として、治療や治療介入の対象とするのも、メディカライゼーションです。公にメディカライゼーションの対象となった“状態”や“行動”については、第三者による“報告”、もしくは本人による“相談”を端緒として、学校、職場、警察、その他各種支援団体などが窓口となり、客観的な検査方法の無い“精神科診断”により、半ば強制的な、もしくは法令による強制的な“治療”、“投薬”がおこなわれたりするわけです。

さて、仮に、「お医者さんに相談しましょう。」、「薬で解決できます。」、「早期発見/治療が重要です。」といったキャンペーンが利益優先のキャンペーンであっても、精神医療ほどの危険はないでしょう。

髪が少々薄くなった気がしようが、少々太ったような気がしようが、禁煙しようかどうか悩もうが、たとえそれらが“治る”ことがなくとも、精神医療システムのように、見ず知らずの他人による報告(作文)によって責任能力や判断能力を否定されたり、拉致監禁されたり、自由を剥奪されたり、強制的に投薬されたりすることは(おそらく)ありません。精神医療を除き、多くの場合、医薬品は人の役に立つものですし、科学的根拠(化学的根拠とその実証。)があり、効果が判断でき、なによりも、医者に相談するかどうか、(合法的な)薬を使用するかどうかは、強要されるものではなく、自由に選択できるものだからです。

 

12【 儲かる薬 、勝ち組、負け組 】

 

ここで少し、日本市場に対するグローバル製薬企業のキャンペーンが開始される直前まで、アメリカの医薬品市場でなにが起こっていたかについて、Marcia Angell医学博士による出典6から、簡単にまとめてみます。

アメリカの話ですので、社会的なシステム、例えば法令や薬品の認可といったシステムの異なる部分は多々ありますが、これを“勝ち組”、“負け組”という2者択一の概念を与えられた人間の愚かな行動としてとらえると、医療問題のみならず、1990年代から現在にかけて日本で起こっているさまざまな社会現象の本質、もしくは根源が見え隠れしている、そう思えるかもしれません。

1)     レーガン政権(1981–89)から始まり、1990年代を経て、“勝ち組”(winners)、“負け組”(losers)という考え方がアメリカに浸透した。

2)     産学連携の名のもと、“勝ち組”になりたい大学などの研究機関と巨大製薬企業が手を組むようになり、医薬品の特許から得られる利益を両者が独占する仕組みが出来上がった。なお、製薬企業が独占販売を行っている医薬品の基礎研究には、国家機関の出資(税金)によって行われた事業による成果も多い。

3)     産学連携、それから、臨床試験を自らの影響下にある研究機関へ外注することなどにより、巨大製薬企業は、その活動の多くの部分を、研究開発ではなく、特許ビジネスを守り拡大するため、政治的ロビー活動による臨床試験の簡略化や特許期間延長手段の確保、教育や啓蒙活動と称した、医学界や医療現場(薬品を処方する医師)へのロビー活動、弁護士団の結成と特許期間延長のための訴訟、そしてDTC広告に費やすようになった。

4)     特に主力薬品においては、特許期間が切れることが利益に悪影響を及ぼすため、巨大製薬企業は、既存の医薬品の類似品(“me-too drugs有効成分が同一で実質的に既存品と同じ薬。)を新薬として認可を取得し、もしくは、用途、処方量や薬剤の色を変えて認可を取得し、実質的に同じ薬品の特許期間を延ばしたうえで、新薬としてのマーケティングを大々的に行うことが多くなった。

5)     これが行えるのは、FDAFood and Drug Administration:米国食品医薬品局)の行う医薬品の認可手続きにおける臨床試験において、類似薬の効果は偽薬(プラシーボ)との比較において結果の出た報告があればよく、有効成分の同じ既存の薬品との比較は行われず、かつ、試験の際の投与(服用)量が一定である必要のないこと、臨床試験を行う試験機関が巨大製薬企業の影響下にあること、製薬企業側にはすべての結果を発表する義務はなく、都合のよい結果が出るまで何度も試験を行い、都合の良い結果だけを発表できること等の理由がある。つまり、本来客観的な立場で行われるべき臨床試験や結果発表において、科学的な客観性や公平性よりもスポンサーの都合が優先される仕組みが出来上がっている(FDAの予算は製薬企業に依存しています。)。

6)     FDAの認可手続きにおける試験方法及び結果データについては、公的機関の記録であるため、情報開示請求によって都合の悪いデータの隠ぺいが明らかにされたり、また、非営利機関が追跡試験を行った結果、新薬として認可された類似薬が、既存の薬よりも効果が低いことが判明したり、試験期間が短いために発見されなかった副作用が発見されたりしているが、こういった情報は、巨大製薬企業のマーケティングの陰に隠れてしまっている。

7)     類似薬のマーケティングには、DTC広告、例えばCMや、スポーツイベントのスポンサー契約などのほかに、多くの“権威”が最終的に依存する医学情報誌(Marcia Angell医学博士の専門分野です。)への都合の良い結果のみの発表、テレビ番組等での仕込みや草の根の活動を偽装した多くの種類の団体の創設による消費者の取り込みといった隠れたマーケティングも発覚している。

8)     このように利益の追求に傾いた結果、必要な薬という概念は軽視され、“儲かる薬”と“儲からない薬”との間に、マーケティングや供給量に大きな格差が生じ、儲かる薬の価格はさらに上昇し、儲からない薬に属する薬品が足りないという状況さえ生まれた。

儲かる薬:

F 特許期間内である主力製品に対し、特許期間延長のために新たに投入される類似薬

F 患者数の多い薬

F 長期間、できれば一生の使用が見込める薬

F 長期間の使用を強要できるシステム(例えば、精神医療)のある薬

儲からない薬:

F 特許期間外である薬(ジェネリック薬品)

F 患者数の少ない薬

F 患者が貧困層である薬

F 短期間の使用しか見込めない薬(例えば、患者がすぐによくなり、再発しない薬、患者の死亡する確率が高い疾病用の薬など。)

9)   2000年頃から、医療用薬品の価格高騰に対するアメリカ国民(特に高齢者)と多くの州政府の反発が表面化しはじめた。例えば、カナダからの薬品の輸入、もしくはカナダに赴いての薬品の調達などが始まった。そういった反発に対し、巨大製薬企業は、カナダからの薬品の輸入、調達などを規制するためのロビー活動を始めた。

あくまで簡単にまとめてしまいましたが、日本市場に対するキャンペーンが始まるまでのアメリカ医薬品市場において、どのようなことがおこっていたのか、概略はお分かりになったと思います。

さて、ここで精神医学の嘘がどう活躍したか、おわかりになりますか?答えは、類似品(“me-too drugs)の種類、つまり、認可の種類の拡張です。精神科の病名やその解釈が増えれば増えるほど、これが増えるわけです。もちろん、対象となる“患者”の数も増えるわけです。

本項の最後に、出典1から、Thomas Szász医学博士の言葉です。

「いまだかつてなく、精神医学の流儀は(正統な)医学からかけ離れ、そして、いまだかつてなく、医学の流儀が精神医学のやり方に類似してきている。」

“More than ever, the ways of psychiatry are not the way of (traditional) medicine, and more than ever the ways of medicine resemble the ways of psychiatry.”

 

2015624日追記 〜 日本語で知らされ始めた医療詐欺の構造 〜 】

 先月発売された日本語の書籍、「新薬の罠 子宮頸がん、認知症…10兆円の闇」(鳥集 徹著)を読みました。きっかけは、同書の目次の中に、「『心の問題』にされた少女たち」という見出しを見つけ、薬害問題が被害者の心の問題にすり替えられた、という内容に興味をひかれたことです。

残念ながら、同内容はあまり掘り下げられていなかったのですが、同書では、子宮頸がん(しきゅうけいがん)ワクチンの薬害問題をはじめとし、日本国内において、グローバル製薬企業、医師、政治家、官僚、マスメディアの構成する利益追求システムが、複数の薬害問題を生み出した事例を掘り下げながら、薬害問題が繰り返される原因の追及と、対処法の模索を試みています。まさに、本項までに取り上げた、試験データの隠ぺいや都合の良い結果だけの公表、診断基準やその解釈の追加・変更による医療対象者数の極端な増加、メディカライゼーション、メディアを利用した広告キャンペーン、産学連携問題、特許期間延長のからくり、結果としてないがしろにされる医療本来の目的と国民の生命、その構造を明らかにしようとする試みの日本版といえる、貴重な内容となっています。

欧米における問題提起に遅れる事10年以上、やっと現代医療における詐欺科学、医療詐欺の本質を取り上げはじめた日本のメディアの不甲斐なさにあきれる、ということもあるかもしれませんが、いまだ専門家依存症の無責任メディアが大半である一方、やはり真実を追及しようとする人間の本質的な欲求が抑えられるものではないこと、そして、建前ではなく、他者の生命、身体、自由を尊重するという意思を持つ人間が存在するという事は、人種、国籍や国境に関係の無い真実です。

この日本のメディアの遅れは、単に言語の違いや事象の発生時間のずれに起因するのではなく、近代法の精神が猿真似でしかない、この国の社会システムに起因していると思います。このことは、10年どころか、100年以上の遅れを意味します。ジョン・スチュアート・ミルの「自由論」から読み返し、人類が培ってきた自由と責任の本質、異論・反論を排除するのではなく、個々人の多様性を許容しあい、議論することでしか真の発展は得られない、という民主主義が成り立つ上で必要となる基礎を、議論し、理解することから始めなければ、問題の本質は解決できないと思います。

 

13【 精神医学、嘘で固めた科学の用途は大きく分けて3種類 】

 

さて、話を精神医学の嘘にもどします。ここまでお読みになった方の多くは、それでは何故、精神医学が世界的に認められているのか?という疑問をもたれていると思います。答えは簡単です。精神医学を認めると都合がいいからです。誰にとって都合がいいのか?それは、嘘の用途によって異なります。そして、そこには大きく分けて3種類の用途があります。「仮病」、「管理」、そして「カネ」です。

1つめの「仮病」(同義語として「詐病」があります。)は、責任や義務を回避するために“心の病”を装う用途です。例えば、犯罪者が罪を逃れるための仮病(insanity defense)、戦場に行きたくない兵士が使う仮病など、さまざまな責任や義務の回避用途です。仮病の場合、多かれ少なかれ、そうするしか方法が無かったとしても、また、強要に近い形であっても、本人が加担します。家族を養わなければならない軍人が、収入の当てのない退役後、PTSDを装うことで給付金を受けられるとすれば、本人が仕方なくPTSDを装うこともあるでしょう。

「あるでしょう」と書いたのは、他の“心の病”と同じく、それが演技であることを証明する、生物学的、化学的な検査方法が無いからです。精神科医がPTSDだといえば法律上給付条件を満たし、政府予算(税金)から給付金がもらえるのです。

考えてみてください。これまでに見た情報から判断して、精神科医が、彼らの言う“心の病”と仮病との間に、つまり、彼らがいまだ言う“脳内化学物質のバランスの崩れ(ケミカル・インバランス)”、“脳の障害”と仮病との間に、明確かつ客観的な線を引き、生物学的、化学的に証明できると思いますか?できませんよね。「経験ある精神科医の私にはわかるのです。」とか「仮病、つまり嘘をつくこと自体が精神科の症状なのです。」とかなんとか権威を盾にごまかすしかないのです。まさに「言葉の曲芸」ですね。 “心の病”と仮病とを客観的検査方法によって区別できない時点で精神医学は終わっているのです。そして、精神科医の経験は、嘘の上塗り作業の積み重ねにすぎません。

出典1Psychiatry - THE SCIENCE OF LIES」(日本語にすれば「精神医学 - 嘘で固めた科学」とでもなりましょうか。)を読むと、この「仮病」、つまり「都合の良い嘘」が全ての“精神障害”の始まりであり、どのようにしてDSM-IVで定義される350近い病名の「発明」、「捏造」に行き着いたのかが、具体的かつ簡潔にわかります。先に触れたIrving Kirsch博士のうつ病患者分析結果、つまり、どのような薬を処方しても、患者の期待によって“症状”が改善するという結果は、この話を裏付けている、精神障害が仮病や言いがかりでしかないことを証明している、といえるでしょう。

2つめの「管理」は、権力側から見た用途です。この用途では、先に見た「仮病」用途を免責、免罪用途として利用し、その一方で、刑事手続による冤罪ではなく、精神科診断を、人の考え方、言動や生き方を分類して組織的、社会的に排除したり、自由を制限したり(civil commitment)、責任能力を否定したりする権威として使用します。欧米の文化においても、精神科診断によるレッテルが、本人の保護のためだという偽装のもとに損害を与える、つまり、人身の自由を奪い、生活を奪い、社会的立場を奪い、収入を奪い、信用奪い、名誉を毀損する凶器になるという理解に変わりはありません。この用途については、出典3及び1を参考になさるとよいと思います。

それから、公文書により過去にCIAが行ったと認められている、BLUEBIRD1950-1963)、MKSEARCH1964-1952)、MKULTRA1953-1963といった、自国民を利用し、LSD投薬、電気ショック、神経ガスなどの薬品により、心理を破壊する実験、記憶を消す実験やマインドコントロールによる奴隷化実験などと精神医学が共存していたことも、「管理」用途の一面です。こういった実験では、障害を残した方、自殺者、死人も出ています。当初の被験者は、退役軍人、囚人、アルコール中毒者、麻薬中毒者等でしたが、アメリカ兵だけでも、7,000人が、本人の同意無しに実験対象になっていたという報告があります。

別の見方をすれば、精神医学のいう“症状”は、作り出すこともできるのです。ここでは詳しく書きませんが、例えば、中枢神経や末梢神経に影響・悪影響を及ぼす物質が植物や動物の分泌物などに含まれていることは古くから知られており、利用、悪用されてきました。また、近代化によって人工的に生成された物質の中にも、中枢神経や末梢神経に影響・悪影響を及ぼす物質のあることが知られています。めまい、頭痛、吐き気、発汗などを起こす物質から、痛みを抑える物質、虚脱感を与える物質、筋肉の動きを妨害する物質、短期記憶を妨害する物質、意識を混濁させる物質、意識を覚醒させる物質、心理的抵抗を奪う物質、意識を失わせる物質、幻覚作用のある物質まで様々です。なお、こういった物質の中には、医療や工業の領域だけにではなく、私たちが使う日用品に含まれているものもあります。

これらの物質について、20世紀に至り、分子生物学などの領域でそのメカニズム、つまり、それらの物質が体内でどのような働きをすることによって身体的影響が出るのかという分子レベルの仕組みが明らかにされ、また、同様の性質をもつ物質やそれら物質の働く仕組みを妨害する物質などが人工的に合成されています。そして、これらの物質を医療目的で使用すると、“薬”と呼ばれるわけです。

このような科学的発見を、権力や資本が利用しないはずはなく、先に挙げたようなアメリカにおける国家犯罪での利用が行われたのです。そして、精神医学の嘘で利用されるセロトニン、ドーパミンといった神経伝達物質の存在は、こういった過程で明らかにされてきたものです。精神医学の嘘は、その正当化において、このような科学的発見を悪用した発明なのです。

さて、3つめの「カネ」は、精神医療従事者の報酬から、製薬企業の利益、精神医療制度に関係する政府資金(つまり税金の使い道。)にあやかる人脈の利益まで、すべてのカネの流れです。この用途については、出典2356及び7を参考になさるとよいと思います。

Thomas Szász医学博士は、1つめの「仮病」用途について、本人が選択する「下(力のないもの)からのメディカライゼーション(Medicalization from below)」、「管理」用途について、強要による「上(権力側)からのメディカライゼーション(Medicalization from above)」とし、選択と強要の区別の重要性を指摘しています(出典1,p7)。

同博士はまた、精神医学を擁護した政治家の発言をいくつも挙げ、「メンタルヘルスの領域以外に、その医学領域で定義された病気が本当に医学的に病気なのかどうかについて、ホワイトハウスの援護が必要な医学領域など存在しないが、その事実に、メディアも国民も感づいている様子はない。」(It does not seem to occur to the media or to people that there are no illness outside of the realm of the mental health field whose disease status requires defense by the White House.)とも述べています(出典3)。

 

14【 原因のすり替え 】

 

精神医学信者の間では、うつ病は自殺に、統合失調症は犯罪につながる、という信仰があります。一方で、その信仰は、うつ病や統合失調症というレッテルを貼ることで本人を追い詰めた結果に対して、原因をすり替えているだけであるという議論があります。うつ病でいえば、悲しいことや耐え難いことが続いている人に、原因の解決なく、うつ病というレッテルを貼ることでさらに落ち込ませて自殺の可能性を高め、統合失調症でいえば、なんの検証もなしに人格や責任能力を否定することで社会に対する敵対心をあおり、罪を犯す可能性を高めている、ということです。もっともです。

この議論は、モビングなどで職場やコミュニティから人を排除する際に精神医療を利用する場合や、危険・不安の捏造についてなされることがあります。欧米では、こういった研究も多くあります。

 

15【 狂った司法 】

 

ここで、精神科診断が法的根拠となることで司法がどうなるか、狂った司法の例として、1991年のアメリカでの裁判例を見てみます(出典3)。

1989年、バージニア州で教員管理職についていたAnthony M. Rizzo, Jr.は、7人の教員らからセクハラの告発を受け、職場を解雇されました。その後の年金支払いに関する裁判において、Rizzoがセクハラの事実を否定する一方で、Rizzoの弁護士は、セクハラはRizzoの精神科症状によるものであるとし、Rizzoの精神科医は、Rizzoを自己愛性人格障害、精神性的障害(精神性欲異常)と診断し、Rizzoがセクハラの事実を否定するのも精神科の症状であるとしました。1991年、バージニア州高裁は、Rizzoには精神性的障害(精神性欲異常)があり、この精神障害のために、セックスを強要せずには女性を指導することができなかったとして、バージニア州は、Rizzoに対して、月々3,164ドルの年金及び物価上昇に伴う上乗せ金、さらに、Rizzoが解雇され裁判の始まった1989年からの未払い賃金として、200,000ドルを超える額を支払うこと、とする判決を下しました。

「精神障害のために、セックスを強要せずには女性を指導することができなかった」から、本人にセクハラの責任はない、年金も未払い賃金も受け取る権利がある、という司法判断です。

殺人事件などの刑事裁判において、精神鑑定で犯行時の責任能力や判断能力の有無を判断するという裁判例についてはみなさんも聞いたことがあり、釈然としない疑問を覚えたこともあると思いますが、上記判断は、さらに釈然としないのではないでしょうか。アメリカの例だからといって他人事ではすみません。同じ診断マニュアルが使用され、精神科診断が疑うことの許されない法的証拠になる以上、この判断は日本でも可能なのです。

なお、精神科医の言う“症状”を本人が否定した場合、“精神科症状の否定は精神科の症状”として片付けるのが、国を問わず、精神医療のならわしであり、「国家犯罪としての医療保護入院制度、その証明」の裁判例あるように、精神科診断を覆すような証拠や主張について一切判断しないのが日本の裁判所のならわしです。

ここまで調べてみると、日本の裁判官に、精神医学の否定につながる判断をする力などないのではないかとも思えます。

 

16【 まとめ 】

 

F 精神科診断には、他の医療分野と決定的に異なり、客観的な検査方法がない、つまり、診断の正しさを証明する生物学的、化学的な検査方法も、診断の誤りを証明する生物学的、化学的な検査方法もない。よって、“症状”の演技や“症状”の報告(作文)があれば、“診断”は精神科医の主観、都合や立場、もしくは精神科医に影響力のある人や団体のさじ加減でどうにでもできる。

F 精神医学の言う“心の病”のメカニズム、“脳内化学物質のバランスの崩れ”(ケミカル・インバランス)理論は、半世紀にわたる実証で完全否定されており、精神障害が仮病やいいがかりでしかないことは明らかだが、精神医学では、いまだ“脳の障害”を扱っていることになっている。

F DSM診断基準は、アメリカ精神医学会(APA)の委員が多数決で決めている(science-by-vote)。

F 精神科診断が“正しい”前提となる根拠は、精神医学が医学として正しいからでも、診断が客観的に実証可能だからでもなく、法律がそう定めているからという理由による。

F グローバル製薬企業各社は、1990年代前半から、うつ病用のSSRIをメインに日本市場開拓を考え、ロビー活動等の後、2000年から、テレビ、新聞、雑誌等のメディア、公共広告を装ったメッセージ、製薬企業がバックにいるとはわからないように作られた「うつ病診断サイト」などを使い、「うつ病キャンペーン」「精神医療に対する意識改革キャンペーン」を大々的に行っている。

F 精神医学、嘘で固めた科学の用途は、「仮病」、「管理」と「カネ」の3種類。

F うつ病は自殺に、統合失調症は犯罪につながるという精神医学の信仰は、うつ病や統合失調症というレッテルを貼ることで本人を追い詰めた結果に対する、原因のすり替えと捉えられる。

 

17【 境界線 】

 

「日本語では知らされない精神医学の嘘」と題したこれまでの文章の情報源は、他言語の情報を英語圏の人が収集したものも含め、すべて英語の情報源です。国籍に関係なく、嘘を押し通す人々も、事実を明らかにしようとする人々もいるということです。Thomas Szász医学博士は、その著書「Psychiatry - THE SCIENCE OF LIES」(出典1)の序文でこう述べています。

「自然科学事業の健全性は、“科学的”と呼ばれる活動に携わる個々人が、真実を探求して真実を述べること、また、誤った説明と偽りの“事実”をあばいて拒絶するという、科学的共同社会の約束事に依存する。対照的に、宗教、精神医学といわゆる行動科学に対する偽装信仰は、議論することの許されない教義、しきたりに対する忠誠と、集団の繁栄にとって有害な真実を語る行為の拒絶により保持される。」

“The integrity of the natural scientific enterprise depends on truth-seeking and truth-speaking by individuals engaged in activities we call “scientific,” and on the scientific community’s commitment to expose and reject erroneous explanations and false “facts.” In contrast, the stability of religions and the ersatz faiths of psychiatry and the so-called behavioral sciences depends on the loyalty of its practitioners to established doctrines and institutions and the rejection of truth-telling as injurious to the welfare of the group that rests on it.”

真実を明らかにしようとする人々と、嘘を押し通すしかない人々の境界線を言い表しているような気がします。そして、嘘を押し通すしかない職業の精神科医について(p5)。

「精神科医のように、精神医学の歴史を研究するものは、癌が現実に存在する病であるのと同じように、心の病が現実に存在する病であると信じる、もしくは信じているふりをしなければ、専門家としての信頼を保つことができない。結果として、彼らは、目と鼻の先にある現実を直視する危険を犯すことができない。」

to retain their professional credibility, psychiatric historians, like psychiatrists, must believe-or must pretend to believe-that mental illnesses are real in the same sense that cancers are real. As a result, they cannot risk seeing what is in front of their noses.

真実を明らかにしようとする側と、嘘を押し通すしかない側の境界線。現在のあなたの立場は、どちら側ですか?

 

【 本書のおわりに 】

 

先の第2版追補版においては、最近メディア露出の多いfMRI等の最新技術を利用した宣伝について、それが精神医学、精神医療の詐欺パターンであることを説明するための追補を行いました。しかし、結果として、同版は第2版までに比べ、構成のバランスが悪くなり、読みにくくなった感が否めませんでした。そこで、主に前半部分の構成を見直し、また、わかりにくいと思われる部分を書き直し、第3版として発行することとしました。

2版追補版をお読みいただいた方には大変申し訳ありませんが、より多くの方々にとって読みやすい構成と内容が必要と考えた結果ですので、どうぞご了承ください。

さて、201110月の第1版発表以来、基本的な格子に変更はありませんが、本書の内容は今後も増訂していく予定です。日本の“専門家”や日本のメディアとは異なり、真実を明らかにしようとする人は世界中におり、その情報量は膨大であり、本書の内容を拡充する余地はまだまだあるからです。

なお、「国家犯罪としての医療保護入院制度、その証明」をお読みになると、本書で見たような精神医学の嘘に、日本の司法がどのように便乗しているのか、それによって国民がどのような危険にさらされているのか、その具体例がわかります。

都合のいい嘘に便乗する人々は絶えないかもしれません。多くの人々にとって、そのようにしなければ生きていけない、少なくともそう思い込ませる、社会システムがあるからです。しかし一方で、本書でもお伝えしたとおり、真実を明らかにしようとする人々は大勢いるのです。

最後に、疾病偽装、医療偽装、及び、安全安心偽装に関する話題は、AGSASサイトで取り扱っておりますので、ご参照いただけましたら幸いです。

 

以上、お読みいただき、ありがとうございました。

2014323

戸ア 貴裕

 

 

主な出典、参考文献等

 

1. Psychiatry - THE SCIENCE OF LIES Thomas Szasz, Syracuse University Press, 2008 ISBN: 0-8156-0910-8

2. Crazy Like Us - The Globalization of The American Psyche Ethan Watters, Free Press, 2010 ISBN: 978-1-4165-8709-5

3. Pharmacracy - Medicine and Politics in America Thomas Szasz, Praeger Publishers, 2001 ISBN: 0-275-97196-1

4. Did Antidepressants Depress Japan? Kathryn Schulz, The New York Times August 22, 2004

5. Drug Companies & Doctors: A Story of Corruption Marcia Angell, The New York Review of Books, January 15, 2009

6. The Truth About the Drug Companies: How They Deceive Us and What to Do About It Marcia Angell, 2004, ISBN: 978-037550846

7. The Emperor's New Drugs: Exploding the Antidepressant MythIrving Kirsch Ph.D., 2010, ISBN: 978-0465020164

8. Mental Health Abuse Exposing the crimes of mental health practitionersWebサイト

9. Citizens Commission on Human Rights InternationalWebサイト

10.  Diagnosing the D.S.M. by Allen Frances, May 11, 2012, The New York Times Opinion Page

 

追記 〜ご自身で調べたい方へ〜

 

みなさんの中には、本書の内容について、ご自身でさらに調べたい方もいらっしゃるとおもいます。そういった方のために、本書で参考にした文献や著者について、少々追記いたします。

はじめに、精神医学批判の最もよくまとまった文献としては、Thomas Szász医学博士の「Psychiatry - THE SCIENCE OF LIES」(出典1)が挙げられます。Thomas Szász医学博士は、1961年に発表した「The Myth of Mental Illness」以降、精神医学界の攻撃にも揺るぐことなく、半世紀以上にわたって精神医学批判(同博士によれば精神医学をはじめとした“misbehavioral science批判)を続けられた方です。精神医学界が、Thomas Szász医学博士による精神医学批判の論理を崩すことができないため、徹底的に無視して世間に忘れ去られるのを待つという戦術(ドイツ語でTotschweigetaktik、英語でいうとdeath by silence)をとったほどです。「Psychiatry - THE SCIENCE OF LIES」(出典1)は、これまでに同博士が、また歴史上数々の研究者らが行ってきた精神医学批判の総まとめともいえる内容となっています。にもかかわらずわかりやすく簡潔にまとまっているのは、その芯となる主張、事実と理由付けに揺るぎがないからでしょう。一読すれば、同医学博士の著書や発言が精神医学批判の領域において最も引用されるという理由がわかると思います(引用集も出版されています。)。

次に、日本市場に仕掛けられた「うつ病キャンペーン」、「精神医療に対する意識改革キャンペーン」については、Ethan Watters著「Crazy Like Us - The Globalization of The American Psyche」(出典2)中のThe Mega-Marketing of Depression in Japanp187-p248。)、それからニューヨークタイムズの記事「Did Antidepressants Depress Japan?」(出典4)を一読されることをお勧めします。そして、そこで参照されている文献などをたどるとよいと思います。

次に、製薬業界、精神医学の“専門家”、そして政府機関との間の癒着、そこにある精神医療の嘘について、主にアメリカにおける具体的な事例、例えば、“専門家”と製薬企業とのカネの流れ、医薬品認可の謎などについては、Marcia Angell医学博士著の「The Truth About the Drug Companies: How They Deceive Us and What to Do About It」(出典6)を、その中でも特に抗うつ剤の嘘や認可の謎については、Irving Kirsch博士著の「The Emperor's New Drugs: Exploding the Antidepressant Myth」(出典7)を参考になさるとよいと思います。同書のタイトルは「裸の王様」(The Emperor’s New Clothes)の服(Clothes)を薬(Drugs)に書き換えた、医学的実体のない医療への皮肉です。

最後に、国家と精神医学との関係について、言い換えれば、本文中でお話した「管理」用途の嘘についての文献としては、Thomas Szász医学博士の「Pharmacracy - Medicine and Politics in America」(出典3)を参照なさるとよいと思います。

以上、追記でした。

 

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戸ア 貴裕

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