国家犯罪としての医療保護入院制度、その証明
第3版 2015年6月24日修正版(修正内容及び理由については文末の追記参照) 本書の背景となる犯罪を私に訴えながらも亡くなった清水由貴子さん、 そして、同犯罪を訴えるすべての方々に捧げます。
【 はじめに 】
私の名前は戸ア貴裕です。はじめに、本書で問題とする犯罪の全体像をお知りになりたい方は、「疾病偽装、医療偽装、安全安心偽装ストーキング:追求すべきは司法の病理」をご参照ください。また、本書を読み進める前に、「日本語では知らされない精神医学の嘘 〜精神医学の嘘から、グローバル製薬企業が日本市場に仕掛けた『うつ病キャンペーン』まで。〜」をお読みになると、国家犯罪のからくりが、よりわかりやすくなると思います。 さて、本書では、判例と法令を前提証拠として、国家犯罪としての医療保護入院制度、これを証明します。 私が本書を書く発端となった出来事は、マイクロソフト株式会社という企業に在籍中、2005年4月に起こりました。この発端とその後の民事訴訟については「違法拉致冤病のあらすじと証拠」に詳しいのですが、本書のみをお読みの方のために、簡単に経緯を記します。 私は、元同僚で当時交際していた女性の「社会的に抹殺することも出来るのよ。」「私には実績があるということを覚えておくことね。」といった意味不明な言動に伴い行われはじめた、執拗な迷惑行為や生活妨害行為等について勤務先で告発し、それら行為の映像記録を開始した後、一人暮らしの自宅にチェーンキーを破壊して押し入ってきた人物らによって突然拉致され、診断材料となった報告書等の内容を私に対して決して明らかにしない病院において、即日から閉鎖病棟に軟禁されるという経験をしました。当時、法律知識も無く、普段から弁護士と付き合いがあったわけでもない私は、退院の機会を待ち、その後、私を強制的に入院させていた病院で担当医であった医師を問い詰め、同医師が、はじめから“症状”など説明できないと話す音声を録取した上で、同医師に、精神科病名にあたるものがあるか不明、治療の必要は無い、との診断書を交付させました。その上で、法律を調べ、自ら提起した民事訴訟(本人訴訟)では、私に対する拉致を違法とした判決が確定しています。
1【 医療保護入院制度とは 】
はじめに、医療保護入院制度とはなにか、簡単に説明します。医療保護入院制度とは、“精神障害者”であり、入院が必要であるにもかかわらず、本人がそのことを理解せず、入院に同意しない場合に、保護者の同意があれば、精神科病院が本人を強制的に入院させることができる、という制度です。
精神医学の嘘を知らない人からすれば、一見して特に問題がないように思えるかもしれません。しかし、一見して問題があるようでは、国家犯罪システムとして成り立ちません。実際の運用と司法判断には、からくりがあるのです。そして、本書では、そのからくりを、判例と法令から解き明かし、丸裸にします。 医療保護入院の要件は、精神保健福祉法33条1項で定められていますので、以下に条文を示しておきます。この段階で条文の意味がわからなくとも、論証の理解に支障ありません。
2【 質問 】
ここで質問です。医療保護入院制度の運用例として、以下の手続は合法でしょうか、それとも違法でしょうか。
1 ある人物Aの知らないうちに、Aがこういう言動をしていましたという報告書を作成し、精神科病院Hの指定医Dに渡しておく。 2 民間人が、Aの住居に押し入り、Aの意に反して拉致し、精神科病院Hに連行する。 3 指定医Dは、報告書の内容をAに知らせないまま、報告内容を診断材料として診断を下し、Aには入院の必要があると判断したと診療録に記載する。 4 診断材料となった報告内容を提供した人物Bが、医療保護入院の同意を行う。 5 精神科病院Hは、診断材料となった報告内容をAに知らせないまま、Aが拉致されてきたその日から、Aを閉鎖病棟に軟禁し、医療保護入院措置を開始する。 6 Aには、診断材料となった報告内容が知らされることはない。
「違法拉致冤病のあらすじと証拠」をお読みになった方であれば分ると思いますが、これは私自身の提起した民事訴訟で、裁判所が認定している事実です。Aは私、Hは長谷川病院、Dは長谷川病院医師の宮内茂、報告書を作成したのは私といっさいの面識がないと本人も認める精神保健福祉士T(EAP社。マイクロソフト株式会社の提携会社。)、拉致して長谷川病院に連行するアドバイスをしたのが精神科医である高橋龍太郎(タカハシクリニック)、拉致を実行したのが敷島警備保障有限会社の4名、そしてBは私の母です。
3【 国の判断 (刑事)】
これについて、国の判断は以下の通りです。
はじめに、刑事での判断です。拉致を行った人物らに対して、東京地方検察庁の判断は、不起訴であり、その理由は「罪とならず」です。これは、私が刑事告訴を行った結果ですが、国側は、本来行われるべき、私に対する事情聴取も拉致現場の現場検証も行っていません。
刑事告訴の結果不起訴と判断された場合、不起訴理由を問い合わせることが出来ますが、その通知内容は、「罪とならず」、「嫌疑なし」、「嫌疑不十分」といった主文のみであり(法務省訓令である事件事務規定第72条2項にこれら主文が列挙されています。)、被疑者の名誉保護の見地などから、国民はこれ以上の理由を知ることが出来ません。なお、検察審査会に審査を申し立てても、主文に至る理由やどのような捜査が行われたのかについて教えてくれるわけではありません。
拉致について、「罪とならず」との主文に至る理由が不明であり、本来行われるべき、告訴人に対する事情聴取も現場検証もなく、また、拉致以外の告訴部分については音沙汰なしです。これでは追及のしようがありませんので、以下、民事での判断から、論証をおこなっていきます。
4【 国の判断 (民事)】
民事での判断は、拉致は違法行為であるが、その他の行為は違法行為にはあたらない、そのうち、医療保護入院については、精神保健福祉法33条1項および同1号を満たして合法、という判断です。
裁判所が認定している事実のうち、重要な点は以下の2点です。
1 本人に対して診断材料が知らされていない点。 2 違法拉致により病院まで連行されている点。 (裁判所が違法と判断し、判決が確定していますので、違法拉致といいます。)。
そして、その重要度は上記順番のとおりです。みなさんは、違法拉致のほうが重要度は高いのではないかと思うかもしれません。もちろん、違法な拉致は重要な問題ですが、国家犯罪システムを論証するうえでは、本人に対して診断材料を知らせないまま行われた診断と医療保護入院を合法とする点のほうが、実は、はるかに重要な問題なのです。
5【 重要な判断 】
先ほど、本人に対して診断材料を知らせないまま行われた診断と医療保護入院を合法とする裁判所の判断が重要と書きました。
これについて、問題とする裁判所の判断を具体的に記します。
裁判所は、「そもそも精神科の入院診療の場面では、紹介状の類を患者(特に原告のように病識のない患者)に直接見せたりすることが患者の症状等に悪影響を与える危険性が大きいことは明らか」などと説示して、「本件診断前に原告に対し本件報告書等を開示して所見を説明し、内容について確認する機会や不服申し立ての機会を与える義務が被告にあったなどとは、到底いうことができない。」と判断しています。ここでいう「原告」は私、「被告」は長谷川病院医師の宮内茂です(平成22年(ネ)第1364号及び平成21年(ワ)第11635号。)。
上記裁判所の説示は、これから診察を行う場面、これから精神科の“症状”が存在するか否かを判定し、そのうえで入院が必要か否かを判定すべき場面において、はじめから“精神障害者”であることを前提にした説示です。診察により判定されるべき結果を診察の前提とする詭弁は誰にでもわかります(論点先取)。また、本人に知らされることのない相談内容や報告内容についての本人の認識(“病識”)の有無は判断不可能ですから、これも詭弁です。そして、これらの詭弁は、高裁判例として、全ての国民に通用します。
精神科であれば、診断材料とする相談内容や報告内容について、本人には知らせなくともよい、反論の機会を与えなくてもよいというこの裁判所の説示、判断に従えば、本人に知らされることのない報告書に、精神科の“症例”にあてはまるような言動をしていましたという嘘を書いてしまえば、それが嘘であると証明されない限り、国の認める国民の社会的抹殺、つまり、人身の自由を奪い、生活を奪い、社会的立場を奪い、収入を奪い、信用奪い、名誉を毀損する行為が可能になるのです。
みなさんは、相談や報告の内容が事実であり、精神科の“症状”であると証明されるのが先だと考えるかもしれません。しかし、ここに1つのからくりがあります。裁判では、報告内容が嘘だと主張する人、この場合、強制入院させられた人に、報告内容が嘘であることを証明する責任が生じます。
本人には知らされることのない報告内容ですから、診断の前や医療保護入院中に反論することはできません。いざ訴訟になってから、事後的に開示された相談内容、報告内容や診療録に、嘘のあることを証明しなければならない立場となるのです。
この点、痴漢冤罪の構図と似ていると思う方もいるかもしれません。しかし、先ほどの裁判所の説示は、どのような冤罪も足元にも及ばないくらい、はるかにずさんな手続の容認なのです。
6【 刑事手続との対比 】
先ほどの裁判所の説示、判断を刑事手続にたとえれば、本人に知らされることのない相談内容や報告内容を被疑事実とし、本人の身柄を拘束(逮捕)して留置所に送り、相談内容や報告内容によればどうせ有罪なのだからと断定して即日に刑を執行することを国が認めるようなものです。そして、刑の執行がなされた後で、ようやく相談内容や報告内容を知ることのできた本人が、「これは違法だ、報告書には嘘が書かれている、そもそも犯罪事実の立証がなされてないじゃないか。」と訴えるのに対し、裁判所が、「報告内容からすればお前は犯罪者で有罪だから、警察、検察、裁判所には、お前に報告書を見せたり反論の機会を与えたりする義務などなかった。報告書に嘘があるというなら立証してみろ。」と言っているようなものです。
どのような冤罪も足元にも及ばないくらい、はるかにずさんな手続の容認といった意味が、おわかりいただけたでしょうか。
上記のような手続が、刑事手続として違法であることは、具体的な法規は別にして、みなさんご存知だと思います。そうでなければ、この国は冤罪天国になります。刑事手続においては、被疑者に対して被疑事実は知らされ、そのうえで、弁解や反論の機会が与えられますし、身柄の拘束や捜索には令状が必要ですし(現行犯逮捕と緊急逮捕を除く。)、取調べ調書には、本人の確認が必要です。
ここまでお読みになって、みなさんは、刑事手続の場合と医療保護入院手続との場合とでは、話が違うのではないかと思われたかもしれません。
しかし、これを憲法の視点からみると、生命、身体、財産に対する権利侵害、虐待や名誉毀損といった、国民の不利益につながる措置を、本人に理由を知らせることも、反論の機会を与えることもなく行うことを、後述するとおり、憲法は禁止しています。この憲法の要求は、対象となる手続が刑事手続であるかどうかに関係がなく、行政手続にも、強制入院手続にもあてはまるのです(最高裁判例及び学説)。
なお、本書では、論証の後半で、刑事手続の場合と医療保護入院手続との場合との違いも示し、その違いに、国から、もしくは権力に近い人々から見た、うまみのあることも説明します。
7【 憲法 】
ここで、論証の法的根拠となる憲法の条文とその解釈をみてみます。論証に関係する条文は31条と13条であり、その内容は以下の通りです。
法律を学んだ人からすれば当たり前のことをいいますが、憲法というのは、その他全ての法令が従うべき法律です。つまり、憲法に反する法令はそのものが違法なのです。また、裁判所が、憲法に反した法令の解釈や判断をすることは許されず、憲法に反した法令の解釈や判断は違法とされます。
憲法には、判例(主に最高裁判例。)や学説による解釈が存在し、単に条文を読んだだけでは、具体的事例に対してどのように適用されるのか、言い換えれば、具体的な法令、具体的な裁判所の判断や法令解釈が合憲なのか違憲なのか、判断の難しい場合があります。そこで、医療保護入院制度に関係する範囲で、31条と13条の解釈についてみてみることにします。
8【 適正手続の保障 】
憲法31条は、適正手続の保障を要求していると解釈されます。適正手続保障の要求とは、生命、身体、財産に対する権利侵害、虐待や名誉毀損といった、国民の不利益につながる措置にあたっては、事前に、本人に対し、いかなる事実に基づき、いかなる法規を適用して行われる措置であるのかを示したうえで、弁解及び防御の機会を保障すべき要求と解釈されます。これを、告知、弁解、防御の機会の保障といいます。
憲法31条の要求する適正手続保障は、もっぱら刑事手続に適用されますが、人身の自由の剥奪をともなう強制入院制度に対しても、刑事手続と同等の適正さが要求されることについては、学説でもほとんど異論がありませんし、異論というのは、非刑事手続における適正手続保障を別の憲法の条文(13条)に求めるといったもので、刑事ではないという理由で、告知、弁解、防御の機会の保障をしなくてもよいということをいうものではありません。また、行政手続においても、刑事ではないという理由だけで適正手続の要求を否定してはならないという最高裁判例があります。
9【 適正手続保障の目的 】
憲法が適正手続保障を要求する目的は、正確性の確保、及び、個人の尊厳の保障により、国民の生命、身体、財産に対する権利侵害、虐待や名誉毀損等を防止することであり、分りやすい例として、冤罪の防止があります。
ここでいう正確性の確保というのは、本人に対して、告知、弁解及び防御の機会を保障することによって、一方的な判断を防ぎ、より正確な判断を保障することであり、個人の尊厳の保障というのは、自らの不利益につながる判断に、本人が参加する権利の保障です。
ひとことでいえば、いわゆる欠席裁判の防止です。
適正手続が保障されない状態というのは、先に書きましたように、被疑事実を本人に知らせないで反論の機会も与えず、身柄の拘束や刑の執行ができる状態であり、これが合法であるとしたら、この国が免罪天国になってしまうことが容易に想像できるでしょう。同じ理屈で、適正手続の保障されない医療保護入院制度を温存するこの国は、冤病天国なのです。
10【 適正手続保障と医療保護入院制度 】
憲法の要求する適正手続保障は、さらに、適正手続の必要な制度について、具体的な法令により手続規定を定めること、その手続規定が適正であること、そして、実際にその法令を適用して行われる個々の手続が適正であることを要求していると解釈されています。
刑事においては、憲法の要求から、罪刑法定主義、令状主義、強制処分法廷主義等に基づき、主に刑事訴訟法の定める手続規定があり、これに反した捜査、逮捕、拘留、起訴、裁判、判決、刑の執行などは違法とされるわけです。
医療保護入院制度についてみてみますと、精神保健福祉法33条1項および同1号による医療保護入院制度における適正手続の保障として、具体的な手続を定める法令は存在しません。つまり、精神保健福祉法33条1項および同1号による診断、医療保護入院の必要性の判断と医療保護入院実施において、適正手続保障を要求する法令は、憲法以外に存在しないのです。これが、国が温存し幇助する国家犯罪システムとしての医療保護入院制度、そのからくりの最も重要な部分です。
11【 精神保健福祉法34条 】
医療保護入院制度について、この濫用を防止しようという動きもありました。精神保健福祉法34条の制定です(1999年5月28日可決、2000年4月1日施行。)。
34条は、保健所に対する、“精神障害”の可能性があるから入院させたいといった相談をもとに、都道府県知事の責任において、事前に、診察が必要かどうかについて、都道府県職員が、本人とその環境に関する調査を行い、調査の結果、診察が必要とされた場合、都道府県知事の指定する指定医が、これも事前に、診断、入院の必要性の判断、強制的な移送の必要性の判定を行い、この結果、強制的な移送による医療保護入院が必要とされた場合、都道府県の職員が、本人に対して、いかなる事実に基づき、いかなる法令に基づき、病院へ連れて行くのか、また、不服申し立ての機会のあることを書面で知らせたうえで、医療保護入院を目的とし、都道府県知事の指定する指定病院に強制移送することができる、という法令です。34条の細かな手続については、厚生省(当時)の通知した事務処理基準が存在します。なお、その後の医療保護入院は、先に条文を示した精神保健福祉法33条1項2号、つまり、本書では問題としない条項に基づいて、精神科病院の管理者が行います。
1点指摘しておきますが、34条による移送にあたり、移送の必要性を判定する指定医は、この判定を、「公務員として」行うことが定められています(19条の4、2項4号)。これはつまり、人身の自由の剥奪の要否判定について、国が責任を取るということです。
人身の自由の剥奪というのは、それだけ慎重を期すべき行為であるとみなされているのです。
34条および事務処理基準が制定された経緯には、医療保護入院の実施において、民間警備会社などが人を強制的に精神病院に連行しているといった事実が朝日新聞朝刊(1997年7月19日)で明らかにされるなどしたため、これを防止しようという動きがありました。
34条について国会で審議がなされていたときの、厚生省(当時)による趣旨説明は以下のようなものでした(平成11年5月21日第145回国会厚生委員会第11号及び国民福祉委員会第8号議事録より。)。
「一定の診断行為、手続行為を行って、それから搬送車に、搬送の手段に乗って病院へ行くという一連のものとして、その手続を経ないで民間でやるというのは好ましくない。」
「都道府県知事の責任において適切な医療機関へ移送する制度を整備するということが基本的な考え方でございます。したがいまして、都道府県知事の責任において搬送するということがまず基本でございますので、単に業者に任せるといったことは念頭にございません。」
「少なくとも御本人を本当に拘束せざるを得ないのかどうかという一定の手続をとるためには、単にこれをそのまま民間にお任せするということは適切ではない。」
「やはりそういうものを民間がやっていただくのは好ましくないというか、やらないでほしいという気持ちでこの制度を創設したわけであります。」
上記説明から、34条の趣旨は十分に理解できると思います。
12【 行政の見解 】
精神保健福祉法34条制定当時の厚生省(当時)の見解では、本人が病院を訪れない場合、診断及び医療保護入院の必要性の判断を行う指定医は、医療保護入院を実施する病院に属する指定医であってはならず、指定医が往診して診察をおこない、その指定医の所属する病院に医療保護入院させることを違法としています(詳しくは、巻末で挙げる出典1、ジュリスト増刊の232〜233頁をご参照ください。)。
具体的な見解として、家族が本人を病院まで連れて行ったとしても、本人が車から降りようとしないような場合、指定医が車まで赴いて診察し、その指定医の所属する病院に医療保護入院させることを違法としています。この見解の背景には、主に、精神病院による「患者狩り」といわれる行為を防ぐ目的があったようで、この行政の見解によって、指定医が往診してその指定医の所属する病院で医療保護入院を行う事例が減ったということです。
考えてみてください。単に病院の駐車場まで強制的に連れて行かれたか、診察室まで強制的に連れて行かれたかの違いによって、医療保護入院が違法とされるか合法とされるかの判断が変わるなんて、著しく不合理だと思いませんか?
私は不合理だと思います。そして、私は、宮内茂を訴えた民事訴訟において、上記行政の見解からすれば、違法に拉致されて長谷川病院まで連行された私に対して、長谷川病院の医師である宮内茂が診察と入院の必要性の判断を行ったと記録したうえで、宮内茂の所属する長谷川病院が行った医療保護入院措置は違法と判断されなければならないと主張しました。
しかし、裁判所は、判決書において、この主張に触れることすらしませんでした。最後まで判断しなかったわけです。
→宮内茂を訴えた民事訴訟の「上告理由書」で、判断の遺脱による理由不備(上告理由)を主張しています。
なお、34条の運用において、診断、入院の必要性の判断、強制的な移送の必要性の判定は、入院を行う病院に属さない指定医によってなされなければならないとされています。
13【 34条についての裁判所の判断 】
34条についてみたところで、34条の施行から、5年と13日経過した日に、違法拉致による医療保護入院の行われた私の事案における、裁判所の判断をみてみます。ここで挙げる裁判所の判断は、私に対する拉致を違法とした判決が別の民事訴訟で確定した後の判断です。
私が宮内茂を訴えた訴訟で、裁判所は、第1審判決(東京地裁)において、私の主張を、人を強制的に精神科病院に移送して医療保護入院措置をとるには、精神保健福祉法の34条に拠らなければならず、これに反し、違法な拉致によって実現された医療保護入院措置は違法であると主張しているとしたうえで、「原告の主張は独自の主張というほかなく、採用することができない。」と判断しました(平成21年(ワ)第11635号)。
第2審判決(東京高裁)はこの判断部分を明示的に取り消しましたが、それでも、私に対する医療保護入院は、34条の移送によるものではなく、33条1項及び同1号によるものであり、指定医の診断と保護者の同意がなされているから、33条1項及び同1号の要件を満たして適法と判断したのです(平成22年(ネ)第1364号)。
結局、拉致は違法でも医療保護入院は合法と判断していることにかわりはありません。そうすると、適正手続規定の無い33条1項及び同1号による医療保護入院であれば、違法な拉致によって入院が実現されたという事実が認められても、診断と入院の違法性を左右することはない、ということを国が認めているのです。
せっかく国民の権利の保障をする動きにより制定された法令の趣旨が意味をなしていません。
なお、先に示したとおり、34条による移送先の病院は、精神保健福祉法により都道府県知事の指定する指定病院でなければなりませんが、私の事例における長谷川病院はこの指定病院ではありません。
そうすると、長谷川病院は、34条の見地からすれば、先に挙げた厚生省(当時)の説明にある「適切な医療機関」でさえないのです。仮に、34条を適用する必要の“明白”な人がいたとしても、34条の手続によって、長谷川病院に移送されることはありえないのです。
14【 保護者の同意 】
先に示した精神保健福祉法33条1項のとおり、医療保護入院の要件には、保護者の同意があります。
→ここでいう保護者というのは、精神保健福祉法で規定されており、家庭裁判所が保護者として選任した人になります。通常は、扶養義務者(直系血族、兄弟姉妹、親族。民法上、3親等内の親族については、裁判所の審判により扶養義務者となることがあります。)が選任の対象となりますが、扶養義務者がいない場合には、市町村長が保護者となります。後見人や保佐人がいる場合には、そちらが優先されます。なお、4週間に限り、保護者の選任がなくても、扶養義務者の同意があれば、病院は医療保護入院措置をとることが可能です。
保護者の同意については、医療保護入院制度が、「人身の自由の剥奪」になりうるものであり、「適正手続の保障の欠如等の重大な憲法上の疑義」のあることを認めた上で、保護者の同意が、医療保護入院制度における人権保障上の欠陥を補う唯一の手段と判断した地裁判決があります。
同判決では、保護者には、本人との関係において、適正手続と同等の機能を果たす義務が課されるとして、これをしないでなされた同意を違法と判断しています(詳しくは、巻末で挙げる出典2別冊ジュリスト No.183の68頁〜69頁をご参照ください。)。
私は、民事訴訟で、同意を行った私の母が、私と生活をともにしていたわけでもなく(母は宇都宮在住であり、私は東京都品川区で一人暮らしをしており、当時で既に17年別々に暮らしていました。)、私に対して知らされることなく診断材料となった相談内容や報告内容を提供しており、同人が、私に対して、相談内容、報告内容、経緯や関与者らを隠し続けた複数の映像音声記録のあること、さらに、同人の依頼によるとされる拉致を違法とする判決が既に確定していること等を考慮すれば、私の母が、前記した地裁判断にあるような義務を果たしているとはいえず、私に対する医療保護入院における保護者(扶養義務者)の同意には瑕疵があり、違法と評価されなければならないと主張しました。
しかし、裁判所は、判決書において、この主張に触れることすらしませんでした。最後まで判断しなかったわけです。
→宮内茂を訴えた民事訴訟の「上告理由書」で、判断の遺脱による理由不備(上告理由)を主張しています。
医療保護入院では、多くの場合、同意する人は入院させたい人です。入院させたい人は、当然、精神科診断が下されることを望み、診断と入院が正当化されるような情報提供をします。入院させたい人が複数いれば、当然、口裏を合わせます。犯罪の隠蔽が目的であればなおさらです。
これについて、後にご紹介する、八木美詩子(やぎよしこ)さんの著書「閉鎖病棟からの告発」から、市民の人権擁護の会日本支部、米田倫康世話役による文章を少々抜粋させていただきます。
「私自身、不当な強制入院の被害に遭った人々を何人も見てきた。共通するのは、精神科医が保護者からの情報を一方的に聞き、本人をほとんど診ていないという点である。」
15【 精神科診断と裁判所 】
ここで、私の事例において、宮内茂が下した診断はなにか、私に知らされることのなかった報告書に何が書かれていたか、報告書内容や診断ついて私がどのような証拠を提出して反論を行ったか、そして、裁判所がどのような判断を行ったかについて、具体的に記しておきます。
→本項で示す裁判所の認定や当事者の主張について、詳しくは、「上告理由書」及び「違法拉致冤病のあらすじと証拠」に記載があります。
はじめに、宮内茂の主張する、私に認めた精神科の“症状”は“被害妄想”のみです。
これに対し、私は、入院中の担当医であった川原達二医師が、「幻覚がないし、それから他にも病的体験が無いし、興奮するわけでもないし、話してるうちにおかしくなっちゃうわけでもないし、机の上に乗っかって暴れるわけでもないし」、「で、あなたの場合は、そういう意味ではその、微妙なのね。だから、明らかな、その精神病症状が、だから、わかんないのよ。その、妄想なのかどうか、なのか、がね。」と話した音声記録、その後同医師の交付した「現時点で精神科の病名にあたるものがあるかどうかは不明である。したがって、継続的な治療は必要としない。」との診断書を提出し、また、入院中に長谷川病院で行われた検査結果に「妄想が存在するか否かを確定することはできない。」と記載されている事実を指摘しました。
ところが、裁判所は、上記すべての証拠が、宮内茂が診断及び入院の必要性の判断を行った日である4月14日のものではないことから、「4月14日時点で原告に被害妄想の存在が不明であったという裏付けとはならない。」「入院した当初から被害妄想の存在が不明であったという趣旨まで読み取ることはできない。」などとして、宮内茂による診断の過誤を裏付ける証拠にはならないとしています。みなさんがどう思うかはわかりませんが、私にはこれ、言い訳にしか聞こえません。
それでは、「4月14日時点」で、“被害妄想”は立証されていたのでしょうか?結論から言えば立証されてはいません。判決理由を読む限り、“被害妄想”と立証された具体的事項は1つも認定されていません。誰かが“被害妄想”かどうかの検証を行ったとの認定もありません。しかし、ここで登場するのが、決して私に知らされることのなく診断材料となった報告書等です。
私に知らされることのなかった報告書等には、私が、「見えない組織に狙われている」と話していた、「毒が入っているといって食事をとらない」などと書かれていました。文章のみで裏付証拠はなにもありません。言ったもの勝ちです。これが診断材料となっていたことを、訴訟提起後まで、私には知らされることがなかったのですから、拉致、診察から入院中にかけて、私は、これについて弁解も反論もできません。そもそも何を根拠に入院させられているのか知らなかったということになるのです。
私は、民事訴訟提起後に、この報告書等や診療録をはじめて見た時、どうりで、診断前、入院中、それから訴訟の提起後まで、長谷川病院側がかたくなに開示を拒否したわけだ、どうりで、担当医との話がかみ合わなかったわけだ、と合点がいきました。本人には決して知らせず、診断と医療保護入院を正当化する記録としてのみ残したかったのでしょう。そしてこれが、精神医療の“臨床”における“症例”となるわけです。嘘の上塗りですね。
さて、診断材料として提出された報告書等ですから、これに反論しておかないとなりません。私は、別途、私に知らされることのなかったこの診断材料が適正手続を経ていない違法証拠であるとも主張していますが、その内容が嘘であることを示すことができればさらによいと考えました。
はじめに、「食事をとらない」との報告内容については、拉致前日に、以前交際していた女性と映画鑑賞、食事、ドライブに出かけた際の領収書や音声記録、“診断”時点から前後7年間において体重に変動のない記録(健康診断の記録と長谷川病院における記録。)を提出しました。また、宮内茂の提出した長谷川病院側診療録によれば、私は入院初日から食事をしており、後におやつとコーヒーのサービスまで追加しています。これについては、後日、川原医師が「いやそれも変だよね。変って言うのはさ、あの、1日でそんな、もし病気だとして、病気の症状が1日でよくなるって事はありえないんだよ、逆に言うと。」と話している音声記録も提出しています。
次に、「見えない組織」などというふざけた報告に対して、私は、実際に生活妨害行為等が行われている様子を記録した多数の映像音声記録、例えば、昼夜を問わずマンションの部屋の窓、壁、洗濯機などが叩かれている映像、制服警官とともに現れるようになった見知らぬ人物が、私に向かい、「命を惜しがると、負けちゃうな。ハッハ(笑)。」などと意味不明な言動をしている映像、車を運転すれば毎回ハイビームで執拗に照らされる映像(東京都内でこれがありえないことは、民放の調査で、夜間に都内を走る車のうち、ハイビームで走る車が100台中0台であったという調査結果や、都内をハイビームで走ったりしたら喧嘩になると話すタクシードライバーの映像等の放送内容を提出して示しています。)、駐車場に行くと毎回バッテリーが上がっており(バッテリーを2度交換しても車両侵入痕跡とともにバッテリーが上がっており、機械的な不具合はいっさい見あたらないとするディーラーの方々の証言音声記録及び23回分のJAFサービス記録を提出しています。)、マンションの隣に入居した住民が私の出入り時や入眠時に奇声を発したり大声で歌い始めたりする複数の映像音声、私の住むマンション前で「覚悟はできてんだぞ!人の道だろ!」などと怒鳴りまくる人物が現れた映像、私宛の郵便物がくしゃくしゃに折り曲げられている映像、マンションの階段が水浸しになっていたりワックスの浮いた状態で放置されていたり、私の外出の際にマンションの玄関が消火器の粉で充満していたりする映像、住居侵入及び車両侵入の痕跡が連日残されている映像音声等、そしてこれらの行為が一斉に始まる前に、当時交際していた女性が、「社会的に抹殺することもできるのよ。」「私には実績があるということを覚えておくことね。」などといった言動をはじめたことを示す通信記録や音声記録等を提出していますが、裁判所はこれら具体的事項について触れることもしていません。
また、診察などなかったとする私の主張に対し、宮内茂が、私を“診察”したと主張して、診察した医師名の記載さえない診察記録を提出していますが、このA4用紙1枚に20行程度の診察記録にも、「見えない組織」だの「毒」だの「食事をとらない」だのといった話のされた記録はありません。
ところが、裁判所は、この診察記録によれば、私が、4月14日、宮内茂に対し、診断材料となった報告書等にある言動と「おおむね符合した」受け答えをしているとして、これを、先に問題とした、宮内茂には私に対して診断材料とした報告書等の内容を知らせて反論の機会を与える義務はなかったとする判断のもうひとつの理由としています。執拗な迷惑行為、生活妨害行為が行われており映像証拠もあるというのと、「見えない組織」だの「毒が入っているといって食事をとらなくなる」だのとでは全く違い、誰もが「おおむね符合した」という裁判所の認定に疑問を抱くでしょう。この認定は、「そうだからそうなんだ。」という、権力による言ったもの勝ち、論理以前の押し通しです。
後にお話しする他の事例のように、私の場合も、そもそも宮内茂による“診察”などありませんでしたので、私はその旨法廷で主張し、さらに、宮内茂が診察をしたというのであれば生じる矛盾点をいくつも挙げていますが、裁判所はそれら矛盾点について触れることすらしていません。判断していないのです。それでも、“診察記録”なる書証が提出され、これが採用されるのです。
再度いいますが、判決理由を読む限り、“被害妄想”と立証された具体的事項は1つも認定されていません。誰かが“被害妄想”かどうかの検証を行ったとの認定もありません。即日閉鎖病棟に軟禁しなければならないような理由をさがしても、私に対して知らされることなく診断材料となり、民事訴訟提起後まで隠され続けた報告書等から認定された経緯しかありません。
裁判所は、裁判において精神科の“診断”を覆すことはしないという前提で、結論ありきの、証拠の取捨選択、説示、判断を行っているというのが正しいでしょう。
16【 精神科医に対する尋問 】
私は、自身の提起した3件の民事訴訟において、精神科医に対する尋問を申請しましたが(証拠申出)、裁判所はこれを採用していません。
私が担当医を問い詰め、担当医が、はじめから“病気”かどうかも、唯一“症状”とされた“被害妄想”があるのかどうかさえもわからないといっている音声記録を録取し、精神医療は必要ない旨の診断書を交付しており、また、執拗な迷惑行為等を示す数多くの映像音声記録が存在し、かつ、“被害妄想”と立証されたり説明されたりした具体的事項は1つも認定されていませんから、私としては、長谷川病院の宮内茂が、私に下した診断の正当性を説明できるはずがなく、尋問すればそれは明らかとなると主張して尋問を申請したのですが、これまでの3件の民事事件の第一審及び第二審の全ての審理において、裁判所は、私の申し立てた尋問申請を採用しませんでした。
証明できる事実の証明できない状況を裁判所が作るわけですから、これは裁判所による証明妨害、犯罪幇助です。医師だから診断が正しいのではなく、証明できてはじめて正しい診断なのです。
17【 うまみ 】
ここで、これまでにみた判例と法令から、国が、精神保健福祉法33条1項及び同1号による医療保護入院制度を、適正手続規定の無いまま温存することに、国から、もしくは権力に近い人々から見た、うまみのあることを説明します。刑事手続との対比を行った際に、私はこう書きました。
「なお、本書では、論証の後半で、刑事手続の場合と医療保護入院手続との場合との違いも示し、その違いに、国から、もしくは権力に近い人々から見た、うまみのあることも説明します。」
違いは簡単です。公務員が関与するかどうかです。刑事手続の場合には、必ず公務員が関与します。捜査、逮捕、拘留、起訴、裁判、判決、刑の執行などなど、仮に現行犯逮捕で民間人が逮捕を行ったとしても、その手続においては、必ずどこかで公務員が関与します。
これがどういうことか。刑事手続において、故意もしくは過失によって、冤罪が行われた場合、公務員が関与していますから、国家賠償法の対象になる、つまり、国側に責任が問えるということです。
一方で、精神保健福祉法33条1項及び同1号による医療保護入院手続の場合、病院への移送さえ民間による拉致監禁で行ってしまえば、公務員が関与することはありません。つまり、国から、もしくは権力に近い人々から見て、「民間が勝手にやった」「国側に責任は無い」「国は関係ない」ということにできるのです。
「病院への移送さえ民間による拉致監禁で行ってしまえば」という部分は重要です。思い出してください。法令に従った、医療保護入院目的の精神科病院への移送は、精神保健福祉法34条に拠らなければなりません。34条を適用した場合、移送の必要性を判断する指定医は、その判断を、公務員として行うことが精神保健福祉法で定められていましたね。また、移送を行う責任者は都道府県知事です。
そうすると、違法な拉致が認められても、その後の診察、診断、医療保護入院の違法性を左右しない、精神科であれば適正手続も必要ない(精神科であれば、診断材料とする相談内容や報告内容を本人に対して知らせる必要も反論の機会を与える必要も無く、診断、強制入院の実施ができる。)、とする国の判断は、「民間が勝手にやった」「国側に責任は無い」「国は関係ない」ということにしながら、一方的な言い分によって国民を社会的に抹殺できる手続の容認なのです。
18【 論証 】
私の事例を用いた論証については、既に材料がそろっていますので、ここで、論証の組み立てを行います。
はじめに、精神保健福祉法33条1項及び同1号による医療保護入院制度には、憲法の要求する適正手続の必要性が明らかにもかかわらず、適正手続を規定する法令の存在しないことがおわかりでしょう。そして、刑事手続との対比から、刑事手続において、適正手続の保障されない場合にこの国が冤罪天国になってしまうのと同じ論理で、適正手続の保障されない医療保護入院制度により、この国が冤病天国であることがお分かりになったと思います。
次に、34条制定の背景、34条制定当時の厚生省(当時)の見解、医療保護入院制度に「適正手続の保障の欠如等の重大な憲法上の疑義」があるとした地裁判決などから、精神保健福祉法33条1項及び同1号による医療保護入院制度に対し、適正手続を規定する法令のないことが問題であるということを、国が十分に承知しているということもお分かりになったでしょう。
次に、34条が制定されて久しいにもかかわらず、病院への違法な移送手段が認められても、33条1項及び同1号による診断と医療保護入院の違法性を左右しないと国が判断していることから、国が、国民の権利を保障すべく制定された法令と手続規定をないがしろにし、適正手続規定のないまま温存している33条1項及び同1号の適用を認める事実がおわかりになったと思いますし、国が、本人に知らされることなく診断材料となった相談内容や報告内容、つまり、適正手続を経ていない証拠によって、適正手続の要求を否定する詭弁を展開してこれを幇助することもおわかりになったでしょう。
さらにいえば、国は、“症状”が断定できたかどうかもあやふやなまま判決理由を構成し、精神科診断と反対の事実を示す証拠については、これを採用しない、触れない、もしくは診断当日に“症状”が無かった証拠にはならないとして排斥する、また、34条制定当時の厚生省(当時)の法的見解に照らした主張に対しても、保護者の同意の瑕疵を訴える主張に対しても判断しない、担当医を問い詰めて担当医が“症状”など説明できないとしている音声記録のある事案においてさえ、精神科医に対する尋問を採用しない、といった事実がおわかりになったでしょう。
最後に、精神保健福祉法33条1項及び同1号による医療保護入院制度が、国側の人々、もしくは権力に近い人々の関与する違法行為、犯罪行為等を隠蔽するには、また、国民を無力化するには、最適な国家制度であることがお分かりになったと思います。
以上から、国が、精神保健福祉法の33条1項及び同1号に対し、その必要性が明らかであるにもかかわらず、憲法の要求する適正手続規定を設けないことで、冤罪よりもはるかに簡単な方法で、国側の手を汚さずに、本人には知らされない一方的な報告内容により、国民を拉致監禁し、社会的に抹殺することのできる制度として温存し、幇助しているという事実が、判例と法令から、証明できたことになります。 本書では以降、同様の事例として八木美詩子さんの事例を紹介し、本論の補強を行います。
19【 八木美詩子さん 】
精神保健福祉法33条1項及び同1号の改正を呼びかけている方に、八木美詩子(やぎよしこ)さんがいらっしゃいます。この方には、ご本人による著書、「閉鎖病棟からの告発」(2009年刊。巻末参照。)がありますので、ご本人による主張や詳しい事件内容をお知りになりたい方は、同書をご参照ください。本書では、これまでの論証に一致する部分の指摘と、事件の概要をお話しするにとどめます。
一致する部分は簡単です。精神保健福祉法33条1項及び同1号に適正手続規定がないために、本人の知らないところで、一方的な相談内容や報告内容が診断材料となり、拉致が計画、実行され、一方的な診断材料を提供した人物の同意によって、本人を拉致即日に閉鎖病棟に軟禁した医療保護入院事案に対して、国が、この医療保護入院を、精神保健福祉法33条1項及び同1号を満たして合法と判断している部分です。
つまり、憲法の要求からすれば、人身の自由を奪い医療を強要するよりも前に、本人に対して、相談内容や報告内容について知らせて、反論の機会を与えた上で、医療で対応すべき問題かどうか検討し、検討の結果、精神科の“症状”が説明もしくは証明できるのであれば、それを本人に説明した上で、本人が納得するかどうか、理解するかどうかを確認すべきであるにもかかわらず、これを行わずに“病識”がないと断定し、突然拉致して即日閉鎖病棟に軟禁した医療保護入院を、国が、33条1項及び同1号を満たして合法と判断しているという部分です。
八木さんの事例では、地裁(平成15年(ワ)第1090号)で八木さんに対する拉致が違法と判断され、これが画期的な判決として地方紙などで取り上げられましたが、高裁でこれが覆されました。地裁の判決書は入手できているのですが、この高裁判断については、裁判で提出された意見書などの一部資料があるのみで、残念ながら判決書が入手できていません。今後入手できることがありましたら、本書の改定において検証したいと思います。
八木さんは、「自宅にある美容院で平常どおり美容師として仕事をしていた。(地裁認定事実。)」日、京都府南丹市八木町の町職員3名、開業医である精神科医、八木町議会議員であった夫と長男の計5名に拉致され、精神科病院に連行され、そのまま医療保護入院として閉鎖病棟に軟禁されました。この事例では、拉致実行者らが八木さんを押さえつけた状態で、開業医である精神科医が八木さんに精神安定剤を注射し、その後、拉致を実行した事実が裁判で認められています。そのため、八木さんの意識が戻ったときには既に閉鎖病棟の中だったようです。
八木さんが拉致されたのは、1998年の2月25日、つまり、精神保健福祉法34条可決の1年前、施行の2年前です。これについて、先に挙げた第一審判決では、「本件入院は、精神保健福祉法33条1項に規定する医療保護入院であるが、本件当時、同項に規定する指定医の診察を受けさせるために被診察者を精神病院へ移送する手続について定める規定はなかった。」としながらも、「被告A(開業医である精神科医)は、不十分な問診しか行わないまま、専らC(八木さんの夫)やE(八木さんの長男)から聴取した事情をもとに、原告(八木さん)に精神障害があると判断したものといわざるを得ない。」「本件当時、原告に自傷他害のおそれがあるなど緊急に入院させる必要があったとは直ちに認められない。」「原告に精神障害があったか否かによって、本件移送の違法性が左右されるとはいえない。」などとして、八木さんに対する拉致と拉致時の安定剤の注射を違法と判断しました。
この判断を覆した高裁の判決書が入手できていないことは先に記しましたが、高裁の判決に影響を及ぼしたとされる精神科医の意見書は、八木さんの著書に収録されています。
この意見書、納得できる部分とそうでない部分があります。 納得できる部分というのは、精神科の“往診”においては危険を伴う可能性のあることを想定すべきであるという一般論と、「自傷他害のおそれ」は医療保護入院の要件ではないという一般論です(「自傷他害のおそれ」は措置入院とよばれる制度の要件の1つです。措置入院は、警察への通報などを起点とし、2名以上の指定医によって自傷他害のおそれがあると診断された“精神障害者”を、都道府県知事がその責任において強制的に入院させることのできる制度です。)。 納得できない部分は、相談内容に対する事実確認や適正手続について全く考慮していない部分、つまり、相談内容や報告内容を八木さん本人に知らせた上で反論の機会を与え、精神医療で対応すべき問題かどうか検討し、何らかの精神科“症状”が証明できるのであればそのことを八木さんに説明して理解能力の有無を確認するといった手続がいっさいなされていないにもかかわらず、“経験のある”精神科医は身近な人からの相談で概ね“正しい判断”ができるとする前提ありきで、拉致された時点での八木さんは「“精神障害者”であり“病識”がなかった」という判断が正当化されている部分です。
20【 何も知らされない 】
八木さんは、自分を拉致した人々が誰であったのか、どのような経緯で拉致に及んだのか、どのような相談内容に基づいて診断が下されたのか、最初の民事の訴えを提起した後に、はじめて知ったそうです。具体的には、はじめに、医療保護入院を行った病院、同病院の院長、それから強制入院を監査する京都府を訴える民事の訴えを提起し、その訴訟の過程で、拉致を実行した人々が誰であったのか、診断材料となった相談内容や報告内容がどのようなものであったのか、また、夫の一方的な相談内容をもとに町議会職員らが拉致を計画した事実などが明らかになってきたため、拉致に関与した人々を訴える訴訟を、別途提起したということです。
実はこの経緯、私の事例と似ています。私も、突然チェーンキーを破壊して自宅に押し入り拉致を実行した人々が誰であったのか、どのような経緯によって拉致に及んだのか、全く知らされていないまま、診断材料となった報告書等の内容も知らされないまま、拉致即日に閉鎖病棟に軟禁されましたから、最初に提起した民事訴訟では、関与したことの明らかであった長谷川病院と両親のみを被告とすることしかできませんでした。
そして、この民事訴訟で初めて、診断材料となった報告書を、私といっさいの面識のない精神保健福祉士Tが作成して無断交付していたこと、高橋龍太郎が、これも私に無断で長谷川病院に紹介書を交付していたこと、拉致の実行者が敷島警備保障(有)であったことがわかり、また、診断材料となった報告書等の内容が明らかにされたため、次に精神保健福祉士T、高橋龍太郎、敷島警備保障(有)を被告とした民事の訴えを提起し、それらの民事訴訟で整理できた事実から、私に対する診断と入院の必要性の判断を行ったとされる宮内茂を被告とした民事の訴えを提起することになったのです(最初の論証で引用している裁判所の判断はこの最後の訴訟のものです。)。
八木さんの事例の場合、病院側は、八木さんを入院させた後で、八木さんの夫と町長からの一方的な聴取内容をまとめ、これを診療録の一部としています。裁判では、これが医療側から「聞き取り調査」と題した書面として提出され、判決文では、「本件聴取書」と表記されています。病院側は、拉致に至る経緯での相談内容や報告内容を記載しただけの診療録では、八木さんに対する“診断”と医療保護入院を正当化するのには足りないと考えたのかもしれません。結論ありきのつじつま合わせです。
八木美詩子さんも、私も、本人には何も知らされない状態で拉致され、即日に閉鎖病棟に軟禁されているのです。これが可能なのは、精神医学の嘘と、本論で見たからくりによります。
21【 保護者 】
八木さんの事例で、医療保護入院の同意を行った人物、つまり、精神保健福祉法上の保護者となった人物は、当時の八木さんの夫です。診断材料となった一方的な相談や報告をしたのも、拉致に参加したのも、退院させないよう病院側に要請したのも、当時の八木さんの夫です。事情については、八木さん自身の著書に詳しいのですが、この夫にとって、私的にも、公的(政治的)にも、八木さんが邪魔になった、そういうことのようです。
八木さんの著書を読む限り、八木さんご本人が最も言いたいことは、このような人物が保護者として一方的な相談や報告を行い、本人を拉致して閉鎖病棟に軟禁し、社会的抹殺を図ることの出来る制度を国が許容してはならない、ということに思えます。
これは、実際に拉致され、人身の自由を奪われ、生活を奪われ、社会的立場を奪われ、収入を奪われ、信用奪われ、名誉を毀損された人にしか実感できないかもしれませんが、八木さんは、拉致が違法とされた判決の後、「ねっとわーく京都」という雑誌のインタビューに答えた際に(巻末参照。)、「精神障害者という烙印」に対して事後的に争うことの難しさを訴え、そして、「社会的抹殺」という言葉を何度か使用しています。
八木さんの場合で特別なのは、弁護士の知り合いがいたため、入院中に退院請求を行い、妨害に遭いながらも、これが通って退院している、つまり、入院の必要などないという判断のなされた証明があるという点です。それでも最終的には、国が、拉致にも、診断にも、医療保護入院にも、違法性はないと判断しているのです。
私の事例における、裁判所の、「4月14日時点で原告に被害妄想の存在が不明であったという裏付けとはならない。」「入院した当初から被害妄想の存在が不明であったという趣旨まで読み取ることはできない。」という言い訳にしか聞こえない判断を思い出してください。同じです。
22【 提案 〜診察の可視化〜 】
医療保護入院制度に係る訴訟においては、診断材料となった相談内容や報告内容に嘘や誇張がある、診察がなされなかった、診察内容が不十分だった、もしくは、実際の診察内容と診察記録が違うといった訴えのなされている事例をよく見かけますが、それらの主張が認められた事例を知りません。なお、一度は認められたにもかかわらず、その後、高裁や最高裁で覆された事例は、私が知る限りでもあります。結果として、まるで申し合わせたかのように、精神医療に否定的な判決は地裁止まりです。
精神医療に関する医療過誤訴訟は、その他の医療分野における医療過誤訴訟と違い、医療側、もしくは医療を濫用する側の言ったもの勝ちの世界です。診療録には、“診断”を正当化する嘘がいくらでも記載できます。他の医療分野における医療過誤訴訟においては、検査機器による検査結果などの、生物学的、化学的な検査記録の存在することが多いため、嘘をつくためには、これらの記録を改ざんしなければつじつまの合わなくなることが多くなります。つまり、単に嘘を記載するだけではつじつまの合わなくなる場合が多いということです。 一方で、「日本語では知らされない精神医学の嘘」にある通り、精神科診断の場合、生物学的、化学的な検査方法がありません。“診断”は日常言語による評価でしかなく、言ったもの勝ちなのです。これが、適正手続の保障なく、つまり、一方的な相談内容や報告内容について、その内容を本人に知らせることも、反論させることもなく、また、その内容が事実であるかどうかの検証さえ必要なく、即日閉鎖病棟に軟禁してよいと国の認める医療保護入院制度においてはなおさらのこと、結論ありきでつじつまを合わせる嘘が診療録に書き放題であることは、これまでの論証でお分かりかと思います。
さて、適正手続の保障に関係して、刑事手続をみてみますと、昨今、取調べの可視化が話題になりました。これは適正な取調べの保障のためであり、違法な取調べを防止し、冤罪や虐待等から国民を守る目的があります。
私は、自身の提起した民事訴訟で、拉致監禁されて長谷川病院に連行された後、指定医である宮内茂による診察などなく、単に、報告書が出ているから入院しましょうという話があっただけであると主張し、また、閉鎖病棟軟禁中の経過についても、診療録には嘘があると主張しています。何度でも言いますが、これを事後的に争わなければならないのは、国が、その必要性を十分に認識しながら、精神保健福祉法33条1項及び同1号に適正手続規定を設けないまま放置、温存、幇助していることに原因があること、つまり、国に責任のあること、もうおわかりでしょう。
生活妨害行為などについて映像、音声等の記録を行っていた私でも、突然拉致監禁されて病院に連行され、即日のうちに閉鎖病棟に軟禁されてしまったら、拉致の瞬間までの記録は出来ても、拉致されて病院に連行された後、病院内で何が行われたかについての映像音声記録はできません。
→本書のみをお読みの方はご存知ないかもしれませんが、拉致時の映像、それから、拉致実行者が、私の部屋(マンションに一人暮らし。)のチェーンキーを破壊して押し入った時点から拉致実行時までの連続音声記録があります。その他、拉致当日に至る経緯に関する音声記録や、生活妨害行為等を示す多数の映像、音声記録があります。詳しくは「違法拉致冤病のあらすじと証拠」をご参照ください。
仮に、診察時の様子について、映像や音声の録取が出来ていたらどうでしょう。強制的に閉鎖病棟に軟禁させられたとしても、そこでの言動が、少なくとも医師と本人がどのようなやり取りをしたのかについて、映像や音声として記録できていたらどうでしょう。診察記録や診療録に嘘は書けませんし、“症状”の捏造も、経過の捏造もできません。同時に、本人も嘘はつけませんから、正当な医療行為を行っている病院であれば、不当な訴えを防ぐ防衛策にもなります。事後的に裁判で、診療録載内容について争う必要はなくなりますし、なにより公正な記録が残るのです。
刑事手続と対比しても、というより、刑事手続よりもはるかに簡単に、精神医療の現場においては、国民の身体、生命、それから名誉に対する侵害が可能であり、実際に多数の虐待事例や訴訟事例があるわけですから、本人の意思によらない精神科診察においては、被診察者に、診察の様子について、その全てを映像音声として録取する権利を保障し、かつ、本人の意に反した診察に当たっては、医療側に、この権利のあることを被診察者に対して説明する義務を課すべきだとおもいます。
なお、長谷川病院においては、入院中、担当医との1対1の会話でさえ、病院の規則ということで、録取することが許可されませんでした。表向きはプライバシーだの個人情報だのというのでしょうが、本当の理由は、嘘で固めた精神医療の実態を隠すためでしょう。このことは、「違法拉致強制入院日記」で詳しく記載しています。
どうしても本人が正常であり、医師が“症状”の存在を説明できず、当然本人も“診断”に納得しない場合、「入院当初は“症状”がみられたが、“治療”によって“症状”が軽快した。しかし“病識”は形成されなかった。」と診療録に記載すればいいのです(実話。私の事例では長谷川病院側がそう主張しています。)。客観的記録を禁止して軟禁できるのですから、診療録にはなんとでも書けます。
昨今、映像や音声の記録できる機器などいくらでもあります。法令により義務化されるのが理想ですが、ここで提案した、本人の意思によらない精神科診察の可視化は、医療側が自主的に行うことも出来ます。医師との一対一の会話でさえ記録させない長谷川病院は論外として、常識的な医療を行っている病院であれば、全く問題ないはずです。
本人の意思によらない精神科診察の可視化が義務化されたら、医療保護入院件数が激減するだろう、そう考える人は多いと思います。
【 本書のおわりに 】
私の事例で拉致が違法と認定されたのは、精神保健法34条が制定されていたからという理由よりもむしろ、拉致時の映像音声記録があったからでしょう。拉致時の映像音声記録がなければ、「本人が納得した上で自ら車に乗り込んだ。」などと口裏を合わせた主張がなされ、これが裁判所に採用されておしまいです。私に対して行われた拉致が違法と認定されることはなかったでしょう。
それから、入院中の担当医を問い詰め、担当医が、はじめから被害妄想かどうかわからないと話す音声記録を残し、精神科病名にあたるものがあるか不明、治療の必要は無い、との診断書を交付させていたことも、本人訴訟として民事の訴えを提起するにあたっての重要な証拠となりました。
しかし、考えてみてください。私の場合には、「違法拉致冤病のあらすじと証拠」でお話しているとおり、周囲の人物による精神科症状の捏造が予測できたため、映像、音声記録の行えるようにしていましたが、普通に生活している人に対して、本人の知らないうちに、一方的な相談や報告によって医療保護入院が計画され、自宅に押し入られ、突然拉致された場合、これを記録することはできません。また、精神科医を問い詰めて診断を撤回させるようなことの出来ない場合もあるでしょう。
これについて、本書では、本人の意思によらない精神科診察の可視化を提案しました。
本書をお読みの方で、本書の論証に当てはまる事例や判例をご存知の方、また、本書の提案に賛同していただける方がいらっしゃいましたら、ご一報いただけますと幸いです。
最後に、冒頭でも触れました通り、「日本語では知らされない精神医学の嘘」をお読みになってください。精神医学、精神医療の悪用に対し、対抗できる基礎知識がつくはずです。
以上、お読みいただき、ありがとうございました。 追及が進みましたら、本書の改定、もしくはさらなる続編にてお知らせいたします。
2012年9月17日 戸ア 貴裕
【 主な出典、参考文献等 】
1. 「ジュリスト増刊 精神医療と心神喪失者等医療観察法」町野朔編 2004年 有斐閣 ISBN: 4-641-11386-6 2. 「別冊ジュリスト No.183」有斐閣 3. 「別冊ジュリスト No.140」有斐閣 4. 「有斐閣アルマ 憲法1 人権」渋谷秀樹・赤坂正治著 2009年 有斐閣 ISBN: 978-4-641-12308-3 5. 「閉鎖病棟からの告発」八木美詩子著 2009年 株式会社アットワークス ISBN: 978-4-939042-57-7 6. 「ねっとわーく京都 2007.7」 7. 「朝日新聞 1997年7月19日 朝刊」 8. 「医事訴訟入門 第2版」稲垣喬著 有斐閣 2006年4月30日 第2版第1刷 ISBN: 4-641-13441-3 9. 「刑事法重点講座 -理論と実際- 新版 告訴・告発」増井清彦著 2003年 立花書房 ISBN: 4-8037-5514-0 10. その他、法令データ提供システム、判例検索システムなどのインターネットサイト。
【 2015年6月24日修正版追記 】
2014年6月24日修正版では、「違法拉致冤病のあらすじと証拠」修正版に同じく、ある精神保健福祉士の氏名の記載されていた部分を「精神保健福祉士T」へ、同精神保健福祉士の所属会社名称を「EAP社」と修正しています。以下、同修正に至った経緯を時系列で示します。なお、日付はすべて2015年のものです。 1 精神保健福祉士T及び同所属会社の代理人より、4月10日付で、本書をホストしているプロバイダに対し、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、修正前の本文書には名誉権の侵害があるとの侵害情報提供とともに、送信防止措置を講じるよう申し出がありました。過去2件と異なり、プライバシー侵害の主張はありませんでした。国家資格に基づいた行為がプライバシーに当たるという主張には無理があると考えたのかもしれません。 2 4月15日付文書で、プロバイダより私に対し、プロバイダ責任制限法第3条2項2号に基づき、送信防止措置を講ずることに同意するかどうかの照会が行われました。 3 4月22日付文書で、送信防止措置に同意しない旨を示すとともに、回答の理由を記載し、プロバイダに対し、回答を行いました。プロバイダ側提供の解答欄は小さすぎるため、理由を別紙として送付しました。同回答書別紙は、こちらです(PDF版)。同回答書及び下記プロバイダの判断につきましては、プロバイダ責任制限法の運用における問題点を探る方々にとりましても、ご参考になるかと思います。 4 6月19日付文書で、プロバイダより私に対し、プロバイダ側での検討の結果、修正前の本文書に、同プロバイダの約款(下記)に抵触する部分があると判断したとのことで、同部分の削除要請がありました。過去2件よりも範囲が限定されています。
今回も、回答書の内容をどのように検討し、どのような理由で結論に至ったかの説明はありません。規約に抵触すると判断した、という結論だけがあり、6月25日までに修正しないと文書の表示を停止する、対応しないと契約を解除する、という内容です。どうもこの国では、立場が強ければ説明責任はない、というのが当たり前のようです。ジョン・スチュアート・ミルの「自由論」に代表される近代法の精神、自由と責任に係る考え方が、日本社会においては建前でしかない、日本社会は、近代法の精神において、100年以上遅れている、と思えます。 5 とはいえ、前2件と同様、私のサイトの趣旨から、精神保健福祉士T及び勤務先企業の名前が記載されているかどうかという問題は、本来無関係であるはずのプロバイダと争うほど優先度の高い問題ではなく、また、プロバイダを変えたり海外にホストしたりといった姑息な手段を取るよりも、プロバイダの判断についての事実を記載して対応し、民事訴訟で認定された事実に対してさえ、公共の利益に係る医療関係者及び企業の名前が、説明責任なしに隠されることに対する是非の判断は読者の方々に行っていただくほうがよいと考え、6月24日、修正版を発行しました。 以上が、2015年6月24日修正版発行の経緯となります。 2015年6月24日 戸ア 貴裕
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